Categories: 製品技術紹介

地球環境に優しい成形機用パージ剤 「クリーンミライ」

小濵 健二郎
有限会社アイピーク

1. はじめに(パージ剤の現状と課題)

価値観が多様化するに伴いプラスチック製品は多品種の方向に進んでおり、樹脂替え・色替えの頻度はますます高くなる傾向にある。一方で着色剤や添加剤には金属付着性が高いものも多く、樹脂替え・色替え時にパージ剤が用いられることが多い。

パージ剤の多くは、熱可塑性樹脂に界面活性剤、発泡剤、ガラス繊維等が溶融ブレンドされたペレット形状のものが多い。このようなパージ剤を用いてパージした場合、パージ剤の成分が混ざったパージされた樹脂材料はマテリアルリサイクルが不可能であり、産業廃棄物として処理される。

2. 環境問題から考えるパージ剤に対する要求

プラスチック業界では廃棄物をできる限り、ゼロに近づけていく 『ゼロエミッション構想』が既に国連大学(当時学長顧問 グンダー・パウリ氏)から1994年に提唱されている。当社(有限会社アイピーク)は1995年から、ゼロエミッション構想を念頭にプラスチック成形機用洗浄剤(パージ剤)に関して開発目標としてきた。

2022年には新たに「プラスチックに係わる資源循環の促進等に関する法律」も施行され、ますますプラスチック業界は廃棄物削減に真剣に取り組まなければならなくなってきている。

3. クリーンミライの設計思想

3.1 微細コーティング法

ベース樹脂にマイクロメートル~ナノオーダーのいわゆる生産技術系ナノテクノロジー領域のナノ物質をペレットの表面にコーティングする方法である。ナノコーティングされるナノ物質の洗浄成分量は0.25~0.5重量%で充分であり、現状の市販品(溶融混練法)の約1/数10~1/100の洗浄成分量で最大の洗浄効果を発揮する。

3.2 クリーンミライの洗浄メカニズム

洗浄の際、微小化され界面制御したナノ物質を使用することにより、先ず表面にコーティングされたナノ物質が速やかに溶融し 洗浄作用の立上がりが早い。さらに表面コーティングされた洗浄成分は細い流路やデッドスペースなど複雑な個所の最深部まで浸透し、ナノ物質により全く新しい洗浄性が発現する。

3.3 クリーンミライの長所

洗浄成分の含有量は可能な限り少い方がよい。何故なら、それは成形品からみて最終的に異物に他ならないからである。パージ剤の洗浄成分が多いと後工程の材料に混入するリスクが高い。クリーンミライは優れた洗浄成分が最小限の成分量であり、そのため、洗浄剤自身の排出は早い。すなわち、排出性が非常によい。

成形機用洗浄剤にとって、最も重要な因子である洗浄性と排出性に優れ、クリーンミライによる洗浄効果は大きい。

4. クリーンミライのパージ特性

4.1 ダイレクトブロー成形機を用いたパージ試験

クリーンミライのパージ特性を評価するため、パージが最も困難といわれるダイレクトブロー成形について、ダイレクトブロー成形機を使用しクリーンミライと市販品(溶融混練法)の洗浄比較の実験を図1に示す。パージの手順は、着色したHDPEからナチュラルのHDPEへの切り替えであり、Aはパージ剤として「クリーンミライ」、Bは市販の溶融混錬型パージ剤、Cはパージ剤を用いずに切り替えた。

図1 ポリエチレンのパージ

成形条件

成形機:50mmΦ ダイレクトブロー成形機
温度設定:C1~C3,D1~D2 170℃ スクリュー回転速度:70min -1
押出量:約20kg/h

4.2 実験評価結果

A.ナノテク洗浄剤:クリーンミライ(洗浄成分0.15%)の先行樹脂から後続樹脂への切替えは15分で完了。
パリソンはスジ発生しない。樹脂本来の半透明になり、洗浄・切替えは早い。
B.混練法洗浄剤:(市販品)の先行樹脂から後続樹脂への切替えは、30分後でほぼ切替え完了したかに見えるがパリソンは白濁したスジあり(ウェルドラインがなかなか消えない) 再生リサイクルは不可。
C.洗浄剤使用ナシ:先行樹脂は初めからスジが発生し、スジが消失するまで約120分要した。

クリーンミライを用いた色替えは、(市販品)混練法洗浄剤と比較して、切替え時間は約1/2以下に時間短縮して完了した。さらにパリソンはスジ発生もない。パージの際に発生した樹脂ダンゴはリサクルが可能であった。

多種類の成形機のなかで、洗浄が困難視されるブロー成形機、なかでもダイレクトブロー成形機は、最も難しく本試験ではあえてテスト機として使用した。アキュームレーター(貯留部)、ダイヘッドなど滞留部が多くあり、その洗浄は、条件下によりクロスダイの樹脂が会合する個所にはウェルドラインが形成され易い。それをきれいに消失させるには、長時間を要する作業になる。

5. 洗浄終了品のリサイクル性

さらに重要なことは、成形機内洗浄を終了した段階の排出品(通称ダンゴ)の有効利用である。
すなわちリサイクル性である。クリーンミライは、ここでも成形する樹脂と同じベース樹脂にすることによって最小限の洗浄成分(約0.25重量%)により、純度の高い排出品が得られ、質の高いリサイクルが行われる。(排出品は有価商品として再利用される場合が多い)

例えば PP(ポリプロピレン樹脂) ベースのクリーンミライをPP成形の色替え洗浄に使用した場合、クリーンミライのPP純度は99.9%以上あり、PP成形樹脂とよく相溶し、その洗浄終了の排出品はストレートのPPとほとんど変わらず、マテリアルリサイクルが可能になる。

6. クリーンミライのバリエーション

クリーンミライはさらにベース樹脂を自由・自在に変えることができる。今後「微細コーティング法」に高耐熱性洗浄成分のナノ物質を使用し、これまで以上に広範囲の樹脂(汎用樹脂~エンジニアプラスチック、スーパーエンジニアプラスチック、生分解性ポリマー・・・等)に適用できる幅広い技術で、これまでの成形機用洗浄剤の知見を活かすことにより、さらに質の高いリサイクル性や洗浄性が拡大する。

7. おわりに

石油を原料としたプラスチックの価格とエネルギー高騰の状況下にあって、パージに必要な樹脂量の削減、パージ済み樹脂の再使用は経済的にも化石資源の節約にもつながる。しかもクリーンミライは溶融混合を行わないために、製造時に必要なエネルギーも溶融混合タイプに比べて圧倒的に少ない。

クリーンミライはパージ剤の常識を覆す製品であり、多くの成形現場で使用してもらうことで地球環境を守っていきたい。

plastics-japan

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