佐藤功技術士事務所
佐藤功
1月のプラスチック加工産業指数は45.9で、対前月比3ポイント改善した。業態別では下請け業態の方が回復が速い。
石油の高騰が続き、1月末にはヒューストンを暴風がおそったが、材料価格にはほとんど影響しなかった。このためどの材料も第一四半期を通してほぼ横ばいで終わりそうだ。来四半期の状況は需要の回復如何にかかっている。
制御が高度化し、細かい条件設定が可能になってきた。うまく利用するとフードバック制御に匹敵する運転も出来る。振動開始は従来のシーケンス制御の他、ホーンの位置、治具に埋め込まれたロードセルの圧力、電力負荷などが選べる。振動時間はタイマー設定のみだったが、ホーンの位置(絶対位置または移動量)、電力負荷などで制御できる。冷却工程が重視され、加圧力、保持時間を変えることが出来る。電力負荷の変化、ホーンの位置などは品質管理に使える。
溶着は接着剤や機械的係止と違い、接合部に他物質が介在しないので同材質同士の接合では好適だ。超音波溶着現象を理解し、適切な方法、条件を選定して欲しい。
電動化による省エネ指向、高速化が進んでいたが、最近は要求性能の高度化、求人難などを背景に自動化のニーズが高まっている。特に人手がかかる、離型、トリミング、検査(画像検査)、箱詰めなど成形後工程の投資効率が良いため、注目されている。
包装材料メーカーのPackaging Personifiedは小企業だが大手に対抗して成長している。インフレーションフィルム成形から始まり、積極的な買収で事業を拡大してきた。顧客の求めるものを供給することをモットーにして食品、農産物、日用品などで顧客を増やしている。その結果、ラミネート、印刷などで差別化技術を有するに至っている。
ブロー成形業のConfer Plasticsは輸入品との競合で「大型品は輸送コストがかかるので有利になる」と考え、成形機を大型化した。また、「庭で楽しむ」をテーマに様々なエクステリア製品を開発した。その中でプール用階段(図1参照)が主力商品に育った。オールプラスチックで簡単に組み立てられる。直販により手ごろな価格で届けられるようにした。
商品開発により、組み立て法、ヒンジ部などのデザインノウハウを蓄積できた。今後は人手不足に備え自動化、情報化に注力する。部品ごとの軽量化によってコストダウンを進めている。環境問題では自然保護活動に注力している。材料のリサイクルは大型ブローでは品質問題があり、今のところケミカルリサイクル以外は考えていない。
車両、医療機器向け部品の真空成形メーカーProductive Plasticsは3Dプリンタで治工具を製作している。これを活用して真空ポンプのインペラが壊れたときに緊急で代替品を作り、補修部品が入荷するまで使ったことがある。
また、形状見本を作り商談に役立てた。真空成形独自の問題であるコーナー薄肉部の補強用の部品にも活用している。
型内圧力測定がGMP(適正製造規範)、ISO 13485で言う再現性確保の確認手段として注目されている。実際に測定し、その記録を残せば様々な品質確証手段を集約することが出来る。ショット毎の圧力挙動と具体的な品質項目との相関が見つかれば、型内圧力を品質基準にすることが可能になる。これを良否判定に使える可能性が出てくる。予防保全、従業員教育にも役立てることが出来、品質の向上、コストダウンにもつながる。
科学的成形(*)の提唱者John Bozzelli が提唱したエネルギーコスト削減のヒントとして表1のような21項目を挙げている。全員参加を訴え、技術だけでなく行政、電力会社の制度活用など多様なアプロ―チを挙げている。活用を期待したい。
*注:科学的成形(Scientific Molding)
アメリカで繰り広げられた運動で、射出成形技術レベルが大幅に向上した。
表1 射出成形省エネのための21のヒント
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