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アメリカ成形業界状況(2023.02) ―雑誌から垣間見る―

佐藤功技術士事務所
佐藤功

1. 全般

景気低迷が続いている。これを反映して、12月のプラスチック加工産業指数は42.9(*)と、5月連続悪化が続き、数年来の最悪になった。下位指数もすべて落ちており、回復の兆しは見えない。

  • これを反映し、汎用樹脂価格は底這い状態が続いている。この状態は少なくとも3月末までは続くと予測されている。
  • 材料減産が進められているが、在庫は減っていない。あるアナリストが今冬は寒波が来てもモノ不足は起きないだろうと断言しているほど深刻だ。

*出版社が独自に発表している指数で、50が基準。新規受注、工場稼働率、受注残、輸出、材料在庫などの下位指数を総合して決める。

2. アワード

アメリカ業界はアワードやランキング指向が強い。今回はSPE(全米プラスチック技術者協会)による、自動車部品のアワードが発表された。総合部門と10の部門があり、結果は表1の通りだ。CF製の板ばね、3Dプリントによるシールが量産車に載る点が注目される。材料では複合材料に使用が多い。成形法では多材成形技術の活用が目に付く。

また、射出成形業対象の「Top Shop」調査開始がアナウンスされた。モルダーが自主的にアンケートに答え、これを集計分析して優秀なモルダーの要因を明らかにする調査だ。分析結果は10月に発表される。その時、優秀モルダーが公表される。それ以外の参加モルダーは個別に相対的なランクが返答される。

アワード指向が強いのは日本に比べるとモルダーの系列化が弱く、アワード獲得の宣伝効果が大きいことが一因になっている。

3. その他

(1) ケースステディ

Plastic Molding Technologyは企業買収によって射出、真空成形、押出、金型部門をそろえた。各部門を同じ経営指標で見ること、営業、技術のシナジー効果、廃材の有効活用を目指していく。具体的には古い設備の更新が進んでいる。

(2) 環境対応

リサイクルでケミカルリサイクルの推進、添加剤の重要性を説く記事があった。要請が強いが思惑通りに進んでいな苦悩が伝わってくる。

(3) 省エネ

ペレット乾燥時間と昇温時間にメスをあてた記事があった。いずれも管理されていない例があり、注目してよい。ペレット乾燥はNovatecが水分計付きのシステムで自動的に最適化できることをアピールしている。後者は成形品の品質を見ながら推進しようという留意喚起記事。

(4) K22レポート

アメリカ誌は展示会報道に熱心だ。KやNPEは展示予報から始まり、半年くらい続く。今回はその一環のK2023出展のブロー成形技術が紹介されている。各機種とも電動化、自動化、省エネなどが進んでいる。新製品としてTrexelの光遮蔽PETボトルが紹介されている。プリフォームをサンドイッチ成形し、中層を発泡させて光遮蔽機能を付与している。東洋製缶のFi-Cellと同じ発想だ。

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