Categories: 展示会情報

展示会レポート 人とくるまのテクノロジー展2026 YOKOHAMAに見る自動車用プラスチック材料・樹脂部品の動向

秋元英郎
秋元技術士事務所、プラスチックス・ジャパン株式会社

人とくるまのテクノロジー展2026YOKOHAMAが、2026年5月27日から29日までパシフィコ横浜で開催された。本稿では、樹脂系材料および樹脂系部品を中心に、材料メーカーによる新提案、加工技術、材料と加工の組み合わせ、プラスチックリサイクルへの取り組みを整理する。展示では、CFRPやCFRTPによる軽量化、PC/ABSやPPのリサイクル材、PMMAのケミカルリサイクル、塗装レス外装、加飾フィルム、構造色、インモールドコーティング、光ファイバー、透明材料、センサー対応部品、高制振ポリアミド、超高分子量ポリエチレンなど、多様な技術が示された。自動車用プラスチックは、従来の軽量化・コスト低減材料から、意匠、光機能、静粛性、リサイクル性、部品更新性までを担う中核材料へと変化している。今回の展示は、材料単体ではなく、加工、部品設計、回収・再利用までを含めた総合的な技術提案が重要になっていることを示していた。

1.はじめに

人とくるまのテクノロジー展2026YOKOHAMAが、2026年5月27日から29日まで、パシフィコ横浜で開催された。主催者(公益社団法人自動車技術会)発表によれば、横浜会場の来場登録者数は3日間合計でのべ80,493名であり、自動車技術に関心を持つ多くの技術者、研究者、関係者が来場し、通路で立ち止まれないほどの混雑であった。

自動車産業では、電動化、自動運転・運転支援、車室内空間の高度化、カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーへの対応が同時に進んでいる。その中で、プラスチック材料と樹脂部品に求められる役割も大きく変化している。今回の視察では、樹脂系材料、樹脂系部品、加工技術を中心に見て回った。特に注目したのは、材料メーカーによる新しい材料提案、新しい加工方法の提案、材料と加工方法を組み合わせた提案、さらにプラスチックリサイクルへの取り組みである。

従来、自動車用プラスチックは、軽量化、コスト低減、成形自由度を主な価値としてきた。本展の最近の展示では、それに加えて、塗装レス化、リサイクル性、意匠性、光機能、センサー対応、制振、摺動、熱マネジメント、複合材料化など、多面的な価値が前面に出ている。本報では会場で印象に残った展示を、技術テーマ別に整理して紹介する。

写真1 人とくるまのテクノロジー展2026横浜の会場風景(写真提供:公益社団法人自動車技術会)

2.自動車用プラスチックに求められる役割の多様化

自動車用プラスチックに求められる役割が大きく広がり多様化していることが分かる。軽量化や金属代替は依然として重要であるが、外装部品では塗装レス化やセンサー透過性、内装部品では意匠性や光機能、快適性、更新性が求められている。さらに、電動化に伴い、制振、摺動、熱マネジメント、絶縁、難燃、耐薬品性といった機能も重要になっている。

東レは次世代モビリティを提案していた。CFRPを用いた車体構造、プラスチック光ファイバー、高制振ポリアミド、リサイクルPC/ABSなど、複数の材料技術を一つのモビリティ像の中で示していた。単に「材料を置き換える」のではなく、モビリティの構造、内装、照明、静粛性、環境対応までを材料技術で支えるという考え方である。

CFRPを用いた車体構造は、軽量化と高剛性化を狙う提案である。航空機分野では実績があるもののCFRPは高価な材料であり、従来の量産車に広く使うには課題も多い。しかし、車両の構造や用途を再設計することで、従来の金属構造とは異なる設計自由度を得ることができる。将来の小型モビリティ、自動運転車両、低速モビリティなどでは、構造材料の選択肢として再評価される可能性がある。

写真2 東レの次世代モビリティ提案(CFRPを用いた車体構造により、軽量化とデザイン自由度の両立)

BASFの展示にも、材料メーカーの役割の広がりが見られた。強化PA6を用いた金属代替部品ではCAEを用いた構造最適化が前提となっていた。樹脂化は、単に金属部品を樹脂へ置き換えるだけでは成立しない。荷重条件、リブ構造、繊維配向、温度依存性、クリープ、吸水などを考慮しながら、材料と部品形状を同時に設計する必要がある。

