展示会レポート Nプラス2017

秋元英郎

秋元技術士事務所

1.Nプラスの概要

Nプラス2017(主催:一般社団法人プラスチック工業技術研究会、共催:アテックス株式会社)は2017年9月13(水)~15日(金)にかけて東京ビッグサイトで開催された。同時開催の次世代自動車関連、人工衛星関連の展示会と合計された来場者数ではあるが、3日間で3万人を超える来場者があった。

小規模な展示会ではあるが、技術セミナーもあり、思わぬ掘り出し物が見つかる展示会である。

2.樹脂系材料

日本ゼオンは、特殊なシクロオレフィンポリマーの開発品として、高耐熱タイプのL-24を展示していた。PET樹脂との比較において耐熱性と耐加水分解性に優れている。他に、誘電率が低いために電気絶縁性や低伝達損失性に優れる。他の開発品として透明軟質接着用のL-3PS/LSシートを展示していた。柔軟性があり吸水性小さいため、吸湿に敏感な用途に向いている。

写真1 日本ゼオンブースのL-24紹介パネル

写真2 高耐熱COP(L-24)のサンプル展示

写真3 日本ゼオンブースのL-3PS/LSシートの説明パネル

写真4 L-3PSを用いたLED照明のアプリケーション(水に浸漬している)

JXTGエネルギーはオレフィン系エラストマージェラティックの押出シート、3Dプリンター用フィラメントを展示していた(写真5)。最近はFDM方式で柔軟性のある造形のニーズが高まっているこのことである。フィラメントはホッティーホリマーから供給されている。

ジェラティックの特長は加硫ゴムに似た引張特性を示すところにある(図1)。

図1 ジェラティックの引張特性の図(JXTGエネルギーの配布資料より抜粋して引用)

写真5 JXTGブースに展示されていたジェラティックのシートとフィラメント

3.セルロースナノファイバー、炭素繊維

中越パルプは、Nanoforest(セルロースナノファイバー、CNF)のサンプルを多く展示していた。Nanoforestは水中対抗衝突法と呼ばれる方法(セルロースの分散液を高速で噴射して衝突させて微細化する方法)によって製造される。

未変性のCNFを濾紙の表面処理として用いると撥水性を示し、ポリエチレンを処理すると親水性を示す。

Nanoforestの100%(樹脂をもちいていない)成形体(切削品)として義歯とスピーカーコーンが展示されていた(写真6)。

写真6 中越パルプブースの展示(100%セルロースナノファイバーによる義歯とスピーカーコーン)

また、未修飾でポリプロピレンとコンポジット化したマスターバッチとそれを用いた成形品が展示されていた(写真7)。このマスターバッチは出光ライオンコンポジットと三幸商会の共同開発による。プロセスとしては、まず分散材と複合化して乾燥されたパウダー(PDP)を用いてマスターバッチ(MB)化する(図2)。

図2 Nanoforest MBの製造プロセス

写真7 CNFと分散剤からなるPDP、マスターバッチ、成形品

その他に、表面を疎水化したNanoforest-Mを漆と複合化したサンプルも展示されていた。

三菱製紙は、再生炭素繊維のシート、セルロース入りの樹脂コンパウンドを展示していた。

セルロース繊維強化樹脂複合材料セルロミックスはミクロンオーダーのセルロース繊維を熱可塑性樹脂(具体的にはPP)と複合化した材料である。セルロースの添加量は10~30%の範囲で銘柄設定されている。サンプルを写真8に示す。

写真8 三菱製紙のセルロース繊維複合材料セルロミックスの成形品

再生炭素繊維シートは炭素繊維複合材料の端材から再生した炭素繊維を三菱製紙の抄紙技術でシート化したものである。均一性が高いシートは背後から光線を当てるとその均一性が理解できる(写真9)。プリプレグは熱可塑と熱硬化のタイプが展示されていた(写真10)。

写真9 再生炭素繊維シート(左:均一品、右:標準品)

写真10 再生炭素繊維を用いたプリプレグによる成形品 左:熱可塑、右:熱硬化

阿波製紙は炭素繊維あるいは黒鉛を含んだ熱拡散性及び電磁波シールド性を持ったシートを展示していた(写真11)。

写真11 阿波製紙の熱拡散シートと電磁波シールドシート

東レコーテックスは容易に成形可能なアクリル系樹脂をベースとしたCFRTPを展示していた。アクリルをベースにすることで、耐候性、接着性に優れ、低温で成形が可能である。プレスの際にヒート&クール技術を用いると表面品質に優れる製品が得られる。写真12にプレス成形によるサンプル、プレス成形+ヒート&クールのサンプルを示す。

写真12 アクリルCFRTPのプレス成形サンプル

4.加飾技術

ミマキエンジニアリングはUV硬化型インクジェットプリンターの展示と実演をしていたが、特長的なものは、凹凸を持ったテクスチャー印刷(2.5次元印刷)と伸縮性があり深絞りが可能なUV硬化型インクジェット印刷である。写真13は2.5次元印刷による凹凸を持った印刷サンプルである。写真14は、最大350%の延伸性を持ったUV硬化型インクジェットインクで印刷した後に真空成形による深絞りを行ったサンプルである。

写真13 ミマキエンジニアリングブースの2.5D印刷サンプル

写真14 伸びるUV硬化インクジェットインクで印刷し、真空成形したサンプル

東洋インキは高耐スクラッチ性UV硬化ハードコート剤、帯電防止スクリーンインキ、透過性高漆黒スクリーンインキ等を展示していた(写真15)。このインクは透明性のある黒であり、裏面から光を当てると光が透過する。不透明の従来型の黒をパターンで重ねると、部分的に光を透過する。バリエーションとして透明性が高い黒と赤や青の積層も可能である。

写真15 東洋インキの透過性高漆黒インキを使ったサンプル
上:裏面から光を当てた状態、下:光を当てていない状態

他に、高隊スクラッチ性UV硬化型ハードコート剤、帯電防止スクリーンインキ(開発品)等が展示されていた。写真16は帯電防止スクリーンインキの説明パネルの一部を抜粋したものである。

写真16 東洋インキブースの帯電防止スクリーンインキの説明パネル(一部)

5.不織布

東レは不織布事業部の単独ブースを出し、PPSやフッ素樹脂などの特殊な不織布、吸音性や電磁波吸収性を持つ不織布等を展示していた。

写真17 東レ不織布事業部ブースの吸音性及び電磁波吸収性シートの紹介パネル

JXTGエネルギーもマイクロファイバーを用いた不織布による高性能吸音材を展示していた。

6.機能性フィルム

日本ゼオンは色がついたミラー調フィルムを用いたディスプレイ(写真18)、ミラー調シートを用いた蝶や昆虫の造作物(写真19)を展示していた。

写真19 日本ゼオンブースに展示されていたミラー調ディスプレイ

写真19 ミラー調シートを用いた造作物

アイセロは金属と樹脂(PPやPA)の熱接着、金属と金属の接着に用いることができる熱接着フィルム(FIXELON)を展示していた(写真20)。射出成形(インサート成形)、真空貼合等に適用可能である。

写真20 アイセロブースのFIXELON説明パネル

同社は赤外線サーモグラフィー用透明粘着性フィルムも展示していた。サーモグラフィーで温度測定するために黒く塗る必要が無く、短時間であれば200℃程度まで使用可能である。