佐藤功技術士事務所
佐藤功
生分解性プラスチック、酵母、分子量、クッション、二軸押出機、冷却ロール、廃材粉砕品、生産監視、ブロー成形
需要が回復せず材料価格も軟調が続いている。消費マインドは高いと見られているので消費主導の回復が起きる可能性はある。ただし、新年には東海岸・メキシコ湾の港湾スト、新政権の関税動向など不確定要因が控えている。
・3月に PTXPO(プラスチック技術展)が開催される。部品コンテストが技術部門と環境部門に分けて併催される。
・昨年持たれた国連プラスチック生産規制交渉(INC-5)は合意できなかった。
・LG化学と Reifenhäuserがうす肉インフレフィルム製膜技術開発で協力している。
・ExxonMobilがリサイクル能力の拡大を計画している
・連邦政府がENTEKの電池分離膜工場に融資した。
・包材メーカーのAmcor plcと Berry Global が合併に同意した。
生分解性プラスチックであるポリブチレンコハク酸(PBS)の原料コハク酸は今のところ石油由来が主流だ。酵母菌は蔗糖をコハク酸に変える。ただし、反応が進むと培地が酸性になり作らなくなってしまう。耐酸株を使うか、培地のpH調整により作り続けることが出来る。遺伝子組み換えによって産出量を増やす検討も進められている。工業生産するにはスケールアップが必要だ。酵母法になればLCA分析によると温暖化係数を30~90%削減出来る。
プラスチックを構成する分子の分子量は加工性、性能に影響する。実際の成形材料は長さの異なる分子の混合物なので平均値で表す。平均値は計算法によって数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)がある。この比、Mw/Mnは分子量分布によって変わる。分子量分布は成形性と性能のバランスを取る場合に重要だ。来月は分子量と性能、成形性との関連について解説する。
保圧切り替え時にスクリューが動き、キャビティ内圧力が変化し、寸法、外観不良の原因になる。このような場合クッション量を適切に取れば影響が軽減できる。保圧切り替え時の圧力変動が小さい場合はクッションを取る必要がない。
2軸押出機は様々な条件を取りうるが限界がある。これは使われているモーター出力や各要素のバレル/スクリュー間の空間の大きさで、これらを境界条件と言う。スクリュー設計、運転条件設定はこの範囲で行わなければならない。
Tダイ成形で使われる3本冷却ロールの設計は簡単ではない。まずたわみ計算が必要だ。特に第1ロールは重要だ。次に熱交換能の検討が必要だ。特に第2ロールは冷却の大部分を担っている。熱は樹脂/ロール面/ロール内面/熱媒の順に伝わるのでそれぞれの伝熱を検討する。熱媒の出入り温度の差が大きいとロール表面温度にムラが生じる。このため、ロールごとに熱媒の流れ方向を変えることが望ましいが行っている例は少ない。特に結晶性材料ではロール表面温度ムラの品質への寄与が大きい。
廃材活用推進が要請されており、自社リサイクルが増えてきた。成形を安定させるためには粉砕後ペレタイズする必要がある。粉砕品は性状のばらつきが大きく、かさ密度が高いためだ。搬送性が悪い。このため粉砕品搬送ラインはペレットより大口径にし、送りスクリューのような詰まり対策を各所に設けることが必要だ。設備を適正化すれば効率が上がり、省力化も実現できる。
Elite Biomedical は医療機関の要請に応じてポンプ、監視装置などの部品を供給している。部品は材料、精度などで現行品以上の品質で安価なものを迅速に納入することが求められる。このため、試作、試験を徹底的に行う。品質管理も重視している。
成形業者のDCTは24時間連続運転をしており、生産データを集約しこれをベースに生産計画、材料手配している。生産データ集約ソフトをサブスク方式で導入した。短期間で稼働させることが出来、60時間/週の工数削減ができた。また、生産計画の信頼性が向上した。
PolyJohnは熱成形パネルでポータブルトイレを作っていた。これをブロー成形に切り替えた。品質、寸法精度が向上したうえ、生産性が2倍になった。品番自動切換え、トリミングロボットも順調に稼働している。他部品もブロー成形化を進めている。回転成形製の基台部品の発泡成形への切り替えも進めている。獲得した成形技術を活用してベビーベッド、防災機器など新しい分野への進出も検討中だ。
Reifenhäuserはアメリカ大陸で初めて廃プラスチックから直接インフレ成形できる装置をメキシコのBioflexに納入した。同社は包装用PEフィルムを廃プラから生産している。廃プラスチックは容器など射出成形分野で使われているが、フィルムは材料変動が大きいため成形できなかった。この装置では廃フィルムフレークを2軸押出機に直接投入する。押出機により十分不純物を除去し、インフレ成形する。これにより、ペレタイズ工程が省けるため、大幅なエネルギー節約になった。
SPE自動車部品アワード2024の結果が発表された。EVなど対象が拡大し、受賞部品も増加している。主要受賞部品を下表に紹介するが、詳細はSPEのURLを参照されたい。
(https://speautomotive.com/)
表1 主要なSPE自動車部品アワード受賞部品(2024)
本レポートはPlastics Technology誌の最新号を情報源にしている。Net時代なので本誌は紙版とNet版がある。Net版が出来たころは速報性が重視されており紙版の抄録だった。このため、紙版の到着を待たないと全容が分からなかった。最近は紙版が減頁され、紙版に載らない記事も出るようになってきた。例えばSPEアワードの記事は紙版には掲載されない。デジタル時代を実感している。
アメリカは政権交代に注目が集まっている。プラスチックのような基幹産業は大きな影響を受けないのではないかとの見方も出ている。何が起きても対応できる迅速、柔軟な行動力が求められているのはどこでも同じだ。
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