写真3 BASFのUltramidによる金属代替提案(CAEを用いた構造最適化により、樹脂化と軽量化)

3.塗装レス化と加飾技術の進展

今回の展示で特に目立ったテーマの一つが、塗装レス化と加飾技術である。自動車内外装では、高意匠化と環境対応を同時に実現する必要がある。塗装は高い外観品質を得る有効な手段であるが、VOC、CO2排出、工程数、リサイクル性の面で課題がある。そのため、フィルム加飾、インモールドコーティング、熱成形、構造色、樹脂自体の意匠化など、さまざまな代替技術が提案されていた。

カネカでは、アクリル系シートとウェーブロックの光輝シートを組み合わせた加飾提案が展示されていた。積層したシートを真空成形することで、自動車外装の塗装代替や部分加飾に用いる考え方である。構成としては、アクリル、蒸着PET、ABSなどの組み合わせが示されていた。

車全体をフィルムで覆うのではなく、部分的な加飾に使うという方向性である。全面塗装代替には、耐久性、補修性、施工性、コストの面で大きな課題がある。一方、グリル、ピラー、ガーニッシュ、エンブレム周辺などの部分加飾であれば、採用可能性は高い。超軟質アクリルがよく伸び、端部で剥がれにくいという特徴は、複雑形状部品への適用性を高める。

写真4 カネカの自動車外装向け塗装代替提案(アクリル系シートと光輝シートを積層し、真空成形による部分加飾を狙う)

写真5 カネカの塗装代替サンプル(超軟質アクリルを用いることで、曲面部や端部への追従性向上)

三菱ケミカルでは、高機能性TPU系加飾フィルムが展示されていた。傷がつきにくく、へこみが戻る自己修復性を有するTPUを最外層に配置した多層シートである。ピアノブラック調や金属調などの高意匠表面は、自動車内外装で好まれる一方、傷付きが課題となる。自己修復性を持つ表面層は、長期使用時の外観維持に有効である。

写真6 三菱ケミカルのTPU系加飾フィルム(最外層に自己修復性を持つTPUを配置し、傷付きにくい高意匠表面を狙う)

同じく三菱ケミカルでは、構造色加飾フィルムも展示されていた。最外層に径が均一な微粒子を詰め込み、粒子径によって色相をコントロールする技術である。顔料や染料に頼らず、微細構造によって発色する構造色は、見る角度によって表情が変わる。自動車意匠に新しい表現をもたらす可能性がある。

自動車の外装・内装意匠では、単に色を付けるだけでなく、見る角度、光の当たり方、質感によって印象を変えることが求められる。構造色は、光の干渉や散乱を利用するため、従来の顔料着色とは異なる意匠表現が可能である。材料自体の構造を制御することで色を作るという点で、機能材料と意匠材料の境界に位置する技術である。

写真7 三菱ケミカルの構造色加飾フィルム(微粒子の粒子径を制御し、顔料・染料とは異なる発色を実現)

ウェーブロック・アドバンストテクノロジーでは、金属調加飾フィルムが展示されていた。配布資料では、ShineTech AWシリーズとして、高透明多層フィルムが紹介されている。PCの耐衝撃性とアクリルの耐候性を組み合わせ、HUDカバーレンズ、AR/VRレンズカバー、CIDディスプレイカバーなどの用途が示されていた。

金属調意匠は、自動車内外装に高級感を与える。一方、実金属を用いると重量、加工性、コスト、電波透過性などの課題が出る。樹脂フィルムによって金属調外観を付与できれば、軽量化と意匠性を両立しやすい。

写真8 ウェーブロック・アドバンストテクノロジーの金属調加飾フィルム(高意匠化と塗装レス化を両立するフィルム材料として提案)

浅野研究所では、熱板転写位置合わせ成形が展示されていた。この技術は、日本ペイント・オートモーティブコーティングスのUV後硬化タイプのハードコート剤を用いることで実現している。熱板成形機の熱板側にパターンを設け、熱成形時に位置合わせを行いながら表面意匠を形成する考え方である。貼合用シートにあらかじめシボを付ける必要がなく、熱成形工程内で意匠付与と表面機能付与を組み合わせることができる。自動車内外装では、複雑形状への追従性、意匠性、耐傷付き性を同時に満たす必要がある。ハードコート剤と熱成形技術を組み合わせることで、塗装代替や加飾部品への展開が期待される。

