秋元英郎
秋元技術士事務所
オートモーティブワールドはリードエグジビション・ジャパンが主催する展示会であり、カーエレクトロニクス技術展,EV-HEV駆動システム技術展,コネクテッドカーEXPO,自動運転EXPO,自動車部品&加工EXPO,クルマの軽量化技術展から構成される展示会であり、2019年は1月16~18日にかけて東京ビッグサイトで開催された。入場者数は、3日間で4万人弱であった。
本レポートでは、クルマの軽量化技術展の出展内容を中心に報告する。
(株)ADEKAは(株)ジーエイチクラフトと共同開発した「ファイバーtoコンポジット(FtoC)成形プロセス」を展示していた。このプロセスは、接着性を付与したバラバラの繊維を延ばして揃え、赤外線加熱しながら積層する技術であり、オープンモールドで成形可能である(図1)。
同社はまた、燃焼時に発泡膨張層(イントメッセント)を形成するノンハロ難燃材「アデカスタブFP2000シリーズ」の展示を行い、燃焼試験時の動画を見せていた(図2)。
出光興産(株)はPC樹脂「タフロン」の開発品としてガラス強化ながら透明性に優れる開発品を展示していた。旭ファイバーグラス(株)との共同開発であり、ガラスを最適化するとともに、表面の平滑性を高めるためにヒート&クール成形を併用していた(図3)。
同社はまた、長繊維強化シンジオタクティック・ポリスチレン(SPS)「ザレック」の軽さをPRしていた(図4)。
東洋紡(株)はグループ企業の製品も含めてコンセプトカーを展示していた。リアシートには三次元スプリング構造体、ホイールや天井にはCFRTPが使われていた(図5、図6)。
同社はまた、高衝撃スタンパブルシート(図7)や「グラマイド」,「バイロペット」,「ペルプレン」の発泡成形サンプルが展示されていた(図8)。
ユニチカ(株)は、成形可能なPET不織布「マリックス」を展示していた。芯がPETで鞘がPEの構成になっており、剛性が高く空隙率が高い構造になっている(図9)。熱プレスにより成型が可能である(図10)。
同社のポリアリレート樹脂「Uポリマー」は透明で高耐熱であるためランプ用途に開発が進められているが、採用されたばかりのカワサキに2輪用外装部品が展示されていた(図11)。
発泡成形向けポリアミド樹脂「フォーミロン」を用いて成形されたエンジンカバーが展示されていた。コンセプトは強い・軽い・きれいであり表面外観も通常成形品並みであった。材料の特性に加え、ポリアミド用に最適化された化学発泡剤が功を奏している(図12)。
宇部興産(株)はセルロースナノファイバー(CNF)を複合化したポリアミド6の成形品(図13 エアインテークマニホールド アイシン精機製)、紹介パネル(図14)を展示していた。CNFは京都プロセスによる。
(株)カネカはPC系アロイ材の射出発泡成形サンプル(図15)とPP加工性改良剤としてPPに添加した場合のコアバック発泡サンプル(図16、図17)を展示していた。高分子量成分をPPに添加することで溶融張力を高めることを狙っていると考えられる。
ダイセルポリマー(株)はCF20%添加したPP「プラストロン PP-CF20」を用いたラジエーターコアサポートを展示していた(図18)。
堀正工業(株)は麻(ヘンプ)の繊維を充填した樹脂のペレットを用いた射出成形品(図19)、フィラメントを用いた3Dプリンティング造形品(図20)等を展示していた。ヘンプは麻薬作用が無く、繊維として用いるために品種改良された大麻であり、欧州では盛んに検討されている。日本では麻薬作用が無くても大麻の栽培が禁止されているので、繊維あるいはコンパウンドで輸入されている。
JXTGエネルギー(株)は、マイクロファイバーを用いた高機能性吸音材「ミライフMF」を展示していた。表皮タイプで510g/m2と軽い(図21)。また、スクリーン用透明フィルムも展示していた。貼るだけで窓ガラスがスクリーンになるという製品である(図22)。
東レ(株)は、極細繊維不織布「エクセーヌ」の工業用途・産業用途の用途例展示を行っていた(図23)。
三菱ガス化学(株)は、ポリアミド繊維と炭素繊維を編んだ組み紐を使った複合材料「コミングルヤーン」を展示していた。これは岐阜大学の仲井教授との共同研究で、組み紐を編んだ状態では柔らかいが、硬化後はしっかりした構造体を形成する。成形品の例として義足の部品らしいものが展示されていた(図24)。
