佐藤功
佐藤功技術士事務所
PVC化学リサイクル、EV高電圧化(800V)に対応するエンプラ(PEEK・PI・PAI)材料要求、摺動部品用添加剤(PTFE・グラファイト・MoS₂)の特性比較、単軸押出機の樹脂圧力解析、PE水中カット造粒技術、CFRP廃材からの炭素繊維再利用、長繊維強化PPサッシ開発
米経済は高関税化の影響が少なく購買意欲の低下が見られない。今後関税緩和も期待出来、回復基調が続くことが予想される。これを反映してプラスチック加工業も引き続き需要拡大が期待されている。ただし、受注能力が落ちており、12月の産業指数は46.4と50を回復していない。
・Freepoint がPVCの化学リサイクルパイロットを設置した。脱塩素を行い、炭化水素油を回収する。
・スイスの制御機器メーカーStäubliのアメリカ事業を強化する
・韓国の射出成形機メーカーLS Mtronがシカゴの拠点を拡充する。
・工具通販のQuickpartsの金属部品の3Dプリント事業を開始した。
・混錬業者のBadger Color が射出成形に参入した。
・Wittmann が射出成形機の生産能力を中国で拡大する。
容器包装分野での再生材使用の義務化が迫っており、包装材の再設計に取り掛かからなければならない。導入に当たってはコスト、性能、製法など全面的な見直しが必要だ。これを進める時の留意点を列挙する。
循環が始まれば廃プラ入手法、の最適化やコストダウンが可能になる。法制リサイクル率クリアは必須だが、ブランドイメージ向上、新しいビジネスチャンスの発見にも目を配ることも忘れてはいけない。
実用化直前に採算が合わないことが判明して失敗する例が多い。
開発が多面的なので関係者間のコミュニケーションが重要だ。開発課題や開発状況を共有し、チーム全体の達成意欲を高く保たねばならない。
迅速適切で試作品評価が必要だ。シミュレーションを駆使し性能などを推定し、評価項目削減、時間短縮する。
従来の成形設備や梱包機器にこだわらず、全体合理性を追求すべき。
新しいテーマだし、他分野の状況を理解する必要もある。すべてのメンバーが教育を受けるべきだ。生産が始まると品質項目レベルが異なるのでオペレータの意識変革も必要だ。
米のEV化は減速しているが、グローバルには中国がけん引しており、EV化が進んでいる。EV技術も進化しており、エンプラへの新しい要求が出ている。
第一は高電圧化だ。現在は400Vが主流だが今後は800V化が進む。高電圧になると絶縁材料の高い耐電圧、耐クラッキング性が求められる。発熱も大きくなり、断熱材、良熱伝導性も要求されるがこれらは同時に耐熱性を備えている必要がある。モーター内の巻き線絶縁体も耐熱性が必要になる。水冷却が増えており、低吸水性も要求される。これらはらPEEK、PI、PAIなどが使われる。
充電インフラの高電流化が進んでいる。ここでは急速な電流の変化により回路の衝撃的な熱膨張がある。このためインサート成形品では静的な耐熱性だけでなく耐熱衝撃性が求められる。耐熱低膨張係数材料としてCelaneseは新しいガラス充填ポリアミドを、EnvaliorはPocan BFN4232ZHR(PBT系)を投入した。SABICのポリアミド系コンパウンドPX11311UがSPEアワード受賞部品に使われた。
駆動部品では摩擦・摩耗特性が問題になる。潤滑油が使われることもあるが油漏れによる周辺汚染、ゴミ抱き込みによる摩耗促進などの問題がある。成形材料自体に潤滑性の添加剤を練り込み低摩擦係化、耐摩耗性、放熱性能、耐加圧、皮膜形成性などを改善することが出来る。ただし一種の添加剤ですべてを満たすものはなく、用途に応じた使い分けが行われている。
PTFE粉末は摩擦係数低減効果が大きく、使用中に潤滑膜を形成する。高価なこと、分散が難しいこと、大量に添加すると強度低下をきたすなどの課題がある。シリコーンも使用中に潤滑膜を形成し、摩擦係数低減効果が大きい。高荷重では性能が落ちる。ブリードして接着、塗装など表面加工を阻害する。