写真9 浅野研究所の熱板転写位置合わせ・テクスチャー転写成形(日本ペイント・オートモーティブコーティングスのUV後硬化型ハードコート剤を用い、熱成形と表面機能付与を両立)

豊田合成では、インモールドコーティングの展示があった。LEXUS ESでの採用例が示され、関西ペイントとの協業による高光沢外観が訴求されていた。インモールドコーティングは、成形と表面仕上げを一体化する技術であり、塗装工程の簡略化、VOC低減、意匠性向上に寄与する。

写真10 豊田合成のインモールドコーティング(関西ペイントとの協業により、高光沢外観を成形工程内で実現)

ダイキョーニシカワでは、フィルムを使わず、樹脂自体で意匠を表現する技術が展示されていた。フィルム加飾は高意匠化に有効である一方、異材構成になるとリサイクル性が低下する場合がある。樹脂材料と成形・表面制御によって意匠を作ることができれば、単一材料化やリサイクル性の面で有利になる。ここでは着色マスターバッチの流れムラでマーブル調を表現し、さらに型内塗装を施している。

また、通常のシボパターンの上に非常に細かいシボを重ねる表面意匠も示されていた。レーザー加工により微細なシボを形成し、グロス、すなわち光沢値を下げることで、発泡成形品のスワールマークを目立ちにくくする考え方である。写真11の右上はシボ部分の黒さが際立ち、スワールマークは視認できなかった。左上は通常シボをソリッド成形したもの、中央上は通常シボで発泡成形したものである、発泡成形では鏡面部分にスワールマークがはっきり視認できる。

写真11 ダイキョーニシカワの樹脂意匠技術(フィルムを使わず、樹脂と表面制御により意匠性を付与:型内塗装前のサンプルの色が流れたようす)

写真12 ダイキョーニシカワの微細シボによる表面制御(光沢を下げることで、スワールマークを目立ちにくくする狙い)

日本ポリプロでは、PPの加飾フィルムを用いたフェンダーのサンプルも展示されていた。平面にはゆず肌が見られるため課題もあるが、高張力PPの特長を活かし深絞り性に優れる点が示されていた。オールPP系材料で基材と加飾層を構成できれば、モノマテリアル化やリサイクル性向上にもつながる。

写真13 日本ポリプロのPP加飾フィルムを用いたPP製フェンダー(深絞り性を持ち、PP部品の高意匠化とものマテリアル化を目指す)

4.リサイクル材の実用化と循環設計

リサイクル材の展示は、今回の大きな注目点であった。従来のリサイクル展示は、環境配慮のメッセージにとどまるものも多かった。しかし今回の展示では、どの材料を、どの部品に、どの品質で使うかという実用段階の提案が増えていた。

東レでは、リサイクルPC/ABSおよびリサイクルABSの良塗装グレードが紹介されていた。PCR含有率を高めながら、塗装外観を確保することは、自動車外装・内装部品への再生材利用を広げるうえで重要である。単に再生材を使うだけでなく、塗装性、外観、部品品質まで含めて実用グレードに仕上げる方向が見えていた。

写真14 東レのリサイクルPC/ABSおよびリサイクルABS良塗装グレード(PCR材を用いながら、自動車外装・内装用途に必要な外観品質)

カネカは、自動車部品では衝撃吸収材、緩衝材、軽量構造材などとして使われるビーズ発泡PP(エペラン-PP)のリサイクルグレードを展示していた。配布資料では、自動車部材や緩衝包材として用いられる発泡ポリプロピレンについて、リサイクル率30%のグレードを開発したことが示されていた。製造フローでは、PP系製品回収材をミニペレット化し、発泡ビーズ、成形体へ展開する流れが示されている。発泡体は体積が大きいため、回収・輸送効率がリサイクル上の課題となる。回収、減容、再ペレット化、再生発泡ビーズまでを含めたプロセス設計が重要である。PPぼビーズ発泡体のリサイクルが実用化すれば、自動車部材の循環利用率向上に貢献できる。

写真15 カネカのエペラン-PPリサイクルグレードの展示パネル(ビーズ発泡成形品発泡ビーズに再生するリサイクルフロー)

