佐藤功技術士事務所
佐藤功
押出成形では水噴射による冷却改善で生産性20〜50%向上。Moxietecは微細気泡による高性能発泡成形技術を展開。Teknorのバイオ企業買収やSabertの再生材活用も進展し、省エネ・環境対応が加速。
冷却改善(押出成形)、微細気泡(発泡射出成形)、再生材活用(リサイクル)、共働型ロボット(自動化)、PFAS規制(環境対応)
極端な関税政策不安が軽減し、5月のプラスチック加工産業指数は48.5と対前月比3.2改善した。この傾向は来月以降も続くことが期待されている。ただし、樹脂材料価格の低迷は続いており、改善の兆しは見えない。
・Shell Polymersはリサイクル業者とFreepoint Eco-Systemsと分解油供給を受ける契約をした。
・自動車工業会が第1四半期のロボット導入予定を発表した、台数は前期と変わらないが金額は15%上昇する。
・リサイクル業者のStar Plasticsが温室効果ガス排出量を2030年までに対2010年比10%削減する計画を発表した。
・Engelがスペインの代理店を買収して、Engel Spainとした。
・Teknor がバイオプラスチックメーカーDanimer Scientificを買収した。
・AvantiumはBottle Collective と共同で植物由来のポリエチレンフラノエート製のボトルを開発する。
・Central Community Collegeが射出成形の集中訓練プログラムを開設した。
ほとんどの異形押出ラインで冷却が生産性のネックになっている。コンサルタントのRandy Brownはサイジングダイの内側に水噴射ノズルを設け、ダイ内の水流を乱流化することに成功した。これにより、生産速度が20~50%向上する。
Moxietecが発泡成形技術のライセンスをしている。発泡剤とノズルに特徴があり、気泡が微細で均一なため、性能が高く各種部品の軽量化に貢献できる。原理的には熱可塑性樹脂全般に適用できる。
食品包装容器のような薄肉成形品は冷却が速いので成形サイクルは短い。ただし高圧、高速充填する必要がある。自動車内装品のように外観を重視する厚肉成形品は金型温度を高く保つ必要があり、冷却時間が長くなる。
押出機はスクリューの方が摩耗すると思われており、シリンダーの摩耗に留意することは少ない。しかし、古い押出機ではホッパーブロックが摩耗して性能が低下している場合がある。摩耗するとモーターの電流値が激しく変動するので分かる。摩耗によりホッパーブロックとシリンダーの間に段差が出来る。シリンダー側を研磨して段差をなくして、芯合わせをすれば性能回復する。
成形助剤としてフッ素化合物が使われている。この中にPFASが成分や原料になっているものがある。PFASは廃棄後自然界に蓄積され健康障害の原因になる。このため、各州で規制が始まっている。代替物の開発も進んでいる。従来品と性能が異なるので、早めに検討を始めることが望ましい。
共働型ロボットはコンパクトなうえ、作動空間を人と共有できる。取出以外の作業も行うので取出しの空いた時間に他の作業をさせることが出来る。導入により、人件費節減、作業の標準化、作業ミス防止、収率の向上などが期待できる。投資は1年以内に償却できる場合が多い。選定に当たっては適正な能力があること、インターフェースが共通規格になっていること、プログラミングしやすいことを配慮する必要がある。
材料替えの損失は大きい。改善のポイントは「最適なパージ剤を選定し、間違いのない方法で使用する」に尽きる。パージ剤メーカーと連携し、正しい方法のマニアル化し、従業員教育を徹底することが大切だ。成形状況が変わり悪化する場合があるので監視を怠らず、異変に気付いたら改善し、マニアルの改定を行う必要がある。
食品トレーの大手Sabertはリサイクル業者Nuvidaと協力し、食品包装容器のリサイクルを推進している。Nuvidaは廃プラから高品質のリサイクル材を生産している販売しており、自社で再生品の性能評価が可能だ。PPとPEの分離も行っている。FDA規格に合致したリサイクル材もある。
Sabertは特注品が多く頻繁に品番切り替えがある。原料はNuvidaから購入するだけでなく、社内リサイクルも行っている。2025年までに売上の80%を持続可能な製品にすることを目指している。2024年は持続可能製品が71%、省エネ対前年度比7%削減、温室効果ガス排出量を2020年比6%削減、水使用量2020年比10%削減、廃棄物量を93%削減した。
ドイツの包装容器メーカーのFilthausはWittmannのエネルギー管理システムiMAGOxtを導入した。システムは30カ所でエネルギー消費量を監視し、各機器に電流計が設置されている。単位成形材料当たりの消費エネルギーも表示される。操作は簡単で導入はスムースだった。見えるかの結果照明の切り忘れが減るなどの成果も出ている。
ドイツはウクライナ紛争で急騰したエネルギーコストが落ち着いたとはいえ、近隣諸国に比べるとまだ高い。エネルギ費が全コストの20%を占めており、本システムを利用して省エネ、温暖ガス排出量削減を推進する。
アメリカ業界の政策不安が少し落ち着いたように見える。従来から手掛けてきた課題を地道に取り組もうとしている。その中で環境問題対応の動きが具体的になっている。有効性に疑問のある部分もあるが、積極性、行動力は学ぶべきだ。
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