補強材は機械的性能を向上させる。カーボンファイバーは放熱を促進する。しかし、ガラス繊維などは研磨剤として働き、摩耗を促進する。繊維状補強材は異方性があり性能を阻害することがある。グラファイトはへき開性があり、摩擦摩耗を向上させる。放熱、帯電防止効果もあり特に高荷重域での性能改善効果が大きい。しかし、低湿度では性能が発揮出来ないこと、添加量が多いと強度低下を招くこと、色が自由に選べなくなることなどの課題がある。二硫化モリブデンを添加すると広い範囲で摩擦摩耗性能を向上する。グラファイトより高価なこと、高温で酸化劣化すること、着色することなどの課題がある。 フッ素樹脂ではEkonolとして知られている芳香族エステルが耐摩耗性を改善することが知られているが、他分野での効果は期待できない。
このようにそれぞれに特徴があり、用途に応じた材料、添加剤の選定が必須になる。
バレルヘッドの樹脂圧力は成形状態の重要な指標となる。値が高すぎると機器破壊の危険があり、低すぎるとギアポンプの負担が大きくなる。樹脂圧力はスクリュー回転を1周期とする変動がある。これはフライト通過直前に圧力が最大になり、通過直後最低になるためだ。溶融樹脂とソリッドベッドでは圧力変動のパターンが異なるため、溶融状態を知ることもできる。この変動は溶融樹脂の流動はダイス側に流動すると緩和し、ほとんど検出せれなくなる。
PEを水中カット型のペレタイザーで仕上げる時、カッターや条件が適切でないとミスカットが起き品質低下、収率低下の原因になる。
PEは高速で強いせん断力を加えると脆性破壊によって切断するため糸引きを防ぐことが出来る。材料温度・水温を低く、ダイ孔出口、刃の鋭角にすること、刃とブレードの距離を小さくすることなどによっても脆性切断を促すことが出来る。このため、刃をブレードに押し付け刃の回転速度を上げると良い。
ペレットサイズを小さくして冷えやすくすること、冷却水量を増して乱流にして徐熱を促進し、切断後のペレットが相互に接触しないことも不良防止になる。回転速度はキャビテーションが起きない程度に高くする。また、ブレード温度、ダイ孔ごとの吐出量の均一化も品質安定に有効だ。
Vartegaは宇宙航空分野などから排出されるCFRP廃材からCFを回収する技術を開発した。溶剤でマトリックスを溶解しCFを取り出し、表面処理剤を除去する。これを適当な長さに切断すればプラスチック添加用のCFが出来上がる。PANから製造するより使用エネルギーを99%少ない。
異形押出成形業のGaMra が長繊維強化PP製のサッシを開発した。化学発泡剤を使用して低発泡している。製品は性能、断熱性、難燃性などでサッシ規格をクリアしている。表面保護層を共押出して塗装を不要にしている。
今号はタイムリーな記事が多い。廃プラ使用義務付けはいずれわが国でも問題になる。プラスチック原料の品質は一定であることが前提だ。ところが廃プラを使用するとこの前提が崩れる。廃プラの調達管理、品質の確認、製品設計にこの事実を反映させる必要がある。技術的な道具はそろっているが、うまく流す(循環だから「廻す」と言うべきか)システムを構築しなければならない。大変な作業になるので早めに取り掛かりたい。
電気自動車用材料の記事も重要だ。トランプがブレーキをかけているが一定の割合で走り続けている事実は消せない。課題は走行距離と充電時間だ。これを使用材料特性まで落とし込んで解説しているので参考になる。
潤滑グレードの解説も頭の整理に役立つ。広範な知識が良く整理されている。材料供給者とユーザーの協力を深める道具になることが期待できる。
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