日本ポリプロでは、リサイクルPPが展示されていた。PPは自動車部品で使用量が大きく、バンパー、内装材、カバー類などに広く用いられている。そのため、リサイクルPPの品質安定化と用途開発は、自動車リサイクルにおいて極めて重要である。PPは比較的リサイクルしやすい材料である一方、自動車用途では外観、耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性、臭気、異物など多くの要求を満たす必要がある。リサイクルPPの用途を広げるには、用途ごとのグレード設計が不可欠であり材料メーカーが品質管理することで市場における信頼性が向上する。

写真16 日本ポリプロのマテリアルリサイクルPPの紹介パネル(左)と成形品(右)

三菱ケミカルでは、PMMAのケミカルリサイクルも展示されていた。マイクロ波を用いてPMMAを分解し、MMAに戻す技術である。PMMAは解重合によってモノマー回収しやすい材料であり、透明部品、灯火部品、加飾部品の循環利用に適している。展示では、実部品への採用例も示されていた。

マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルは、どちらか一方に統一されるものではなく、材料、要求品質、回収ルート、用途によって使い分ける必要がある。PMMAのように解重合しやすい材料では、ケミカルリサイクルが有効な選択肢になる。

写真17 三菱ケミカルのPMMAケミカルリサイクル(マイクロ波分解によりMMAへ戻し、透明・加飾部品の循環利用を目指す)

住化ポリカーボネートの展示では、PCRを高比率で含むPCやPC/ABSが確認できた。無黄変、無着色品を特別なルートで回収することで、透明性や色調を保った再生材を実現する取り組みである。リサイクル材の品質は、回収原料の品質に大きく左右される。材料メーカーが回収ルートまで含めて設計することが、高品質リサイクル材の鍵になる。展示されていたのはPCRを60%含むPCとPCRを80%含むPC/ABSであった。

写真18 住化ポリカーボネートのPCR高含有PC(左)およびPC/ABS(右)(無黄変・無着色品を回収することで、高品質な再生材)

BASFブースでは、ポリアミドの鎖長延長剤「Joncryl」が紹介されていた。リサイクルによって分子量が低下したポリアミドに対し、鎖長延長剤を用いることで物性低下を補う考え方である。PA以外にも、ポリエステルなどの縮合系樹脂に使えるとの説明であった。

リサイクル材の課題は、分子量低下、熱履歴、異物混入、物性ばらつきである。鎖長延長剤は、特に分子量低下に対する有効な手段の一つである。再生材を低グレード用途に限定せず、より高機能な用途へ展開するためには、添加剤技術が重要になる。

写真19 BASFの鎖長延長剤Joncrylの紹介パネル(リサイクルによって低下した分子量を補い、再生材の物性回復)

DJKの配布資料では、プラスチック材のリサイクルに関する具体的な開発事例が示されていた。自動車バンパー廃材を用いた動的架橋エラストマーの調製では、PP+タルクのバンパー廃材を回収・粉砕し、EPDMを組み合わせて動的架橋エラストマーへアップサイクルしている。また、二軸押出機を用いたポリ乳酸の連続解重合では、PLAを押出機内で解重合し、ラクチド回収を検討している。

DJKの展示は、材料メーカーの量産提案とは異なり、リサイクル材の評価、配合、試作、開発支援の側面が強い。リサイクル材の実用化には、物性評価、配合設計、試験片作製、耐久性評価が必要になるり、今後さらに重要になる。

写真20 DJKのリサイクル開発支援事例を紹介した資料(自動車バンパー廃材のアップサイクル 配布資料より)

豊田合成ブースでは、廃車から回収したバンパーのリサイクル展示があった。回収したバンパーを粉砕し、塗膜を除去する工程が紹介されていた。塗膜除去は、精米と同じ原理に近い方法として説明されていた。自動車バンパーはPP系材料が多く、回収量も大きい。塗膜を除去して再利用できれば、自動車から自動車への水平リサイクルに近づく。

写真21 豊田合成の廃車バンパーリサイクルの技術紹介パネルとリサイクル材を用いた部品例(回収バンパーを粉砕し、塗膜除去を経て再利用)

5.光機能・透明材料・センサー対応

自動車用プラスチックでは、光機能や透明材料の重要性も高まっている。灯火部品、導光部品、表示部品、センサー透過部品、アンビエントライトなど、樹脂材料が光や情報と関わる場面は増えている。

