Categories: 業界情報

アメリカ成形業界状況(2024.06) ―雑誌から垣間見る―

佐藤功技術士事務所
佐藤功

1.業界状況

1-1 全般

4月のプラスチック加工産業指数が49.2となり、平常に戻った。半年前は42.6だったので、回復が着実に進んでいることが分かる。しかし、材料は過剰生産能力問題を抱えており価格回復は難しい。そんな中でPPはさらにモノマーに連動して価格低下がみられた。

6年ぶりに開催されたNPEは登録者が5万人*を超え、盛況だった。入場者の2/3が初参加、1/3が40歳以下だった。彼らの活躍を期待したい。

*前回IPFは4.4万、Chinaplasは25万、K-showは18万人

1-2 個別動向

・Origin MaterialsとスイスのPack Sys がボトルキャップをPET化した。ガスバリア性が優れており、ボトルのリサイクルが容易になる。
・CocaColaが炭酸系ボトルを軽量化した。500mlで21gだったものが18.5gになった。
・P&Gが開発した低圧成形システムiMFLUXを金型メーカーStack Teckがサポートする。
・NYCOAが食品包装用に透明PAフィルムを発表した。
・NovatecはNPEで新しい搬送システムを発表した。搬送速度を必要最小限に抑え、省エネ、配管摩耗軽減をする。先月紹介した乾燥システムとともに、原料供給システムを革新する。
・Maguireは機器の長寿命化を目指した新しい保全サービスを始める。まず長寿命設計を行い、徹底した保全を行う。また、将来のバージョンアップされた場合は改造サービスを行い、絶えず最新の機器が使えるようにする。
・Uniloyが金型整備と型保管を組み合わせたサービスを開始した。

2.技術解説

2-1 熱硬化性樹脂

フェノール樹脂は最も古い合成樹脂だ。しかし熱可塑性樹脂が登場すると、成形時間が長いこと、バリが出やすいことから、耐熱性を要する部分以外は代替されていった。さらにポリアミドなど耐熱性の高い熱可塑性樹脂が登場すると、耐熱分野も代替されるようになってきた。

その後、様々な熱硬化性材料が登場したが、この傾向はくつがえすことが出来ていない。高温時の剛性が優れており、このような性能が求められる分野では使い続けられている。

2-2 樹脂温度のパラメーター

射出成形で樹脂温度は最も重要な成形条件だが、制御されていない。また、本当の樹脂温度が分かっている例は少ない。樹脂温度を決める要素にはシリンダ滞留時間、材料送り量、スクリュー形状・回転数、背圧、温度条件、投入口形状・温度などだ。それぞれがどのように温度に関与しているかは定性的には分かっている。これらを活用して出来るだけ温度が変動しないようにしているのが現状だ。高度な制御を駆使して、変動幅をさらに小さくすることが期待されている。

2-3 単軸スクリューの混練機能

単軸スクリューではバレル側がせん断力最大になり、スクリュー谷底に向けて、応力分布があり、材料は引き伸ばされながら送られる。これにダルメージ、ピンなどを付加しても分流はするだけ混錬はほとんどしない。混錬するためには上記せん断分布を遮断する必要がある。例えばバレルの一部を欠落させ、せん断力がない部分を作れば向上する。

2-4 3枚プレート金型設計法

3プレート金型では型板にランナを固定するためロックピンが使われる。これが材料流動を妨げることがある。ランナサイズは冷却、突き出し性などを考え慎重に選ばなければならない。スプルーが抜き勾配を十分とり、表面を研磨して抜けやすくする。ランナ冷却を促すため、すべての型板に水管を設ける。
*ロックピンの具体的なデザイン例は下記で見ることが出来る。
https://www.ptonline.com/articles/how-to-design-three-plate-molds-part-5

2-5 ブローボトルのリサイクル

ブローボトルのリサイクルは成形、性能、外観が安定せず難しい。しかし、外層にバージン材、内装にリサイクルを使用した3層化すれば安定して成形でき、外観、性能に問題のないボトルが出来る。リサイクル材には安定剤を添加し、着色は外層のみで良い。またスクリュー、ダイスに工夫してリサイクル材の成形性を安定させる必要がある。

この方法だと内層にしかリサイクル材が使えないが、低品位のリサイクル材まで使用可能なり、選別費用が節約でき採算性も向上する。

3.ケーススタディ

3-1 小ロットマスターバッチ

混錬業のPrecision Color Compoundsは小ロットカラーマスターバッチに特化して成長を続けている。商品試作ではいろんな色の迅速な調色が求められるが使用量は多くない。同社はこの需要に注目した。

設備の小型化、標準化を進め、従業員訓練を行い、調色時間、色替え時の材料ロスを半減した。色替え法は改善が続いている。現状ではパージ剤と分解掃除を併用している。

3-2 品質管理の情報化

検査はデジタル化が進んでいるが、品質管理では検査結果を紙に書き写し、紙ベースで行われていることが多い。

llegheny Performance Plasticsは品質管理ソフトを導入し検査結果のデジタルデータを直接品質管理システム取り込むようにした。その結果、誤記が亡くなり、事務処理時間が短縮できた。また、データーが見やすくなり、傾向が把握できるようになった。また、ユーザーと情報共有化が進み、信頼を得ることが出来た。

4.あとがき

産業指数の50回復が見えてきた。伝えられるアメリカ経済の好況が製造業にも波及してきた。今後の推移を見守りたい。 6年ぶりにNPEが開催された。来月以降、解説記事が順次掲載される。

5月号へ

plastics-japan

Recent Posts

コンサルタントの部屋 (田原 修二)

氏名・所属 氏名:田原 修二 …

4日 ago

アメリカ成形業界状況(2024.12) ―雑誌から垣間見る―

佐藤功技術士事務所 佐藤功 人…

4日 ago

アメリカ成形業界状況(2024.11) ―雑誌から垣間見る―

佐藤功技術士事務所 佐藤功 P…

2か月 ago

K 2025まで1年(2025年10月8日から15日まで)

この記事はK2025の主催者に…

2か月 ago

アメリカ成形業界状況(2024.10) ―雑誌から垣間見る―

佐藤功技術士事務所 佐藤功 成…

2か月 ago

This website uses cookies.