佐藤功技術士事務所
佐藤功
PPE、PA66、ウレタンの新成形法、PVT特性、シート厚み測定、乾燥機、スクリュー解析、厚肉成形、リサイクル、溶剤洗浄、MIM、3Dプリンティング、熟練工不足対策
2月時点では回復基調が続いている。懸念された物流問題も乗り越えられた。産業指数も50.9と待望の50超えを果たした。材料価格は全体に横ばいだったが、需給バランスが特に悪いポリオレフィンでは価格回復傾向がみられている。しかし、トランプ関税問題の見通しが付けがたく、新年度の動きは予想困難だと報じられている。
・Henkelがリサイクル用情報を表示する実験を開始した。
・Origin Materials がPET製のボトルキャップの生産を始めた。
・Engel(オーストリア)とCannon(イタリア)がウレタンの新成形法を共同開発した。
・Mack Molding(モルダー)が大型設備投資した。
・Advanced Blending Solutions (ABS)がラボ用ペレタイザーを発表した。
・コロナ禍で中止されていた押出技術会議が開催される。
・プラスチック循環構想のコンテストが開催される。
どちらも耐熱性が高いが、PA66は結晶性で、PPEは非晶性のアロイ材料なので特性はかなり異なる。
PA66は強度、耐疲労、耐衝撃、耐摩耗性が優れている。水分の影響を受け寸法や特性が変わる。耐有機溶剤性が高く潤滑油との接触が避けられない機械部品や自動車エンジンルーム内部品に適している。成形時の型内流動性が優れている。
PPEは配合の影響を受けるがTgが高いため、高温での剛性が高い。加水分解しにくく、日光、無機薬品にさらされる用途に適している。低比重なので軽量化効果が大きい。成形収縮率が低いので成形品の寸法精度を高く出来る。
射出時の溶融樹脂投入量はスクリューストロークから算出した値と実際量との間に差異がある。この理由を検討した結果、保圧切り替え時に溶融樹脂が膨張し、スクリューを後退させることが原因であることが分かった。この挙動はPVT特性影響を受けるので材料によって異なる。
Mikrosが電磁誘導法によるインラインシート厚み計を開発した。従来のガンマ線、X線式に比べ小型軽量で測定範囲も広い。温度も同時計測しており自動的に密度換算出来るのでリップ自動調整が高精度で行える。温度データをマップ化すると局所的な欠陥が発見でき、品質向上に役立てることが出来る。
重量落下タイプの除湿乾燥機では材料落下時に湿度の高い排気がホッパーに逆流することある。PET、PBT、PCのような厳しい水分管理が必要な材料ではこれが原因で乾燥不良を起こすことがある。ホッパー下に仕切弁を入れ、原料供給時以外は閉じておくと良い。
押出成形ではスクリュー、押出条件の最適化で生産性を向上させ、コストダウンが出来る。例えば90 mmφ押出機を使用したPEインフレフィルムラインでは、当初は130 ㎏/hrで生産していたがスクリュー摩耗が進み数年後には117 kg/hrに落ちてしまった。年間8tの生産減になる。新しいスクリューに交換したところ、154 ㎏/hr生産出来るようになり、不良率も5%削減できた。コストは2.28$/㎏が2.19$/hrになり、3.9%のコストダウンが出来た。スクリュー交換費用は8400$だったので、投資回収期間は14日だった。
Lev Akopyanは射出成形機で厚肉製品を成形する方法を発明した。CFなどの補強材のインサート技術を開発している。スーパーエンプラへの応用を進めている。*訳注:技術内容が公表されていないが、射出圧縮成形の原理を利用した技術だと思われる。
リサイクルは廃材を粉砕してペレタイズして再利用するのが一般的だ。この方法では大量の熱エネルギーを消費するうえ、不純物除去が不十分だ。これに対し、粉砕材を溶剤洗浄して不純物除去して使用することが各社で進められている。
・Purecycle
廃PPを粉砕し超臨界下で溶剤洗浄している。食品分野にも使えるレベルのリサイクル材を500 kg/hr生産している。
・Dow
P&Gが開発した洗浄剤でrPEの生産を始める。
・Trinseo
PSなど非晶性材料の溶剤法によるリサイクルに取り組んでいる。rPSは食品分野に使用できるレベルだ。
・Sulzer Chemtechは溶剤洗浄法で使われる溶剤の省エネ型回収技術を開発した。
PTI Techは材料選定能力が評価されて成長した。主要顧客は宇宙、軍事、医療だ。混錬設備を持っており、最適な材料が得られない場合は自社で配合する。金型はほとんど内製している。MIMもはじめている。金属部品、プラスチック部品をセットで受注するケースもある。軍需は利益率が高いが変動が大きいので売上比率を増やさないよう努力している。3Dプリントを試作、小ロット部品、治具製作などに活用している。自動化にも熱心で共働ロボットを活用している。
ポーランドの食品包装フィルムメーカーBogucki Folieは熟練工不足対応のためReifenhäuserの厚み調整システムを導入した。この方式はロボット巡回してリップ調整ボルトを調整する。導入前にReifenhäuserで事前試験を十分行ったため、順調に導入出来、品番切り替え時間の短縮、品質向上等の成果をあげた。
トランプ政治への警戒はおひざ元だけに大変なようだ。好況は駆け込み需要バブルで、はじける危険も感じる。技術解説では基礎技術の解説が多かった。一方ではリサイクルに溶剤洗浄を活用すると言ったあまり聞かない試みも紹介されている。視野を広げるきっかけにしていただきたい。
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