佐藤功技術士事務所
佐藤功
2月のプラスチック加工産業指数は49.1で基準値(50)に近づいている。 新規受注が回復しているが、下請け業態では遅れている。
樹脂材料価格は低水準が続いているが、PPとPSが原料価格上昇分を多少転嫁出来た。 また、HDPEの特殊グレード(超高分子、バイモーダルなど)ではわずかな価格上昇がみられる。少なくとも年末まではこの状態は続くとの見方は大勢だ。
Engelがケンタッキー州の配管用品メーカーADSに世界最大の射出成形機を2台納入した(図1)。 型締め力8000t、射出容量85ℓ(2900oz)で、オーストリアで製作・試運転後、分解して輸送し、現地で組み立てた。
今月号は工程安定化のためのノウハウの紹介記事が多い。環境問題対応が最大だが、具体論に入ると成形技術の高度化が課題になるためだろう。
PureCycleはP&Gのライセンスを受け、バージンに匹敵する品質のPPリサイクル技術を確立し、4月に5万トンの工場完成予定だ(図2)。精密ろ過で無機異物を除去しているほか、溶剤洗浄でポリマー、有機不純物を除去している。
溶剤の再生、原子力発電電力の使用などでカーボンフットプリントはバージンに比べ35%小さい。同社は三井物産と組んで日本進出を検討している。
(https://www.mitsui.com/jp/ja/topics/2021/1241921_12154.html)
リサイクル率を上げても不良率が増えれば環境負荷は減らない。不良を減らすには成形管理レベルを上げなければならないが、人材不足で進まない。このような場面ではIT技術を活用すべきだ。成形機のデジタル化が進み、稼働時のデータが得やすくなっている。成形品外観、キャビ毎の温度データ、スクリュー移動挙動などのデータが活用できる。
活用するには統計的な視点が重要だ。例えば推定不良発生間隔(ETF)は有効な概念だ。異常を出来るだけ早くつかみ、的確にフィードバックにつなげることが求められる。良否判定が出来ない場合はその間の成形品を特別検査して個別に良否判定する。この結果も監視システムに反映させることが出来る。さらにはAIを活用して新しいロジックを構築したい。
先ず最新のバージョンを使い、材料情報、形状情報を正しく入力することが必須だ。またシミュレーション範囲はキャビ内だけでなく、ランナ、金型(サイズ、冷却回路、型材質)まで広げた方が精度向上できる。成形方法、キャビティの向き、重力、慣性の影響なども考慮することが好ましい。
メッシュ切りの密度が高ければ精度が向上するが計算時間が長くなる。重要な部分のみ密度を上げるべきだ(図3)。肉厚の製品では3次元メッシュ切りが必要な場合がある。
材料フィーダーはおろそかにしがちだが、品質、稼働率に深く関与している。材料によって性能が異なるので、使用する材料の特性を反映したものでなければならない。PETなどで乾燥直後、高温のまま投入することがあるがこれも影響する。
導入時には信頼できる業者を選定し、材料特性、要求性能をきちんと伝え、導入前に実験する必要がある。実験は出来るだけ長時間した方が良い。リサイクル材は搬送が難しい。形状などを規格化してバラツキを小さくするとともに、設備に余裕を持たせておく必要がある。粉体、液体の添加剤を定量添加する場合があるが、定期的な清掃が避けられない。(図4参照)
射出成形では可塑化時にスクリューに背圧をかける。目的はガス抜き、計量安定化、移動精度の向上の3つだ。最適化は工程の安定性に注目して進める。具体的には実験によって背圧と成形品重量バラツキの関係を調べる。この結果からバラツキが最小になるところに設定する。ただし、この条件でシルバーが出る場合は、出なくなるまで背圧を上げる。
押出成形モルダーのHöhleは光ファイバーケース押出ラインにX線測定システムを導入した。管内外径、肉厚、偏芯を同時測定しており、異常があればすぐに対処できる。品質が飛躍的に向上した。X線方式は安定しており較正が不要だ。データを顧客と共有し、信頼を得るのにも役立った。
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