フクビ化学工業(株)は、ナショナルコンポジットセンターの合同ブース内で、炭素繊維の熱可塑性チョップドシートを展示していた。プレス成形により深いリブにも充填できる点がメリットである(図25)。
積水化成品工業(株)は、(株)ホンダアクセスのS660 Neo Clasic KITのフロントフードを展示していた(図26)。
同社は、CFRP複合発泡成形体「ST-LAYER」(図27)も展示していた。CFRPで発泡体をサンドイッチすることで軽量化、強度、剛性を満たした構造体が得られる。代表的な用途は風力発電のブレードである。
その他に反撥性に優れるTPEビーズ発泡体「ELASTIL」(図28)、剛性・耐衝撃性に優れるポリスチレン/ポリオレフィン複合ビーズ発泡体「ピオセラン」(図29)、中空微粒子でコーティング剤に混ぜると反射防止効果がある「テクポリマー」(図30)の展示があった。
サンワトレーディング(株)は、ガラス長繊維強化複合シートとガラス長繊維強化樹脂による複合成形品(自動車部品)を展示していた。図31はガラス織布とPPの複合シートとガラス長繊維強化PPの複合成形品であり、BMW MQBのアンダーカバーである。図32、図33はガラス織布とPAの複合シートとガラス長繊維強化PAの複合成形品である。図32ではコーナー部分の内側を複合シートで補強している。
(株)イノアックコーポレーションは、グループ会社であるポリマーエンジニアリング(株)の装置で成形したRTM成形品を展示していた(図34)。この特徴は、炭素繊維のマットを炭素繊維のシートで挟み、その空間に樹脂を注入して硬化させた構造にある。
同社はまた、射出発泡成形品(RAV4のバックドアトリム、1.8㎜から2.5㎜まで拡張するコアバック)を展示していた(図35)。
同社はルーフダクトモジュール天井も展示していた。これは、天井材の裏側に発泡ポリエチレンシートをダクト形状に成形して貼り合せたものである(図36)。
(株)タカギセイコーは、炭素繊維複合材料シート(CFRTP)の応用とした、両面にシートを配置し、内部の樹脂をコアバック発泡により膨張させた複合成形品(図37)を展示していた。特徴は表面から裏面までシートの切れ目がないことと、スタンピング+コアバック発泡(2.5倍発泡)によって軽量化(比重1以下)である点である。サンプルはマンホールの蓋をイメージしたものであるが、比重が軽いためマンホールの蓋には使用できない技術紹介用サンプルであるとの注意書きが書かれていた。
ロックツール(株)は、国内の展示会では初めて電磁誘導加熱ヒート&クール成形用の電源ユニットを展示していた。
同社はヒート&クール成形の効果を実感しやすいサンプルとして、三次元形状へのヒート&クール成形の効果がわかりやすいポータブルスピーカーのカバー(図38 ヒート&クールは表面のみ)と微細転写成形+スパッタ処理によるホログラム(スパッタ無しでもホログラム効果は見られるが、スパッタによって強調される)のサンプル(図39)を展示していた。
山下電気(株)は、ヒート&クール成形のサンプルを多く展示していた(例として図40)が、他に二色成形技術を示すサンプルとして二色成形の後にめっきを施したサンプル(図41)を展示していた。
パナソニックプロダクションエンジニアリング(株)は、織柄シートのインサート成形+ヒート&クール成形(「超高速ヒート&クール成形」)による成形品(図42)を展示していた。「超高速ヒート&クール成形」は棒ヒーターによる加熱を行い、従来型の蒸気加熱よりも成形サイクルを半分にできるとPRしていた。
(株)GSIクレオスは、クラウスマッファイの成形技術を紹介していた。例えば図43に示す金型内塗装技術「ColourForm」のサンプルを展示していた。クラウスマッファイの金型内塗装仕様でメインシリンダーがMuCell仕様の成形機が今年岐阜多田精機(株)に設置されることも告知されていた。
オートモーティブワールドは自動車に関する複数の展示会の集合体であるが、クルマの軽量化技術展はプラスチックに関係する出展が多い展示会であり、面積はさほど広くはない中に新技術が多く展示されている。材料メーカーの展示も多く、必ず見ておくべき展示会のひとつである。
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