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展示会レポート 日本ものづくりワールド2016

安田 武夫

安田ポリマーリサーチ研究所

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はじめに

日本ものづくりワールド 2016は、専門展(設計・製造ソリューション展・DMS、械要素技術展・M-Tech、医療機器 開発・製造展・MEDIX、3D&バーチャルリアリティ展・IVR)から構成される世界最大級のものづくり専門展で、2016年6月21日から3日間、東京ビッグサイトで開催された。

主催者によると会期中の来場者は、約87,300名と前年比大幅増で、大盛況裡に閉幕した。本稿では、この展示会で目に付いたプラスチック関連の展示を写真などで紹介する。

展示内容

超音波骨密度測定装置(古野電機)

写真1に示す。足を乗せるだけで踵骨の骨内伝播速度を測定するコンパクトな超音波骨密度測定装置である。骨粗鬆症の集団検診などに最適である。特徴は以下の通りである。

①安全な超音波方式で若者や妊娠中の被検者も安心して検査が受けられる。

②約10秒と短時間な測定時間で、集団検診に最適である。

③タッチパネル式LCDと内蔵プリンタを搭載。

④5段階の足サイズ調整と温度補正機能による正確な測定

⑤USB、Bluetooth®接続によるPCとの連携

写真1 超音波骨密度測定装置(古野電機)

電動式可搬型吸引器(日東工器)

写真2に示す。小型・軽量で、単三形電池対応の携帯型吸引器である。ボディ等はABS樹脂、透明部品はPCが使用されている。特徴は以下の通りである。

①小型・軽量:300mm×125mm×175mmと小型で、わずか1.2kgと軽量

②2通りの駆動方法で、停電時も使用可能:単三形電池4本又はACアダプタの2通りの電源で使用可能

③静音:専用小型ポンプ採用し、静かな作動音

④安心設計:ゆっくり立ち上がる吸引圧力は口腔組織を傷つけにくい安心設計

写真2 電動式可搬型吸引器(日東工器)

医療用フットコントローラ(日本シュトイテ)

 2ペダル型フットコントローラを写真3に示す。高周波手術装置の操作に使用される。フット部はGF強化PA66 が使用されている。この用途に使用するフットコントローラは、保護クラスと機械的安定性に対する要件が特徴。決して、帯電があってはならない。クラスAP(麻酔認定)の要件が関係する場合もある。

クラスAP適合のフットコントローラは、耐ガス性を確保するために封じ込められている。主な動作エレメントは、イエローペダル(起動「切除」)とブルーペダル(起動「凝血」)である。1)

写真3 医療用フットコントローラー(日本シュトイテ)

検体採取簡易化キット『トラストキャッチャー(トラストメディカル)

写真4に示す。唾液等の液状物質から検体の採取を行える検体採取デバイスである。特徴は下記の通りである。

①オンサイトでの検体採取を実現。簡易診断デバイスとの併用でその場で検査結果が得られる。

②検体採取に機器が不要のためBCP対応としても有効。

③舌触りで検体採取の感触がわかり易い。

④付属のキャップにより保存性がある。

各種検査装置、検査キットを展示していた。

写真4 検体採取簡易化キット(トラストメディカル)

PVDF製配管コネクタ(アラム)

写真5に示す。耐薬品性に優れたPVDF製の新しいコネクタである。特長は、

①幅広いサイズのチューブに対応可能

②TOC成分や金属成分などの溶出が少ない。

③耐薬品性に優れる。

④耐熱性、耐候性に優れ、紫外線や放射線に対しても安定している。

④ガスバリア性に優れ、水蒸気透過性が低い。

⑤食品衛生性に優れる。

各種プラスチック製配管機材を展示していた。

写真5 PVDF製配管コネクタ(アラム)

ベーンポンプ(ツカサ電工)

写真6に示す。熱耐水性が良好なPPSが使用されている。ベーンポンプは回転型容積ポンプの一種で偏心ポンプともいう。他の形式の容積ポンプに比べると、吐出し脈動が小さく騒音が低い。さらに摩耗も少なく長寿命である。プラスチックを使用したチューブポンプ、ギヤポンプ、各種モーターも展示していた。

写真6 ベーンポンプ(ツカサ電工)

マイクロセラムポンプ(山善)

写真7に示す。超高精度の流体制御を実現した分注・定量送液ポンプである。ボディにはPBTなどのエンプラ系材料を使用している。その特徴は以下の通りである。

①きわめて安定した流量再現性を実現

②バルブレス機構が高性能を保証

③駆動部品点数が1点のみでシンプル

④抜群の耐薬品性、安定性

⑤高精度・高性能・高信頼性

用途分野は医療、測定・分析機器、食品などである。

写真7 マイクロセラムポンプ(山善)

