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アメリカ成形業界状況(2026.06) ―雑誌から垣間見る―

佐藤功
佐藤功技術士事務所

本稿では、2026年5月時点のアメリカ成形業界の状況を、業界誌に掲載された情報をもとに概観する。イラン紛争に伴う原料供給不安を背景に、PEを中心とする材料価格の上昇が続いており、PVCについても大型プラント停止の影響が見られる。一方で、加工産業指数は50を上回る水準が続き、業績回復の兆しも確認される。個別動向としては、リユース用PETボトル、rPET対応プリフォーム成形システム、大型射出成形機、単軸押出機用スクリュー、rHDPE用改質剤、インフレ成形用パージ剤、廃プラ分別技術などを取り上げる。技術解説では、マスターバッチ着色における黒点不良、材料代替時の物性評価、押出成形における立上げロス、充填速度の考え方を整理する。さらに、多層インフレフィルム化や廃プラ中間処理のケーススタディを通じて、米国成形業界が材料高、環境対応、成形現場の効率化という複数の課題に直面しながらも、技術改善と事業機会の拡大を進めている状況を紹介する。

1. 業界動向

1-1 全般状況

イラン紛争による原料供給不安から材料価格の高騰が続いている。特にPEへの影響が大きい。輸出シフトが落ち着いてきたので、国内価格も落ち着くことが期待できる。ただ、添加剤の価格上昇など、ほかの要因が懸念される。PE以外の材料も同様の動きをしている。PVCは大型プラントの停止があったのでこの影響も受けている。

このような状況でも4月の加工産業指数は57.8と好調だった。指数の50超えが4か月続いており、着実な業績回復がうかがえる。ただし、エネルギー事情などの不安があり、好況期に入ったとは断言できない。5月の材料実勢価格が出ていたので\/kgに換算して末尾に記載しておく。ただし輸送の条件がバルク貨車渡しで、日本の取引形態とは異なる。

日用品分野は紙、木、金属など在来材料への回帰志向が強い。最近、替え歯ブラシの包装をAPETブリスターからパルプモールドに変えるというニュースがあった。中身が見えず機能に問題があるだけでなく、環境負荷もコストも劣っている。このような問題にどう取り組んでいくか考えなければならない。

1-2 個別動向

・Sidelが新しいリユース用PETボトルを発売した。水用で容量は0.5〜2Lで、最大25回繰り返し洗浄できる。
・Huskyが新しいプリフォーム成形システムを発表した。rPETに対応しており、原料乾燥、成形品検査機能も備えている。
・ENGELが電動機を更新した。また、型締力12,365t、ショットサイズ140lb(63.5 kg)、スクリュー径210 mmφの世界最大の射出成形機を納入した。
・Randcastle Extrusionが単軸押出機用スクリューを発表した。長さは従来のものと変わらない。6から8セクションに分かれており、計量部内にもミキサーが設けられている。スタティックミキサーのように可塑化が引っ張り変形のみで行われるため、材料劣化が少なく、材料の予備乾燥が不要になる。高度な混錬による物性向上が期待できる。
・Avient Corp. がrHDPE用のストレスクラック改良剤を発売した、耐衝撃性、繰り返し疲労性、成形性も改善する。ターゲットは電線被覆。
・Syensqoが透明PP自動車外装部品用安定剤Cyasorb Cyxtra V9800 , V9100を発売した。
・Explore Chem-Trendがインフレ成形用のパージ剤Ultra Purge C1851を発売した。発泡しながら押出機、ダイス内部を清掃する。色替え時の分解掃除が不要になり、切り替え時間を最大75%短縮し、使用材料を最大80%短縮できる。
・オランダのBlueAlp は廃棄プラスチックから芳香族化合物の生産技術を開発した。
・廃プラ分別機メーカーのTomra Recyclingがユーザー向けに分別技術教育センターを設立した。

2.技術解説

2-1 マスターバッチ着色の黒点

マスターバッチを使用していると黒点不良の原因が分かりにくい。原因が材料劣化の場合は黒点が成形品表面にあり糸を引いている。分散不良が原因の場合は黒点が内層にあり、糸引きはない。劣化が原因の場合はスクリューの滞留個所を確認し分掃する。成形条件、スクリューをせん断応力が低い方向に変更する。分散不良の場合は、マスターバッチを成形材料と親和性の高いものへの変更、成形条件、スクリューを混錬がよくなる方向への変更などを行う。

