佐藤功技術士事務所
佐藤功
3月のプラスチック加工産業指数は48.6と対前月比で1.6の改善がみられた。改善基調が定着してきた。ただし、原料樹脂の過剰設備状況は変わらず、価格は低位安定している。モノマー不足が解消してきたPPは値下がり傾向がみられる。
・INEOSはペプシコ向けにリサイクル材50%を含む食品包装用フィルムを供給している。このフィルムはEU基準を満たしており、イギリスでスナック「Sunbites」の包装に使われている。
・Syensqo と Tomraは共同で複合フィルムからPVDCを分離する技術を確立した。
・Novatec が新しい乾燥システムをNPE24に出展する。このシステムは誘電率法で材料水分を常時監視し、乾燥条件を最適化している。従来の乾燥機で起きていた乾燥不足、材料劣化、エネルギーの無駄使いを解消できる。
・Beyond Plasticは韓国CJ製PHAを主材とした生分解性ボトルキャップを開発した。現在射出成形によって16個取り、5.5秒サイクルで成形している。また24キャビティの圧縮成形技術を開発中だ。このキャップは100%リサイクルできる。PHAは海洋分解性材料として認定されているがコンポスト性についても検討している。
・BausanoはNPE24に2軸押出機の統合制御システムを出展する。このシステムはモーター、ヒーターを総合的に制御し、樹脂温度の最適化と動力消費量の最小化を図ることが出来る。
・Cnair(原料搬送機器メーカー)はNPE24で新しい原料搬送システムを出展する。学習機能付きAIにより各機器が制御され、各機器は最適な条件で駆動し、異常検出も行う。
・Hager がスイッチ類にリサイクル材料を約30%使用し始めた。
成形不良原因を一つだけに起因させてしまうと不良対策に追い回される。射出成型現象は様々な要因が絡んだ複雑な現象だ。出来るだけ根本を押さえて対策を打つ必要がある。
射出成形ではばらつきが避けられないことも考慮しなければならない。わずかな変動で不良が発生するような成形条件では安定した成形は出来ない。
押出機動力が不足すると押出条件は保たれなくなってしまう。吐出量を維持するためスクリュー回転数を上げると樹脂温度が上がってしまう。これを防ごうとしてスクリューを深溝タイプに変えると今度はトルク不足になる。
特に押出機を転用した場合に問題になりやすい。メーカーに任せず、余裕を持った駆動系を選定したい。転用だけでなく、操業を続けているうちに20%程度のラインスピードアップは十分考えられる。これらを考慮して駆動系を選ぶ必要がある。
インフレ成形では起動、停止が正しくしないと準備時間が長くなってしまう。特に完全に冷えた状態から起動させるときは慎重に行わなければならない。昇温開始前にヒーターの断線がないことを確かめる。昇温中は異音、樹脂漏れなどを監視し異常処置が即とれるようにする。昇温中は温度ムラが大きく、発生ガスの噴出、溶融樹脂流出が起き、最悪の場合は機器を破損させてしまう。休止期間が長かった場合は成形機内の水分が水蒸気になり噴出する場合もある。冷却系では通水の確認、空気経路の清掃を事前に行っておく。ダイスを振動させている場合は始動前に振動させてはならない。
停止は吐出量を徐々に下げ、これに応じてラインスピードも下げていく停止法が好ましい。この場合も人が立ち会い、異常に即応体制をとっておくことが必須だ。
熱硬化性樹脂の硬化過程はブラックボックスと言われているが、加熱しながら粘弾性特性を測定することにより、粘度変化、ゲル化時間などを知ることが出来る。ゲル化が早すぎると充填不足が起きる。最近は誘電モニターが取り付けられるようになったので、実際の成形で硬化過程がリアルタイムでモニタリングできるようになった。
Eden Manufacturingは金型部門などとの戦略的な垂直統合で成果をあげている。例えばインサート金具を内製することにより、高度な複合部品が製造できる。金型部門でもNC盤と放電加工機を組み合わせて金型の高度化を実現している。また、金型は成形部門で条件出しをしたうえ顧客に引き渡せる。
成形機もサイズの違うシリンダー/スクリューをそろえて1台で数台分の働きが出来るようにしている。様々なスキルを持った人材を育てて、この組み合わせによって新しいシナジーが生み出せるようにしている。自動化を進め夜間は無人運転で連続操業を行ってい
EVの普及に伴い、Liイオン電池の工場から自動車メーカーへ、そして将来は再生工場ないしは廃棄物処理場への大量輸送が計画されている。Liイオン電池は慎重に輸送する必要がある。熱成形モルダーTriEndaは輸送業者の要請に応じて、国際安全基準を満たすHDPE製のコンテナを供給している。コンテナは何層かのトレーからなり、ロボットによる扱いに対応しており、約500個の電池を収納できる。
要求性能が高く、高い寸法精度が要求され当初はABSの射出成形で計画されていたが、高価なことと利用できる大型成形機がなかったため、HDPE熱成形されることになった。これにより要求性能をクリアしたうえ、価格の引き下げにも成功した。
ポストコロナの好況感がプラスチック成形業でもでも見られるようになった。NPE2024では3Dプリントの活用、自動化へのAI活用、環境対応材料など様々な革新技術が紹介され、体質改善の加速が期待できる。しかし、編集長は慎重な見方をしており、業界の保守的な姿勢が変わらないと、これら技術は活きないとしている。日本はどうだろう。
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