東レのプラスチック光ファイバー「レイテラ」は、その代表的な展示であった。コアにPMMA、クラッドにフッ素樹脂を用いた構成で、クラッドに意図的に微細な傷を付けることで側面発光させる。光源に近い部分では傷の密度を少なくし、光源から遠い部分ほど傷の密度を増やすことで、発光の均一性を調整するという考え方である。また、両端から違う色の光を送ることも可能である。

自動車内装では、アンビエントライトや加飾照明の重要性が高まっている。光ファイバーを繊維や内装材に組み込めば、単なる線状発光ではなく、面発光的な意匠表現にも展開できる。内装材そのものが光を導き、光を放つ部品になる点が面白い。

写真22 東レのプラスチック光ファイバー(PMMAコアとフッ素樹脂クラッドを組み合わせ、側面発光による内装加飾への展開)左:縦糸にナイロン、横糸に光ファイバーを用いた織布(大喜株式会社)、右:側面発光のデモ

写真23 東レの光ファイバーの説明パネル

クラレでは、透明ABSの耐熱化と高耐熱特殊アクリル樹脂が展示されていた。透明ABSに耐熱アクリル樹脂を添加することで、HDTを70℃程度から84℃程度へ高めた材料である。透明性はやや低下するが、耐熱性を高めた透明基材として、FIMなどの加飾用途への展開が考えられる。

また、高耐熱性特殊アクリル樹脂の開発品も展示されていた。耐熱性はPC並みに近づき、ヘッドランプのレンズや導光バーへの応用が想定されている。PMMAは透明性、耐候性、光学特性、耐黄変性に優れるが、ヘッドランプカバーのような用途では耐熱性や耐衝撃性が課題になっていた。材料改良が進めば、ヘッドランプはPC、テールランプはPMMAという従来の区分が変化する可能性がある。

写真24 クラレの透明ABS耐熱化材料(左)と高耐熱特殊アクリル樹脂(右)の説明パネル(灯火部品や導光部品における透明材料の選択肢を広げる)

住友化学では、PMMA「スミペックス」を用いた塗装レスフードに加え、光透過性を活かしたセンサー対応部品も展示されていた。PMMAは透明性と耐候性に優れる材料であり、外装意匠と光機能を両立しやすい。展示では、鏡面とマットを一度のショットで成形したサンプルや、光透過性を活かしてセンサーと組み合わせる部品が示されていた。成形品は透明PMMA/着色PMMA/マテリアルリサイクルPMMAの積層シートを加熱プレスで成形すると同時にリブの射出を同時に行う方法で試作されていた。

自動運転・運転支援が進むと、外装部品にはカメラ、レーダー、LiDAR、照明、表示機能との親和性が求められる。樹脂材料には、外観だけでなく、光透過性、電磁波透過性、耐候性、成形自由度が必要になる。PMMAやPCなどの透明材料は、今後ますます重要になると考えられる。

写真25 住友化学のPMMA系多層シートと光透過部品の試作品(塗装レスフード)(左)、とリブが同時成形された裏面(右)

キャノンブースにおけるマーレの展示では、型内塗装技術を用いたサンプルが展示されていた。光を透過させて表示機能を持たせている。また、欧州におけるcannonとENGELの協業についてもパネルで説明されていた。

写真26 キャノンブースにおけるマーレの部品展示(型内塗装技術を活用)

6.軽量化・樹脂化・機能性材料

自動車分野における樹脂化・軽量化は、依然として重要なテーマである。ただし、今回の展示では、単純な金属代替というより、複合材料、CAE、成形加工、部品一体化を組み合わせた提案が多く見られた。

前述したように、BASFのUltramidによる金属代替は、CAEを用いた構造最適化と組み合わせて示されていた。樹脂は金属と異なり、繊維配向、温度依存性、クリープ、吸水などの影響を受ける。そのため、材料の物性値だけでなく、部品形状と成形条件を含めた設計が不可欠である。

ダイセル・エボニックでは、ROHACELL Core Flakeが展示されていた。六角形のフレーク状コア材で、フレーク間にすき間を持たせることで三次元形状に付形しやすくしている。ROHACELLは軽量サンドイッチ構造用のフォームコア材として知られており、CFRPなどの複合材料と組み合わせることで、高剛性・軽量構造を実現できる。

従来のフォームコア材では、三次元形状への追従性が課題になる場合がある。フレーク状にすることで、複雑形状部品への適用性を高める工夫がなされていた。軽量化と形状自由度を両立する材料として注目される。