コンパクトモジュール式コネクタシステム(オーディーユージャパン)

写真8に示す。医療用機器のコネクト部品である。高電圧・高電流下で使用されるため絶縁材料はPSU、PEI、PEEKが使用されている。MRIやX線検査装置などに使用されているとのこと。

写真8 コンパクトモジュール式コネクタシステム(オーディーユージャパン)

腹腔鏡下経皮的腹膜外ヘルニア閉鎖用針(コスミックエムイー)

腹腔鏡下経皮的腹膜外ヘルニア閉鎖用針を写真9に示す。穿刺針、糸送り針、糸回収針の1セット3本の構成になる。握り部はABS樹脂と思われる。

写真9 腹腔鏡下経皮的腹膜外ヘルニア閉鎖用針(コスミックエムイー)

従来品では縫合糸が外側に出たままの状態で穿刺、運針を行っていたのに対し、本キットでは縫合糸が全てニードルの内腔に収まるため、術者へのストレスが大きく軽減、手技時間が短縮され、患者への負担も軽減される。

伸縮FPC(太洋工業)

写真10に示す。ポリウレタンをベースとした伸縮性FPCで、医療・健康科学用途スマートウェア向けである。特徴は以下の通りである。

①高柔軟性

②伸ばすことが可能

③捻じれに強い。

超極薄FPC、テキスタイルFPCなども展示していた。

写真10 伸縮FPC(太洋工業)

コロナ放電式イオナイザー(ビープロ)

コロナ放電式イオナイザーなどを写真11に示す。静電気除去装置でハウジングはABS樹脂である。

独自技術による最適なイオンバランスが提供でき、多くの顧客が抱える静電気の問題を解決している。

メンテナンス性に優れ、簡単に清掃や放電ピンの交換が可能である。静電気対策のため、顧客の環境での静電気除去確認の測定器なども提供している。

写真11 コロナ放電式イオナイザー(ビープロ)

電磁弁(サーパス工業)

フッ素樹脂を使用した電磁弁を写真12に示す。その特徴は、

①ガス透過対策を施し、耐薬品性を向上した電磁弁である。

②コンパクト設計により、省スペースに取り付け可能である。

フッ素樹脂を使用した配管材、器具を展示していた。

写真12 電磁弁(サーパス工業)

ミスト噴霧装置(ウィズダム)

写真13に示す。世界最小サブミクロンレベル(直径約0.2μm)のミストを発生する噴霧装置である。その特徴は、

①様々な液体を、直径約0.2μmのミストとして空気中に発散する。

②液体消費量はごく少量で済む。

③微小な粒子径を発散するため、大空間に広範囲に素早く粒子を拡散させることができる。

④小型、軽量で、複雑な製造工程を経ることなく簡易な構造で上記機能を実現している。

用途は医療、農業・畜産分野での抗菌・殺菌・防虫・殺虫である。

写真13 ミスト噴霧装置(ウィズダム)

圧空バルブ(CKD)

圧空バルブを写真14に示す。ハウシングはPCとPBTが使用されている。特徴は、

①環境性能:連続通電OK(低発熱・省電力回路)、低消費電力

②安全性:手動誤作動防止、誤作動トラブル抑制、異物トラブルの防止

③信頼性:低摺動・高寿命を実現、短応答時間、高耐久性、放置応答性向上

④使いやすさ:回転式Dサブコネクタ採用、配線コネクタ上・横共用、2サイズミックスなど

リニアスライドハンド、エアユニット、電動アクチュエータなども展示していた。

写真14 圧空バルブ(CKD)

ユニットベアリング(アジアトレーディングコーポレーション)

ユニットベアリングを写真15に示す。樹脂ベアリングの一種で、軸受、軸受箱及び密封装置などをコンパクトにまとめ、機械の主要部分を構成するユニットとして標準化し、汎用性を高めた使い易い製品である。本製品は、PBT製ひし形フランジハウジングの中にPTFE製のベアリングが配置されている。

同社は中国製(ブランド名:TARSO®)の各種ベアリングを世界の種々の産業に供給している。

写真15 ユニットベアリング(アジアトレーディングコーポレーション)

固体潤滑剤分散型樹脂軸受「ファイバーフロンOH」(オイレス工業)

