Categories: 業界情報

アメリカ成形業界状況(2026.09) ―雑誌から垣間見る―

佐藤功
佐藤功技術士事務所

 

アメリカのプラスチック成形業界動向を、景況、材料、成形技術、企業事例から紹介する。2026年9月号では、インフレが落ち着くなかで新規受注と生産が増える加工業界の状況を、プラスチック加工産業指数や材料価格の動きとともに確認する。材料分野では、PFASフリーのカテーテルライナー用材料、発泡PSトレーの代替として注目されるPLA、HDPEブロー容器向けの非フッ素系バリア剤を取り上げる。技術解説では、重合条件の制御に役立つオンラインレオメータ、オペレータの経験とマニュアルの限界、二軸押出機の能力を見極める方法を紹介。再生材や着色剤の混合精度、ドライアイス洗浄、真空成形用PPシートの薄肉化も扱う。ケーススタディでは、シミュレーションを活用する金型メーカーと、折幅50フィート(約15m)の5層インフレーションフィルム成膜設備を紹介する。材料選定から設備の運転条件まで、品質と生産性を左右する動きを雑誌記事から読み解く。

1. 業界動向

1-1 全般状況

アメリカ経済はインフレが落ち着き、安定した成長期に入っている。これを受け、プラスチック加工業界も新規受注、生産を増やしている。プラスチック加工産業指数は53.7と対前月比わずかに低下したが急激な悪化は見込まれていない。成形材料は一時PP,PSのモノマー不足で価格が上昇した。今後は台風シーズンに入るので予断は許されないが、材料価格の緩やかな下降が続くものと推定される。

1-2 個別動向

  • Zeusのカテーテルライナー用材料がIntertekからPFAS-Freeに認定された。
  • 規制強化が続いている、発泡PSトレーの代替にTotalEnergies CorbionのLuminy(PLA)が注目されている。物理発泡で成形可能で、たい肥化が可能だ。
  • LanxessがPVC、PU用などに非アンチモン、低燐酸の難燃剤を発売した。
  • Subicが高絶縁PPSを発売した。耐電圧が800Vあり、難燃性(UL94 V0)だ。
  • Engelがフィルムインサートと2色成形を組み合わせた成形技術を発表した。
  • SACMIが新しい高速キャップ・プリフォーム成形機を発表した。
  • AvientがHDPEブロー容器用に非フッ素系のバリア剤を発売した。

2. 技術解説

2-1 オンラインレオメータ

GOETTFERTのオンラインレオメータはプラントの溶融ポリマー移送部分に取り付け、新たにできたポリマーは粘度計の円筒状隙間を流入させる。ここで内側回転子を回転または振動させ粘弾性を計測する。迅速な重合条件制御が可能になる。

2-2 マニュアルの限界

マニュアルを遵守すれば稼働はするが、利益は生まない。オペレータの能力はスクラップを減らし、生産性を上げることだ。優れたオペレータはわずかな変調を嗅ぎ出し、異常を細かく修正することができる。様々な要因が輻輳した現象はマニュアルでは表現できない。

2-3 二軸押出機の能力

押出能力が不足した場合、本当にそうか確認する必要がある。ポイントは出力、体積、せん断力、揮発分、圧力だ。出力が限界の場合はスクリューで過剰なパワーをかけている可能性がある。外部加熱強化、せん断力を下げるスクリューデザイン選定などでモーター負荷を下げることができる。ただし、混練不足が起き、品質低下する可能性があるので慎重に検討しなければならない。ほかの項目も同様だ。バランスの取れた押出条件になっていることの確認が必要だ。

2-4 材料混合

精度維持には逐次投入型の重量式混合機が好ましい。対象はバージン材、再生材、着色剤、各種添加剤などがある。再生材はかさ密度が異なるうえ、ブリッジが起きやすい。着色剤は添加剤と同じように扱われる傾向があるが、不足すると色調不良が出るため、多めに入れる傾向がある。厳正に扱えばコストセーブできる。混合機は成形機に直接取り付けることが好ましいが、床置きで設置して圧空輸送することが多い。床置き型は清掃などが容易になるが輸送中に分離する危険がある。

2-5 ドライアイス洗浄

−78.5℃で気化するドライアイスを対象物に噴射し、油脂、樹脂劣化物などを脆化・収縮させ基体から剥離する。母材を侵すことも電気機器に悪影響を及ぼすこともない。廃液が出ず作業環境が悪化することもない。作業時間が軽減し、安価なので広く活用できる。

2-6 真空成形でのPPシートの薄肉化

真空成形では原反シートの薄肉化は軽量化、サイクルアップが期待できるため絶えず求められている。そこで肉厚1.2mmのPP原反に核剤添加して剛性を上げた材料でカップを成形してみた。核剤を添加しても側壁部の肉厚はそれほど変わらない。肉厚を薄くすると、温度応答性も改善する。加圧試験(押しつぶし)では向上が見られたが肉厚を1.1mmにしたものは従来品とあまり変わらない。このように現象が様々なので、初期にいろいろ試みるのは良いが、本格的な肉厚減を目指す場合はポリマー設計を含めた検討が必要だ。

3. ケーススタディ

3-1 未来型金型メーカー

金型メーカーのAtomic Industriesは未来の姿を示している。受注した型はシミュレーションにより最適冷却法を決め、型を製作する。できあがった型は社内検査され、性能を確認した後に出荷する。

3-2 超広幅フィルム成膜

Balcan InnovationsはWindmöller製の折幅50フィート(約15m)の5層インフレ成膜機を導入した。世界最大級で各種工業用の包装材に使用される。

4. あとがき

トランプの手持ちのカードに限界があり、打てる手が減っている。業界もこれを見抜き、過激発言に右往左往しなくなっている。高関税による製造業の国内回帰と兵站需要を最大限利用しようとしている。これによりどれだけ体質改善できるか注目していきたい。

 

8月号へ

 

plastics-japan

This website uses cookies.