写真27 ダイセル・エボニックのROHACELL Core Flakeの説明パネル(左)と軽量化が実感できるサンプル(右)
(六角形フレークのすき間により、三次元形状への付形性を向上)。

サンワトレーディングは熱可塑性プリプレグ「TEPEX」やロハセルに代表される発泡製品等の航空機産業向け複合材料を得意としている。今回の展示では、CFRTP、例えばPEEKをマトリックスとする複合材料の熱融着技術をが紹介していた。電磁誘導加熱を用いてCFRTPを加熱し、薄型金型と組み合わせて成形・接合する技術である。冷却には水スプレーを用いるとの説明であった。

CFRTPは、熱硬化性CFRPと比較してリサイクル性や短時間成形性に優れる。一方で、成形時の加熱・冷却制御が重要になる。電磁誘導加熱は、局所加熱や急速加熱が可能であり、CFRTP部品の量産性向上に寄与する可能性がある。

写真28 サンワトレーディングブースのCFRTP熱融着技術の紹介パネル(電磁誘導加熱と薄型金型により、CFRTP部品の成形・接合の生産性向上を狙う)

機能性材料としては、東レの高制振ポリアミドも印象的であった。PAと高tanδ成分を共連続構造にすることで界面面積を大きくし、ダンピング特性を付与している。射出成形可能な制振材であり、電動車で顕在化しやすい振動・騒音対策に有効と考えられる。

展示では、ガラス繊維なしの柔らかいサンプルと、ガラス繊維入りのサンプルが示されていた。さらに、ダンピング特性の試験実演も行われており、材料の違いが振動減衰に反映される様子が分かりやすく示されていた。電動車ではエンジン音が小さくなるため、従来は目立たなかった部品のびびり音や振動音が問題になりやすい。その意味で、構造材に制振機能を持たせる提案は実用的である。非強化タイプはアルミとの積層、強化タイプはアルミ代替を想定している。

写真29 東レの高制振ポリアミド(PAと高tanδ成分の共連続構造により、射出成形可能な制振材料)非強化で柔軟なタイプ(左)とガラス繊維強化で剛性が高いタイプ(右)

写真30 高制振ポリアミドのダンピング特性試験実演(アルミニウムと積層することで振動減衰性向上の効果がわかる)

旭化成では、超高分子量ポリエチレン「サンファイン」の展示が確認された。超高分子量ポリエチレンは、耐摩耗性、自己潤滑性、耐衝撃性に優れる材料であり、摺動部品やライニング材などに利用される。

自動車分野では、金属部品との摺動、低摩擦化、異音低減、耐摩耗化が重要な課題である。特に電動車では、エンジン音が小さくなるため、従来は目立たなかった摺動音や異音が顕在化しやすい。その意味で、超高分子量ポリエチレンのような低摩擦・耐摩耗材料は、静粛性向上の観点でも重要である。

写真31 旭化成の超高分子量ポリエチレン「サンファイン」(低摩擦・耐摩耗材料として、自動車の摺動部品や静粛性向上)

CERIの展示では、成形加工に加え、水素・高圧ガスに関する試験対応が紹介されていた。電動化、水素利用、燃料電池、電池冷却、熱マネジメントの進展により、樹脂材料にも従来とは異なる評価項目が求められるようになっている。高圧水素、冷媒、電解液、難燃性、耐熱性、長期耐久性など、材料評価の重要性は高まっている。

リサイクル材を自動車用途に使う場合にも、初期物性だけでなく、長期信頼性、ばらつき、異物、劣化履歴の評価が必要になる。材料メーカーや部品メーカーだけでなく、評価機関の役割も大きくなると考えられる。

7.樹脂部品の更新性と内装価値

樹脂部品メーカーの展示では、部品の更新性、内装価値、リユース性に関わる提案も見られた。これは、材料そのものの性能とは異なるが、自動車用プラスチックの今後を考えるうえで重要な視点である。

河西工業では、着せ替え可能なドアトリムが展示されていた。ファスナーで取り付ける構造により、内装表皮や加飾部材を交換できる提案である。これは単なる意匠変更にとどまらず、リペア、アップデート、リユース、リサイクルの観点からも興味深い。

自動車内装は、使用者の好みや経年劣化によって価値が変わる部分である。交換可能な構造にすれば、部品全体を廃棄せず、表面材だけを交換できる。車両の長寿命化や中古車市場を考えると、内装の更新性は重要な価値になり得る。

