浅野幸雄
アーク企画事務所
FRPの成型方法は、目的に応じ様々あるが大きく分けて2つの方法に分かれる。それはプリプレグを用いる成型と繊維に直接樹脂を含侵させる成形である。
エポキシ樹脂のようにプリプレグを作りやすい樹脂と、ポリエステル樹脂のようにプリプレグを作りにくい樹脂があるので、成型方法の選択は樹脂の選択とも密接に関連している。
プリプレグとは、繊維またはクロスに樹脂を含侵し、半硬化状態にした材料である。一方向の繊維に樹脂を含侵し半硬化状態にしたプリプレグは一方向プリプレグ(UDPP)と呼び、強度、弾性率の計算がしやすいことと安価なことから広く用いられている。
繊維を織物にしてから作られたプリプレグはクロスプリプレグと呼ばれ、成型物の表面に用いられることが多い。
プリプレグを用いるメリットは次の点である。
成型物の強度、弾性率はおおよそVf(繊維の体積分率)に比例するので、高いVfの成型物は高い強度、弾性率となる。また、場所によりVfの偏りが少ないので安定した寸法の成型物を作りやすい。
耐熱性、高靭性の樹脂など各種の添加物を入れ、目的に応じた樹脂配合が可能である。
またプリプレグの欠点は価格が高いことにある。
プリプレグを用いた成型には以下の方法がある。
プリプレグを積層し、熱板の中、または金型の中で加熱、加圧して成型する。熱板で成形したものは積層板と呼ばれ、これを切削加工し目的の製品に仕上げる。絶縁材料によく使われる成型方法である。
目的とした方向に強い強度、弾性率を成型品に持たせたいときは、UDPPをカット、レイアップし、金型で成型する。プレス条件の最適化により、繊維の動きが少なく樹脂流れの少ない成型品を得られる。
オートクレーブ成型は、計算された角度でカットしたプリプレグをレイアップして成型する。レイアップ時、層間の空気を抜くためロールで密着させる作業が必要である。
プリプレグは適度なべたつきを持っているため、層の間に閉じ込められた空気は成型時も抜けないので、最初から抜いておかなければならない。型にプリプレグをレイアップしたら、穴あきテフロン、ブリーザー、バッグフィルムをかけて中を真空に引く。バッグフィルムはシーラントテープで型に密着させる。
プリプレグの硬化条件に合った温度、圧力プログラムを組み、成型を行う。バッグ内は真空、バッグの外から空気の加圧を受けるので、ボイドのないきれいな成型品を作りやすい。
カーボンのゴルフシャフト、釣り竿はシートワインディングで成形する。UDPPを所定の角度に切り、これをレイアップしてマンドレル(鉄芯)に巻き、その上にOPP(一軸延伸ポリプロピレン)をテーピングして加熱する。
加熱するとOPPが収縮するので、この収縮力を圧力にして成形品がが成型される。副資材はOPPテープだけなので、安価で大量に生産するのに適した成型方法である。
従来のFWはプリプレグを使わないが、特殊な圧力容器などを成型するときはプリプレグ状の繊維(トウプリプレグ)を使う。トウプリプレグのFWはVfのムラが少ない信頼性の高い成型品ができる。
繊維を樹脂バットに浸し、マンドレル(鉄芯)に巻いてゆく。マンドレルの軸に対し90°巻きをフープ巻き、角度をつける巻きをヘリカル巻きという。樹脂は低粘度で長いライフの性状が望ましい。
FWは繊維が移動しながらマンドレルに巻いていくので、軸に対し角度がつくようになる。したがって、軸方向に強度を必要とする成型体は作りにくい
。
逆に圧力容器のような内圧のかかる用途、あるいは巻き方向に圧力のかかるような用途に向いている成型方法である。
樹脂は低粘度、長いライフが要求されるので選択の幅が狭い。
樹脂のついた繊維をマンドレルに巻き終わったら、OPPテープでテーピングし1次硬化、2次硬化を行う。1次硬化は比較的低い温度で樹脂をゲル化させるだけにし、マンドレルを引き抜いてから2次硬化を行う。高い温度で1次硬化を行うとマンドレルの熱膨張が大きくなり、内径のずれが大きくなる。
引き抜き成型は繊維を樹脂バットに浸し、金型に入れ引き出す。金型は加熱してあり、樹脂は金型のなかで硬化する。これを連続的に引き出し成型物とする。
樹脂の中には内部離型剤を入れ、金型と樹脂が接着しないようにする。また速硬化の樹脂が良いので、ビニルエステル、ポリエステルなどのラジカル重合する樹脂を選ぶのが一般的である。
連続成型のため、成型物は同じ断面積のものしか得られないが、金型の工夫により多種の断面形状の成型物が得られる。
比重はGFRPで約1.9、CFRPで約1.6なのでアルミの代替として使用できる。また、GFRPは電気絶縁性があり、GFRP、CFRPとも酸などの腐食に強いので、金属の代替としての用途が多い。
どちらも型に機材をレイアップし、中を真空にして樹脂を導入、含侵、硬化させる方法であるが、VaRTMのほうが真空度は高い。
RTMは通常ポリエステル、ビニルエステル樹脂を使用するが、架橋剤のスチレンの沸点が150℃付近なので、高真空にするとスチレンの沸騰することがあるので。高い真空は望めない。
VaRTMはエポキシが主体なので高真空で成形でき、成型物中のボイドも減るので、より信頼性の高い強度の成型物が得られる。
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