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包装用途からみたK2025の視察報告

松田 修成
マツダ包装技術W&R

包装分野の最新動向・出展企業の展示内容を詳解。世界最大級展示会での主要原料メーカー/リサイクル技術/AI・ロボット動向まで、包装用途視点の取材報告をコンパクトに紹介

1.展示会の規模

まず、規模感を掴んでもらうために、東京ビックサイトで行われた“TOKYO PACK2024” との比較の表を示す。展示会の対象分野が違うのにと思われる方がおられるかもしれないが、本稿は、包装分野の方を読者のメインターゲットと考えているので、この方が相応しいと考え、この表を示させていただく。
まず、出展の欄であるが、K2025は、出展企業数でTOKYOPACKの4倍以上、国数が3倍以上、展示面積では9倍近くとなっている。来場者も、ほぼ世界中といえる160の国・地域からで、開催国以外の国からの来場者数はなんと20倍という巨大な国際展示会である。

表1 K2025とTOKYO Packの比較

このような規模の展示会に、筆者自身は、今回の都合上、開催期間の後半である10月12日から15日までの4日間の間、取材に入った。

2.出展の内容

まずは、材料メーカーで、秋元さんのレポートと同じ企業名が出て来ても、包装分野からなので、見方が異なり重層的な報告になるのではと思っている。

2-1 Dow(ダウケミカル)

世界最大級のポリエチレンのメーカーであるダウケミケルは、ホール5とホール6の間に特別棟を設けて展示をおこなっていた。前回3年前にひらかれたK2022には、出展しておらず、協力企業のブースでのダウの原料を使用しているという共同サンプルの展示だけだったので、寂しく感じたが、今回は、別棟の特別棟での展示という事で力の入り方が全く違っていた。

写真1 ダウケミカルブースの外観

応用用途としては工業用、自動車用等、多岐に渡るサンプルの展示が見られたが、食品包装では、PEのモノマテリアルの用途展開について、ラミ構成の概要を示しながら、 多くの採用例や展開事例を示していた。

写真2 ダウケミカルブースにおける包装分野のサンプルの展示の様子

MDO-PE(インフレーションフィルムを縦一軸延伸)に加え、BO-PE(二軸延伸フィルム)や 延伸フィルムの展開事例も数多く展示されていた。代表的なものを表にまとめた。

表2 代表的なサンプル例

写真3は表にはいれていないが、「W&M(WindMuller&Holscher)とのコラボサンプルであり、キャストMDO-PEのバリアパウチは、グラビア印刷が可能できれいな図柄のサンプルである。ラミ構成としては、キャストMDO-PE/EVOH/CPE となっている。リサイクル性を考慮し、従来構成のPETラミネート品の置換えを提案している。キャストMDO-PEであるが、高速のグラビア印刷ができるとのことである。

写真3 延伸ポリエチレンを用いたスタンディングパウチ

ダウは、包装用途での川下側の要望を把握し、開発を促進するという目的で、世界各地にパックスタジオ(Pack Studios)を展開しており、その役割をつぎのように説明している。

「イノベーションが産業の枠を超えて、協業を促進する場である。持続可能性に焦点を当て、食品、工業、医療・医薬品など多様な用途向けに設計された軟包装等のソリューションを提供する。Pack Studios™は、ブランドが包装における最も困難な課題を克服することを可能にする。最先端の素材、多様な試験設備、経験豊富な指導を活用し、性能・機能性・持続可能性の最高基準に合致するソリューションをモデル化、検証し、磨き上げることができる」場所であるといっている。現状は、米国テキサス州のフリーポートを2012年に、第一号として開設し、南米:ブラジル、アルゼンチン、 欧州 スペイン、アジア 中国(上海)、インド(ムンバイ)、シンガポールと地図に示した7か所に存在する。

図1 ダウケミカルのパックスタジオ

2-2 ExxonMobil(エクソン・モービル)

ダウと同じく、ホール5とホール6の間で、ダウの特別棟の向かい側に、同じく特別棟を建てて展示をしていた。

写真4 エクソンモービルブースの外観

エクソン・モービルは、世界最大級の統合エネルギー企業であり、米国でも最大規模の企業のひとつである。2024年現在、売上高 4110億ドル(140円換算 約57.5兆円)、従業員6.2万人となっており、原油・ガス開発、精製、化学品、生分解性・高度(ケミカル)リサイクルプラスチック、「低炭素ソリューション」にまで事業は拡大、現在は化石燃料から次世代エネルギー・循環型資源分野への事業転換を加速している最中であるといえる。