写真32 河西工業の着せ替え可能なドアトリム(表皮材をファスナーで交換でき、内装の更新性やリユース性を高める)

ダイキョーニシカワの追加資料では、「Calm Interior Concept」が示されていた。快適な移動空間を創造するという方向性であり、同社の展示した樹脂意匠技術や表面制御技術ともつながる。内装部品は、単に成形品としての形を作るだけでなく、視覚、触感、光沢、傷の目立ちにくさ、落ち着きといった感性価値を担う部品になっている。

8.材料開発を支える試作・加工技術・評価技術

新しい材料や加飾技術を実用化するには、材料そのものだけでなく、試作、混練、製膜、ラミネート、評価を支える企業の存在が重要になる。今回の展示では、Bax、MSR、ウェーブロック・アドバンストテクノロジー、DJKなどが、材料開発を支える加工・評価機能を示していた。

Bax株式会社の配布資料では、超少量1kgからの試作、コンパウンドからフィルムまでのワンストップ対応、二軸混練ダイレクトTダイ製膜などが紹介されていた。新素材開発では、少量試作から始め、配合、成形性、外観、物性を確認しながら条件を詰める必要がある。こうした試作対応力は、材料メーカーや部品メーカーにとって重要な開発基盤である。

写真33 Baxのフィルム・シート試作技術(少量試作、二軸混練、Tダイ製膜、展示サンプルは住友化学ブースに展示されていたものと同一)

MSR株式会社の資料では、超高熱貼り合わせラミネートが紹介されていた。最大500℃、6層同時、最大幅2500mm、最大圧力18tという加工能力が示されている。多層フィルムや加飾シートでは、反り、層間密着、熱履歴、表面外観の制御が重要になる。材料と意匠を成立させるうえで、ラミネート技術は欠かせない。

ウェーブロック・アドバンストテクノロジーでは、押出試作受託サービスについても説明があった。二軸コンパウンド、二軸混練ダイレクトTダイ製膜など、自社製品を持たず、試作案件ごとに相談しながら進めるスタイルである。新規材料や多層フィルム、加飾シートの開発では、量産前の試作・評価が極めて重要であり、このような受託加工機能は材料開発の実務を支える存在である。

DJKのような評価・開発支援企業も、リサイクル材の実用化において重要である。リサイクル材は、原料の由来、熱履歴、異物、分子量、添加剤、臭気などの影響を受ける。量産適用には、配合設計、混練条件、試験片作製、物性評価、耐久性評価を積み重ねる必要がある。材料メーカーや部品メーカーだけで完結しない領域を支える存在として、こうした支援企業の役割は大きい。

9.おわりに

人とくるまのテクノロジー展2026横浜では、自動車用プラスチック材料・樹脂部品が大きく変化していることを実感した。従来の自動車用樹脂材料は、軽量化、コスト低減、成形自由度を主な価値としてきた。しかし今回の展示では、リサイクル性、塗装レス化、意匠性、光機能、センサー対応、制振、摺動、熱マネジメント、複合材料化など、より多面的な価値が前面に出ていた。

特に重要なのは、材料単体の提案から、材料と加工方法、部品設計、回収・リサイクルまでを組み合わせた提案へ移行している点である。リサイクル材を使う場合でも、回収ルート、添加剤、成形性、外観品質まで考えなければ、自動車用途では採用されにくい。加飾材料も、塗装代替として環境負荷を下げるだけでなく、構造色、光透過、自己修復、センサー透過など、新しい機能と結びついている。

今後の自動車用プラスチックでは、「軽い」「安い」「成形しやすい」だけでは不十分である。材料が機能を担い、部品がリサイクルを前提に設計され、加工技術が材料の可能性を引き出す時代に入っている。今回の展示は、その方向性を具体的なサンプルと技術提案で示すものであった。

とりわけ、塗装レス外装、リサイクルPC/ABS、PMMAのマテリアルリサイクル・ケミカルリサイクル、リサイクルPP、CFRP/CFRTP、加飾フィルム、インモールドコーティング、制振・摺動材料などは、今後の自動車用プラスチック技術を考えるうえで重要なテーマである。

自動車用プラスチックは、単なる代替材料ではなく、モビリティの機能、デザイン、環境対応を支える中核材料へと進化している。今回の展示会は、その変化を具体的に確認できる場であった。

 

plastics-japan

This website uses cookies.