佐藤功
佐藤功技術士事務所
関税・戦争による原料不安と価格上昇の影響を整理しつつ、扁平ガラス繊維、反応押出、後収縮対策、フィルム加工自動化などの実務技術を紹介。多層フィルムや工程改善の事例から収益改善のヒントを示す。
米関税制度が定まらず先行不安が消えないうちにイラン戦争が始まり、今度は原料問題が深刻になりそうだ。そんな中で2月のプラスチック加工産業指数は54.1と(1月は52.1)改善が続いている。受注も好調だ。これは関税増税によるインフレ率が予想より低く、購買意欲の減退が小さかったためと解されている。これによる製造業国内回帰がプラスチック加工にもようやく波及してきた。
低迷を続けていた材料価格も値上がりに転じた。4月以降はさらなる高騰が危惧されている。PEはシェールオイルブームで工場が大増設された。この影響で、約40%が輸出されている。世界的な不足から輸出が増え、これに引きずられて国内価格も上昇する。
PPは自動車用が低迷しているにもかかわらず原料不安から価格上昇している。PSは需要低迷が続いているが同様の動きをしている。PVCは主需要先に住宅着工件数は若干伸びており、価格上昇している。
・Refrescoが従来品より約15%軽い1.5 ℓPETボトルを発売した。生産にはSidel のレーザープリフォーム加熱装置が世界で初めて導入された。レーザー加熱は不純物の影響を受けにくいのでrPET対応力が高い。
・Utopia Plastixが植物を原料とし、生分解性を備えたプラスチックを開発した。従来の成形法で成形可能で、荒れ地の被覆などに使われている植物を原料にしており、成形品は不透明で黄みを帯びている。
・6月開催予定のイタリアプラスチック展、Promaplastは展示面積を10%縮小する。
・Arburgは昨年の売り上げが4%減り、従業員を300人削減し、米での増産を中止した。
断面が扁平(今のところ縦横比が2と4)なGFを強化材に使用すると性能の異方性、ソリが小さくなる。ウエルド性能は改善しないが、許容成形条件が広いのでもっと使われてよい。
押出機中で化学反応を行うことができる。PAやPUを重合することもある。反応押出はオレフィンの親和性付与によく使われる。オレフィンと極性物質、過酸化物を混錬すれば極性基が付加して表面特性が改善できる。反応押出は混錬能力が高く、高圧が発生できる2軸押出機が適している。実施に当たっては、下項のような課題を慎重に検討しながら進める必要がある。
・適切な温度滞留時間の確保
・反応率を高める工夫
・液状、揮発性添加剤の扱い
・異常反応による事故対策
射出成形品には内部応力があり、緩和するための成形後収縮が室温でも続く。特にTgが室温以下の材料、低温金型で成形した場合に後収縮が大きい。
アニール処理により分子をより安定位置に移動させれば内部応力が減り、後収縮は減少する。後加工で有機溶剤を使用したり、高温にさらされたりする場合はアニールした部品を使用することが好ましい。
フィルム加工の自動化は製膜工程中心で進められることが多いが省力化はあまり進まない。これは実際の作業は製膜後のロールの取り扱い作業の割合が高いためだ。
製膜直後のジャンボロールは大きく重く搬送先がまちまちだ。印刷、スリットなどが終わった製品ロールは形状も発生頻度もさまざまだ。また、巻き終わりのテープ貼りのような細かい付帯作業はマニアル化出来ていないことが多い。このため、自動化推進は作業内容、作業頻度の調査から始めなければならない。
Performance Engineered Products は宇宙航空分野向けのスーパーエンプラに特化したモルダーだ。材料ロス、労務費負担が大きく採算性が良くなかった。そこで工程解析をしたところ待ち時間・立ち上げ時間が長いことが判明した。問題のある作業を検討し、地道に作業改善を重ねた。これにより労務費削減、材料ロスの削減に成功し、事業存続ができている。
Alliance Filmsは同社のインフレ成膜ラインに67層まで多層化できるCloeren製多層ダイスを導入した。これでナノ多層ストレッチフィルムを製膜している。主材料がExceed m 3518とExceed Tough m 3812使い、コア層には保持力を高めるためExceed Flow m 1716、耐引き裂け性向上にVistamaxx 6000を入れ、表層に剥離性の良いExceed Tough m 4536を使用している。接着にはExceed Tough m 3812とVistamaxx 6102のブレンド材を用いた。
このフィルムは強度とストレッチ性兼具のフィルムしており、同社フィルムの70%がこのタイプになっている。
激動の時代になり、様々な課題がふりかかってくるが、単独では解決できないことが多い。このような時代には顧客に専門的な知識を提供し、課題解決に協力することが重要だ。
難燃剤などの規制強化には専門知識を生かして対処法のコンサルティング、代替配合の提案・試作協力などが可能だ。
環境対応では、残材引き取りがある。これにより顧客は不回転原料在庫を減らすことができる。引き取った材料の配合が分かっているので、再調合によって転用できる用途を見つけることはそんなに難しくない。再調合品は高品質を維持しながら「リサイクル材」としてカウントさせるため転用先にも歓迎される。このような顧客志向が時代を生き抜く力になる。
激しい時代の荒波に翻弄されているのは日本だけではない。アメリカのプラスチック業界は高関税効果で輸入品代替製造が進み、活気を取り戻そうとしていた。そこにイラク戦争が勃発した。原料が入ってこなければ手の打ちようがない。
これからも知恵の差、判断の差が出る場面が続く。混迷時に他国の同業者の動きは貴重な情報だ。本誌編集の力とネットのおかげでタイムラグ小さくアメリカ事情を垣間見ることができる。技術情報の裏にある彼の地の動きを察知し、それが新しい発想を刺激することを期待したい。
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