写真5 “Consumer Packaging”コーナーの様子

そのようなエクソン・モービルの展示からは、“Consumer Packaging”コーナーの様子を写真5に示す。同社は材料メーカーなので、製品の応用例を並べるとなると、いろんな企業との共同の取組みが当然となる。その中でも注目されるアイテムとして、PCR含有製品サンプルとモノマテPE製品についての主な展示サンプルを表にまとめた。また、写真では、モノマテPPパウチとMDO―PEフィルムの例をしめした。

表3 展示されていた主なPCR含有サンプル

写真6 モノマテリアルパウチ

2-3 Braskem(ブラスケム)

ブラジルのブラスケムは、大手グローバル原料メーカーが集まるホール6に大きなブースを出していた。同社は、ラテンアメリカ最大の石油化学企業であり、基礎化学品やPE、PP、PVCなどの樹脂をブラジル、アメリカ、ドイツ、メキシコの生産拠点で製造し、世界70カ国以上に輸出している。また、サトウキビ由来のバイオポリエチレン( “I’m green™”ブランド:以下グリーンPEと記す)を世界で初めて商業化し、バイオマスプラスチック業界をけん引している企業のひとつである。日本でも最近開かれている環境関連の展示会(例:サスマ2025等)でも大きなブースで展示しているが、K2025でも多数のサンプル展示と各地の顧客との広い商談ベースをもつ大きなブースを設けていた。

写真7 ブラスケムブースの外観

写真8 採用された製品

なお、K2025では、グリーンPEについて、最新の採用状況が発表された。その数字は、「世界40カ国以上で 440社以上の企業・ブランド」に採用されているとのことである。

2-4 SABIC(サビック)

サビックは、中東の産油国サウジアラビアのグローバル化学企業である。GE(ゼネラル・エレクトロニクス)のエンプラ部門を2007年に買収し、巨大化。現在は、米国、欧州、中東、アジア地域等でグローバルに製造を展開し、化学品、汎用・高性能プラスチック、農業用栄養素等を生産している。同社は自動車、建築・建設、消費財、電気・電子、医療・衛生、包装、農業といった主要産業において、最終用途アプリケーションを開発することで顧客を支援しているとしている。

同社のブースでは、飲料・機能性食品、チルド・冷凍食品、パーソナルケア・ホームケア、メデイカルといった各種の応用用途別にわかりやすく展示しているのが印象的であった。写真9は冷蔵・冷凍食品の応用例の部分で、他の分野での消費者との拘わりをしめしていた。

写真9 チルド・冷凍食品関連の展示

2-5 BASF(ビー・エー・エス・エフ)

ビー・エー・エス・エフは、ドイツを代表する企業のひとつであり、化学部門において売上高世界トップの総合グローバル化学企業である。ホール5の同社の広いブースの大半を各種のリサイクル関連の展示が占めていた。

写真10 BASFブースのリサイクルに関する展示

特にケミカルリサイクルで、その細目まで入って展示されていたのが印象的であった。例えば、ケミカルリサイクルの一手法である「ガス化」では、プラスチック廃棄物をO2やH2Oなどのガス化剤と高温で反応させ、分子にまで分解、合成ガスとする。精製後、このガスは石油化学製品の製造に直接の利用が可能となり、多様な異種廃棄物ストリームの処理に適用できる。ガス化はエネルギー集約型であり、大規模プラントでのみ実現可能な高度なプロセス工学要件を伴うため、大量の原料を一箇所に集積する必要が生じるとの事である。この応用例で、ある自動車メーカーがBASF、BEST Bioenergy、Sustainable Technologies GmbHと共同で、自動車廃棄物に対する考え方を一変させる可能性のある画期的な取り組みを成功裏に完了させたと発表している。

同社が取り組んでいる他のケミカルリサイクル手法も含めた各種のリサイクルについて対象、特徴、取り組み事例を表にまとめて示す。

表4 BASFブースで紹介されていたリサイクル手法

2-6 Reliance Industries Limited(リライアンス・インダストリー)

リライアンス・インダストリー(略称:RIL )は、インド・ムンバイに本社を置く、石油化学を中心に、石油・ガス開発、小売、インフラ、バイオテクノロジーなどの事業を手がけるインド最大のコングロマリットである。インドの民間部門では最大規模を誇り、リライアンス財閥の中核企業である。同社の主要事業は石油探索・生産・精製、ポリエステル、アクリル、ポリマー、プラスチック、化学繊維原料、洗剤原料の製造であり、1980年代までは繊維業専業であったが、経済成長に合わせて石油化学分野に進出した。グループ全体の従業員60万人である。売上比率を円グラフでしめした。

図2 リライアンスの売上比率

この中で、小売部門の「リライアンス・リテール」について補足すると、実店舗、デジタルコマース、新商取引プラットフォームを統合したネットワークを通じたマルチチャネル戦略を採用し、消費者に多様なサービスを提供している。リライアンス・リテールはインド小売業界において大規模な事業展開をしており、有名な調査会社の調査書「世界の小売企業トップ100」においても、40位にランクインしている規模である。

