アメリカ成形業界状況(2026.05) ―雑誌から垣間見る―

佐藤功
佐藤功技術士事務所

関税政策や原料高騰が成形業界へ与える影響を整理するとともに、扁平GF、反応押出、後収縮対策、フィルム加工自動化などの重要技術を紹介。スーパーエンプラ成形、多層ストレッチフィルム、顧客志向型コンパウンド戦略など具体事例も掲載。

1. 業界動向

1-1 全般状況

高関税政策で好況感が出始めた矢先にイラン戦争の激化で材料入手不安が襲ってきた。米は産油国なので影響はないはずだが、輸出量が増え各材料とも価格高騰、供給不足が進んでいる。石油化学製品の生産が世界的に落ち込んでいるので、イラン問題が進展しても解決しても材料不足の解消には時間がかかる。成形業界は国内回帰が当分続くとみられていたが、材料供給不安の影響が出る可能性が出てきた。

1-2 個別動向

・北米プラスチック加工機械の第4四半期の輸出が7%伸びた。
要因としては関税効果で外資(欧亜)メーカーが米生産を増強し輸出基地化したこと、搭載ソフトで差別化が進んだことなどを指摘されている。
・先月Arburgは米体制の縮小を発表した。今月はアジア市場重視し中国組み立て能力を強化することを発表した。
・Envaliorが回転成形用に良流動性PA6を発売した。

2.技術解説

2-1 二軸押出機による高濃度フィラーオレフィンの混錬

二軸押出機でポリオレフィンに大量のフィラーを混錬するとベントの排気にフィラーが随伴して排出されることがある。これはフィラー投入口からベントまでの混錬能力が不足していることが原因なので混錬を強化する必要がある。投入時のフィラーのかさ密度は高い方がよい。ただし、フィラーを圧縮しようとすると計量(重量法)の妨げになる。フィラーを乾燥して蒸気発生を抑えることも有効だ。フィラー投入口の上流に空気抜き専用のベントを設けることも行われている。その場合はベントアップを防ぐためブロック構成を変える必要がある。

2-2 逆止弁作動の再現性

逆止弁の作動は成形品寸法・重量のばらつきで判断される。このため正常に動いていても異常とみなされ、補修や交換が行われる例がある。成形品に関与する要因は樹脂温度、射出速度、圧力条件など多い。電動機は油圧機に比べ作動が安定しているので成形品ばらつきは小さい。サックバック量が適切でなかったり、ランナやゲートの状態が変わったりしても成形品のばらつきは大きくなる。

2-3 PVC押出

PVCは押出時に特有の腐食が起きる。建材分野で使用されている高フィラー材料では摩耗も問題になる。この対策としてクロームメッキ、窒化処理による長寿命化が行われている。さらに高性能な材料としてNitralloyがある。Nitralloyは腐食・摩耗しやすい部分のみライニングする。二軸用バレルのような複雑な形状でもライニングが可能だ。

2-4 ペレタイザーの安定運転

ペレタイザーに関しては文献も少ないし、教育される機会もなく、正しく運転されていないことがある。良好な状態で運転を続けるためには点検、補修体制を確立する必要がある。点検には2種類ある。一つは運転状態だ。ペレット形状、ストランドの流れ方の異常を監視する。

もう一つはカッター周りの寸法管理だ。起動時に送り機構の摩耗、刃のギャップなどを点検し、正しい寸法に調整する。スペアパーツは3組準備し、それぞれを稼働、保全、在庫させれば休止損失を最小限に抑えることができる。

2-5 射出成形品の事前チェック

射出成形品は事前検討が十分行えば、立ち上がりが早くなり、品質、コスト、生産性を向上させることができる。検討のポイントは下記の6項目だ。

・パーティングラインの位置:設定可能か、どこに設けるか
・移動側、固定側の決定:通常は化粧面を固定側にする。
・使用材料:成形品性能はもちろんだが、収縮率、流動性などが検討できる。
・ゲート位置、ランナ:具体的な金型の検討に入れる
・型開閉動作、離型方策
・成形品厚み、厚み分布:性能、寸法、外観に影響する

2-6 警告が出る前の兆候

押出成形などでパネルの警報が出たときは手遅れの場合がある。警報はあらかじめ設定された許容値を超えたとき作動する。それより早い兆候をつかんで修正できれば品質を向上させ不良を減らすことができる。兆候は製品外観、音、電流、通電周期など多様で、ベテラン作業員は気づいていることがある。これらを言語化し、共有し、記録することが重要だ。これらを検討し成形現象、製品品質との関連が検証できればパネル表示に先立って異常が感知でき、被害を減らすことができる。

3.ケーススタディ

3-1 トレーからトレーへのPETリサイクル

スペインのSulayr Recyclingは食品量販店で回収されたトレーをトレーにリサイクルしている。プロセスはTomraと共同開発したもので選別、洗浄、粉砕、フレーク精製、押出からなる。多層トレーは剥離分別工程が入る。2025年には5万tリサイクルした。

3-2 PET二軸延伸ブロータンク

Cypet Technologiesが従来ブローまたは回転成形で作られているHDPEタンクをPET二軸延伸ブローで代替しようとしている。軽量化できるうえ、透明なので新しい用途が期待できる。型締め力1600tのブロー成形機によって1000 Lタンクを作り、インドのユーザーが実用試験中だ。

3-3 従業員持ち株会社

Progressive Componentsは退職金信託制度を利用し、従業員の負担なしに100% 従業員持ち株を実現した。勤労意欲喚起の有力な手段になり、すでにこの制度に移行した企業が全米で6000社ある。

4.あとがき

米プラスチック材料はシェールオイルブームの余波で慢性的な生産過剰に陥っており、この構造の解消はむつかしいといわれていた。それが今度は世界的な原料不足の襲来だ。日本は石油備蓄を取り崩しなどで何とか抜け出そうとしているが綱渡り状態だ。まさに激変の時代で簡単には対応できない。その昔、オイルショックの経験から原料を1年分在庫した会社があったが薦められる方法ではない。結局事態を素直に受け止め、その中で大いに悩むことしかないように思える。

今月の技術解説記事は地味なものが目立つ。こんな時代だからこそ現実としっかり向き合わなければならないことを示唆しているのだと思える。

 

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