写真16に示す。熱硬化性樹脂をバインダー、摺動層には特殊樹脂繊維交織布を分散配合した固体潤滑剤を用いた軸受である。特長は、

①大気中、水中、海水中で使用できる。

②潤滑被膜を形成、優れた摩擦特性を発揮する。

③摺動層とバンク材(GFRP)の2重構造により、金属軸受並の耐荷重特性を有する。

④機軸受に比較し、初期グリース塗布が不要、水中、水飛散環境下で異種金属接触腐食がない、軽量性等のメリットがある。

用途例は水門、水力発電設備、水処理機械等である。

写真16 固体潤滑剤分散型樹脂軸受「ファイバーフロンOH」(オイレス工業)

真空パッド(タツタ)

写真17に示す。物品の搬送に使用する真空スピーダー(真空ポンプ・真空発生器、真空パッド)の構成部品である。特徴は、

①油が塗布された鉄板搬送時の滑り防止

② 耐摩耗性に非常に優れたポリウレタン製

③ 高い吸着力で高速度のワーク搬送が可能

④ 薄い鉄板を吸着時でも変形なく移送可能

適用分野は板金、箱、自動車パネル、プレス機の鉄板供給、搬送である。

写真17 真空パッド(タツタ)

CinchSeal(奈良機械製作所)

写真18に示す。PTFEのロータリーカップがシャフトに密着し共回りをするシリコンエラストマーを挟み込んだ構造のシールシステムである。特長は、

①製品ロスおよびメンテナンスコストの低減

②ベアリング故障、シャフト損傷の予防

③食品、バルクプロセス等の過酷な環境に耐える設計

④取付け、分解、洗浄、交換が簡単

⑤-48~+230℃の温度は会で使用可能

適用例はスクリューコンベア、混合器、押出機などである。

スラリーポンプなども展示していた。

写真18  CinchSeal (奈良機械製作所)

電動義手の“HACKberry” (Stratasys)

PC製の電動義手を写真19に示す。3Dプリンタを使用し、小ロット製造である。HACKberryは日常的に使用可能というユーザーの声を多く入れた実用的な義手である。Hackberryとはニレ科の非常に枝を多くつける樹木。世界中の開発者や義手ユーザーが思い思いの形に作り上げられる基本概念になる義手を目指している。多くの3Dプリンタによる成形品を展示していた。

写真19 電動義手の“HACKberry”(Stratasys)

PPS製3Dプリンタ成形品(アスペクト)

写真20に示す。PPSを使用した造形品である。同社は粉末焼結で造形を行う。その特徴は、高速造形、ランニングコスト削減、簡単な材料交換、高い信頼性、優れた造形精度などとのこと。PA12系、PA6系、PP系材料の造形モデルも展示していた。

写真20 PPS製3Dプリンタ成形品(アスペクト)

スムーシースクリュー(日本ギア工業)

写真21に示す。ボールねじにおけるナットとボールを一体化した構造の高効率スクリューである。PET製のナット、ホールねじと同じ形状でステンレス製のねじ軸と部品はこの2点だけというシンプル構成である。特長は以下の通りである。

①高い伝動高率(50%)

②無給油で無円滑な作動

③長寿命・低摩耗

④高品質

写真21 スムーシースクリュー(日本ギア工業)

フッ素繊維「トヨフロン」使用部品(東レ)

異音防止のための防振ゴム、ウインドウスタビライザー向け用途例を写真22に示す。「トヨフロン」は、合成繊維の中で最高レベルの耐熱性・耐薬品性を備え、低摩擦性・耐磨耗性・離型性にも優れた性能を発揮するPTFE繊維である。様々なニーズに対応するため、長繊維だけでなく原綿、カットファイバーなどの多様な素材形態を展開している。

写真22 フッ素繊維使用部品(東レ)

トルクリミッタ(オリジン電気)

写真23に示す。設定トルクを越える力が作用すると、伝達力を遮断する機械要素である。その特徴は、

①バネ式でありながら正・逆両方向に同トルクでスリップし作業環境の影響を受けにくい。

②高トルクの設定が可能である。

用途例は玩具・ロボット(アーム部過負荷保護)、ATM・コピー機(重送防止)などである。

写真23 トルクリミッタ(オリジン電気)

ペン型電動ピペット(アイカムス・ラボ)

世界最小・最軽量のペン型電動ピペットを写真24に示す。ハウジングはABS樹脂である。その特長は、

①小型・軽量で作業負担を軽減

②マイクロアクチュエータ技術で高精度連続分注を実現した。

③手の熱による精度への影響を改善

写真24 ペン型電動ピペット(アイカムス・ラボ)

半重合熱可塑性プリプレグ(アプライズ)