写真11 リライアンスブースの外観

このような背景をもつリライアンスは、リサイクル樹脂の銘柄の充実が著しいといえる。まず、メカニカルリサイクルに関しては、プラスチック廃棄物の管理戦略とサーキュラーエコノミー(CE)の原則を採用し、使用済みプラスチック廃棄物(PCR)および産業廃棄プラスチック(PIR)からのブランド「EcoRepol」「EcoRelene」を販売している。また、 プラスチック廃棄物からのリサイクルポリマーとして、 “CircuRepol™” “CircuRelene™”ブランドも扱っている。このような同社がK2025で新しく発表したのが、“AgRepol™” “ AgRelene™” (バイオサーキュラー・ポリプロピレン、同ポリエチレン)である。

これらは、農場および農業廃棄物を原料とするISCC PLUS認証取得のPP、PEの新ブランドであり、従来は処理対象であった農業廃棄物を高価値ポリマー原料に変換したもので、技術的には、バイオサーキュラーポリマーに分類され、生物由来の廃棄物・副産物から得られた認証済みのサステナブル・フィードストックから製造される。ISCC PLUSの認証により、サプライチェーン全体でのトレーサビリティと環境主張の信頼性を確保しているとしている。

今回のAgRepol™等の発表は、ポリマー原料の多元化戦略として、廃棄物リサイクルに加え、農業バイオマス活用への拡大を示し、K2025のブースでの大きな扱いと同様に注目されるものである。

2-7 Milliken(ミリケン)

添加剤の企業では、PP樹脂の添加剤で有名な米国企業のミリケン(Milliken)も多数のサンプル展示をおこなっていた。前回のK2022で大きくニュースリリースをしていたリサイクルPPのPureCycleとの取組や透明化添加材NX8000についても、中国の企業との共同で製品への応用サンプルが複数展示されていた。

写真12 ミリケンの添加剤を使用した製品

3.その他の話題(ロボットとAI関連)

3-1 AI

最近話題のキーワードとして、AI や人型ロボット の話を聞かない日はないという状況である。K2025でも多数の話題が挙がっていた。その中で、「AI」で最も人を集めていたのが、射出成型装置の大手のエンゲル(Engel)である。 エンゲルは、“INJECT AI” と大きく表示し、盛んに該当装置の運転を行うことで、多くの見物客を集めていた。

写真13 エンゲルのINJECT AIのデモ

この射出成型装置は、多数の協力企業との共同開発ということで、企業名とK2025での出展のブースの位置が、装置の摺動部分で、見学者の多くが熱心に見る部分の近くに張り出されていた。その企業名と提供技術を表にまとめた。ドイツ、オーストリアの該当分野でトップの技術を持つ企業であることが容易に推察できる。

表5 Inject AI実演のパートナー企業一覧

3-2 人型ロボット

もうひとつの「人型ロボット」についても大きな話題なので、K2025の会場でも、きっと活躍しているのではと期待していたが、私が目にしたのは、写真14の一か所だけ。それも人寄せパンダならぬ、見物客集めのロボットが拙い足取りでウロウロしている様子であった。そのブースの企業はEnvalior(エンバリオ)である。

写真14 エンバリオブースの人型ロボット

あまり聞いたことがない企業だったので、調べてみると、オランダのトップ化学メーカー「DSM」の樹脂部門と、ドイツの特殊化学品メーカー「ランクセス」の樹脂部門によって2023年4月に設立された高性能エンジニアリング材料を提供するグローバルなリーディングカンパニーとのことである。売上高はグローバル上位に位置するエンジニアリング材料メーカーで、世界中に約4,000人の従業員と30を超える生産およびR&D拠点をもつ。

製品ラインナップ (旧DSM/LANXESS由来) PA樹脂やポリエステル樹脂等有名。
Arnitel®:コポリエステルベースのフィルム(通気性、透湿性)
EcoPaXX®:ヒマシ油を原料とするバイオプラスチック(ナイロン4,10樹脂)
Akulon® / Novamid®:ナイロン6/66樹脂
ということである。

4.おわりに

コロナ禍等があり、3年ぶりの海外への直接取材であった。従来は、フィンランドのFフィンエア(finAir)で、経由地のヘルシンキまでの飛行時間が9時間で、デユッセルドルフへは、2時間弱という乗り継ぎルートで比較的楽な旅行であったのが、今は、ロシアのウクライナ侵攻のおかげで、飛行ルートが長くなり、ヘルシンキまででも14時間。他のフランクフルトやパリ経由でもあまり変わらない、14時間~15時間の飛行時間となってしまい、私のようなシニアの身体にはかなりつらいです。また、円安或いはユーロ高で、財政的にもかなりつらいものとなってしまったのが残念である。

 

 

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