革新的カプセル型洗浄・パージ剤「サプリパージ®」
里吉淳一
SEP株式会社
1.はじめに
プラスチック成形加工では一台の機械で色替えや樹脂替え、また黒点などの異物を防ぐための炭化物除去などの作業を定期的に行う。これらの作業は品質に大きく影響を与えるので重要な工程と考えられる。成形加工機用洗浄剤、いわゆるパージ剤は、これらの作業を迅速かつ的確にサポートすることで普及してきた。
一般的にパージ剤は、ユーザ数の圧倒的な多さから射出成形機用の色替え・樹脂替えに主眼を置いて開発されてきた歴史がある。そのために物理的に機械を洗浄するタイプが主流である。そのためにパージ剤の多くは、射出成形機や押出成形機のスクリュー、シリンダの洗浄には効果的であるが、洗浄時には、金型、ホットランナー、ブローヘッド、ダイス、ギアーポンプなどは洗浄時に切り離す必要がある。
これらの機器は溶融樹脂の流路が狭かったり途中で曲がっていたりなどパージ剤が残留する可能性がある。そこで、これらの機器も洗浄できる洗浄剤として弊社が開発したカプセル型洗浄・パージ添加剤を紹介する。
2.本製品の概要
パージ作業に必要な洗浄成分の絶対量を増やす場合、マスターバッチでは機能剤の練りこみ量に制限がある。また、ベースとなる練りこみ樹脂は異物となり置換に時間が掛かり残留の可能性も高まる。
そこでパージ樹脂には生産材料、もしくは汎用樹脂を使い、カプセル充填された洗浄剤を添加したパージ樹脂を成形機に供給する新しいパージ方法を考案した。写真1はこのカプセル型洗浄・パージ添加剤である。
マスターバッチ洗浄剤の練りこみ量と比較すると数十倍の洗浄添加剤を一度に投入できしかもキャリアレジンは生産材料なので置換が非常に早く残留の心配もほとんどない。前述のホットランナー金型、ブローヘッド、ダイス、ギアーポンプなども同時に洗浄が可能である。カプセル型洗浄・パージ添加剤を使えば金型などを取り付けたままでの成形パージも可能となりパージ廃棄物のリサイクルにも貢献できる。カプセルの材質は、成形品の材質によりPE、PPそしてPETから選択できる。
1)内部洗浄剤の特長
充填されている機能性洗浄剤は無機物を一切含まない有機化合物である。分解温度が約430℃と高温なので、ほとんどの熱可塑性樹脂に対応している。しかも分子量5万以上の高分子なので浸透性が非常に高く金属表面に付着した炭化物やコーナー部に残留した異物の下に素早く浸透し、汚れを浮き上がらせキャリアレジンにより装置外に排出させることが出来る。
この洗浄剤には帯電防止効果、分散効果の機能もあるので、定期的に使用することで成形機内部をクリーンな状態に保ち炭化物生成の予防ができるので分解清掃の頻度を大幅に減らすことが可能である。
安全面では、Ph=7.8と金属、メッキを侵すことはなく、含有成分についても厚生省告示第370号の合成樹脂製容器包装の規格基準および電機電子機器に含有される化学物質の基準を定めた規格、JIS C 0950、に適合している。
図1は簡単な洗浄のメカニズムを表したものである。金属表面に付着した炭化物の除去には成形機内部にパージ樹脂を滞留させる漬け置き洗浄が効果的である。ヒータ電源を切り機械を冷却することで、炭化物を剥がし易くさせるので週末の装置停止前に充填すれば休日の漬け置き洗浄できるので効率的なパージ作業が出来る。
写真2は浸透した洗浄剤の効果を表したもので、スクリューから樹脂が簡単に剥がれる。写真3はダイレクトブロー成形機でのパリソンへの炭化物排出状況を撮影したものである。
2) カプセル型洗浄・パージ添加剤の商品群
現在、カプセルの材質により3種類のタイプがある。汎用タイプのサプリパージ®(カプセル材質がPEとPP)とPET 製カプセルの SEP105PETカプセルである。
内容量はどちらも80 g入りで、パージ樹脂で換算すると約160 kg分に相当する。写真4はそれぞれの梱包状態である。また、表1および表2は標準的なパージ樹脂へのカプセル型洗浄・パージ添加剤の添加量を示したものである。
表1 射出成形機での標準的な添加量
型締力 (トン) | キャリアレジン量 (kg) | カプセル添加量 (g) |
550 | 8 | 4 |
350 | 5 | 2.5 |
100~220 | 3 | 1.5 |
50~80 | 2 | 1 |
表2 押出し成形機での標準的な添加量
スクリュー径 (mm) | キャリアレジン量 (kg) | カプセル添加量 (g) |
200 | 100 | 50 |
120 | 30 | 15 |
90 | 15 | 7.5 |
40 | 4 | 2 |
(添加量の目安 1g = 約20パック)
サプリパージ®には、汎用用途でPE製カプセルタイプと新たにPPフィルム製造やPP成形用にPP製カプセルタイプがある。PETカプセルは、PET、PC、PMMAなどの透明樹脂やスーパーエンプラ用に開発されたものである。
3. カプセル型洗浄・パージ添加剤の考えられる使用例
一般的なパージ作業はもとより漬け置き洗浄による炭化物、黒点対策には効果を発揮する。射出成形機でのホットランナー金型はもとより押し出し機、ブロー成形機などあらゆるプラスチック成形機に使用されている。特に今までの洗浄剤では困難であったシステムでの使用が今後期待される。
最近は成形品の高性能・高機能化が求められバリヤー層を有する多層化の商品が数多くみられる。図2の多層フィルム用ダイス、図3の多層ブローヘッドによる燃料タンク、図4は多層射出成形などが主な多層成形の例になる。
ホットランナーと同様にこれらのシステムでは金型が複雑で樹脂の流路が狭くコーナー部もある為に滞留、炭化物が生じやすいことである。カプセル型洗浄・パージ添加剤なら液体の洗浄剤が狭い流路からコーナー部まで浸透するので効果的な洗浄ができる。カプセル型洗浄・パージ添加剤は今後複雑化する金型に対応できるものと期待できる。
一般的に樹脂替え、色替えでは物理的洗浄が有効であると言われている。そこで、マスターバッチ洗浄剤にブレンドし、物理的+化学的洗浄のハイブリッド洗浄剤として新たな使用法も期待できる。
4.今後の展開について
新コンセプトの洗浄剤としてハイブリッド型の展開やカプセル充填という特性を生かした新しい成形法(着色や添加剤の添加等)など洗浄剤以外の用途へも取り組んで行きたいと考える。