2-2 材料代替

様々な事情で材料を変更しなければならないことがある。代替候補材料と諸物性の比較をする場合、同じ測定条件のデータが得られることはまずない。靭性はSSカーブ下側の面積で判断できるが、これも提供されることは少ない。MFR(溶融粘度)も重要だ。PAでは水分の影響も調べるべきだ。強化グレードでは強化材が同じで、同じ表面処理がほどこされたことが望ましい。繊維状強化材では性能に異方性がある。またウエルド強度も見逃せない。靭性への影響も見る必要がある。耐衝撃性PPは共重合で性能向上させている場合とエラストマーを添加している場合がある。添加剤に依っている場合は低温時の性能やクリープ特性の低下が大きいことがある。

このように、文献上データの比較から代替材料を見つけることはできない。最終的には自ら製品で試験をすることが必須だ。

2-3 「もうすぐ動く」状態の無駄

押出成形で引取機が成形品を引き取り始めてもしばらく良品が取れない。この時間が採算悪化の主因になっている。良品にできないのは寸法がばらついたり、表面が不良だったりしているからだ。原因はざまざまだが、表面上の成形条件は満たされているが、ダイスの一部はまだ低温のままであることが原因のことが多い。

スクラップの状態から原因が推察できる場合がある。ダイス出口の溶融樹脂の挙動、臭気、サイジングダイ、引取機の異音、溶融樹脂臭気、ヒーター、モーターの電流値なども参考になる。とにかくこの時間を短縮し、合格品が安定して成形できる状態を早く作り出し、これをオペレータ同士で確認しあうことが大切だ。

2-4 充填速度

充填速度は速いほど良いと言われている。しかし、速すぎるとヤケが出たり充填バランスが崩れたりする。金型のガス抜きの良否が影響を与える。これらへの寄与を検討したうえで決めるべきだ。

3.ケーススタディ

3-1 インフレフィルムの複合化

インフレフィルムメーカーのMountain States PlasticsはReifenhäuserの多層フィルム成膜ラインとNovatecと共同で計画した材料受け入れ設備に投資した。その結果シュリンクフィルム、ストレッチフィルムなどの高機能フィルムが提供できるようになった。また内層にリサイクル材が使え、材料費削減でき高い成長を続けている。食品包装用の規格も取得出来新しい分野に進出する予定だ。多層化はパネル操作に慣れることも含め大変だったがメーカーの指導により克服した。

3-2 廃プラ中間処理

Republic Servicesは79の中間処理施設を運営している。家庭や事業所から出る廃棄物を集め、仕分けして再生業者に売り渡している。光学、赤外選別など独自の技術で分別し、洗浄を行う。現在、PETフレーク、HDPE、PPなどを再生業者に販売している。再生業者はすぐにペレット化できるためリサイクルの円滑化に貢献している。処理費と材料費の両方を徴収している。

4.あとがき

産油国のアメリカでもナフサ不足の混乱が起きている。そんな中で高関税政策の効果が出始め、好況域に入ったようだ。
本誌編集者は容器包装業界のプラスチック離れを憂い、成形現場の技術向上の願っていることが分かる。我々とは置かれた状況が違うが現状からの脱却の意思は共感できる。参考にしたい。

 

付録

表 アメリカの材料実勢価格(2026,5)

樹脂分類

タイプ

換算単価 JPY/kg

ポリエチレン LDPE、ライナー

約339–346 円/kg

ポリエチレン LLDPE ブテン、フィルム

約325–332 円/kg

ポリエチレン HDPE、汎用射出成形

約339–346 円/kg

ポリエチレン HDPE、ブロー成形

約332–339 円/kg

ポリエチレン HDPE、高分子量 フィルム

約339–346 円/kg

ポリプロピレン 汎用ホモポリマー、射出成形

約276–283 円/kg

ポリプロピレン 耐衝撃コポリマー

約293–300 円/kg

ポリスチレン 汎用透明

約332–339 円/kg

ポリスチレン HIPS

約346–353 円/kg

PVC樹脂 汎用ホモポリマー

約191–198 円/kg

PVC樹脂 パイプグレード

約194–201 円/kg

 

納品条件:バルク列車での納品、1ドル160円で換算

 

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