写真25に示す。新開発の超低粘度で加工性に優れ、強度・剛性のある熱可塑性プリプレグを用いて、金型内で母材樹脂の重合・フォーミング・他の樹脂を同時に成形するアウトサート成形を同時に実現した。

この技術を用いて、従来のFRPでは対応できなかった医療機器等への展開が可能になり、基幹産業の電子機器開発にて蓄積したノウハウを基礎に、低コスト・高品質な製品の開発・製造を目指すとのこと。

写真25 半重合熱可塑性プリプレグ(アプライズ)

3D-WELTOSSによる成形品(ポリプラスチックス)

写真26に示す。同社のプラスチック製品開発ソリューションのプラモス関連の中空体・立体構造流路形成技術(3D-WELTOSS)による接着テトラフルオロエチレン品である。溶着技術を応用したもので、プラスチック中空体形成に止まらず、複雑な立体構造流路を自由に想像することにある。その特徴は以下の通りである。

①従来の加工法では形成できない複雑な流体回路・中空構造が製作可能

②中空部分が階層化された製品、クロス中空構造体も製作可能

③圧力が付加された耐候性場合でも十分な気密、耐クリープ性を有する。

④複数の部品をモジュール化することにより、トータルコストダウンが可能

高品質肉厚部品等も展示していた。

写真26 3D-WELTOSSによる成形品(ポリプラスチックス)

各種要素技術による成形品(三光化成)

写真27に示す。同社が持つ様々の成形の要素技術で生産された製品群を集合させたものである。内容は以下の通りである。

①厚肉透明成形技術:樹脂製Yストレーナー(PC製)

②内側コーナーR付成形:内側コーナーR付エルボ管(PBT製)

③メッシュ成形技術:ストレーナー(PP製)

④高機能樹脂成形技術:キャップ(TPI製)

⑤特殊工程成形技術:U字パイプ(PBT製)

多くの興味ある成形技術・成形品を展示していた。

写真27 各種要素技術による成形品(三光化成)

熱可塑性CFRP製パンチング真空成形品(東レプラスチック精工)

写真28に示す。従来困難であった熱可塑性CFRP製成形品の多孔性3次元形状品をマスキングフィルムを使用した真空成形により低コストで実現した。高強度かつ高開孔率の成形が可能となった。各種熱可塑・熱硬化CFRP成形品、高機能樹脂製品なども展示していた。

写真28 熱可塑CFRP製成形品(東レプラスチック精工)

ポリイミド(PI)フレキシブルヒーター(オーエムヒーター)

写真29に示す。エッチング加工したヒーターエレメントを上下2枚のPIフィルムで溶着したフィルム状の面状発熱体。超薄形、超軽量を実現した。特長は、

①超薄形:厚さ0.2mm

②耐熱温度:連続200℃、最高230℃

③製作可能サイズ:最小25mm×25 mm、最大400 mm×600 mm(既製品)

④特殊な形状も製作可能

用途は宇宙航空産業、電気・電子機器、分析機器などである。

シリコーンラバーヒーターなども展示していた。

写真29 ポリイミド(PI)フレキシブルヒーター(オーエムヒーター)

奇跡の一本松のCFRP芯材(信濃工業)

写真30に示す。同社はCFRPパイプの製作を行っている。それを生かして、2011年3月11日に発生した東日本大震災での激しい津波に耐えて残ったただ一本の松の木「奇跡の一本松」の保存 プロジェクトに参加した。同社の軽く、高強度の同社のCFRPパイプが、逞しく曲がりくねった一本松を中心から強く支えている。

写真30 奇跡の一本松のCFRP芯材(信濃工業)

その他に注目された主な展示

・電装産業の小型DCダイヤフラムポンプ

・Sunningdale TechのPPSU製医療用器具

・ユウホウのCF等を使用した高機能不織布

・みやまのPPS製水周り部品

・多くの会社が展示した3Dプリンタなどのラピッドプロタイピングの技術

・タキロン等の各種切削用素材及びそれを使用した各社の切削加工品

・ゼウス、ペンニットー等が展示した各種材料、形状のチューブ

・機械要素の代表である多くの会社が展示した、ギア、ベアリング、トルクリミッタなどの部品

・Matexの遊星歯車減速機

・多くの会社が展示した種々のプラスチックを使用した各種配管用器具

・表面装飾に関する技術

おわりに

日本のものづくりの粋を集めた展示会である。非常に多くの材料、成形法、用途、機器などが展示され、日本の技術力の感じた見応えのある展示会であった。紙面の限りもあり、全容を語るのは困難である。これらの技術が、今後の日本の産業の成長に寄与することを期待したい。

plastics-japan

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