コアテックシステム研究開発部
シニアアーキテクチャーマネージャー 邱彦程
本レポートはCoreTech System社のサイトに掲載されたものを、同社の許可を得て転載したものです。
射出成形プロセスで金型温度を制御するには、通常、金型温度調整器を経由した冷却液を金型に通し、冷却液の温度を利用して金型温度を一定に保ちます。ですが、金型によって冷却回路設計が異なり、異なる設計の冷却回路ごとに金型温度調整器を購入すると多大なコストが生じることになるため、現在手元にある金型温度調整器で冷却回路に対応できるかを知るにはどうすればよいのでしょうか?この問題に答える前に、まずは冷却回路システムとは何かを理解する必要があります。
下図1に示すように、金型冷却液の流路上では、金型内の冷却回路に加え、金型冷却回路をホース(hose)やマニホールド(Manifold)で接続して金型温度調整器から冷却液を金型内部に分散させており、冷却液は金型を通過後、再度合流して金型温度調整器に戻されます。
金型温度調整器内部に流入した冷却液は熱交換器(heat exchanger)を通過し、ユーザーが設定した金型温度に熱交換器で加熱または冷却された後、最終的にポンプ(pump)で外部へと送り出されます。
流れは高圧から低圧へと移動することが知られていますが、流路全体では、冷却液はポンプ(pump)からの流出位置で最大流体圧力となり、流路を進むにつれて流体圧力は徐々に低下し、ポンプ(pump)に戻った時点で最小値となります。
金型温度調整器メーカーの仕様書には、一般的に金型温度調整器のポンプ性能曲線が記載されており、出力圧力が高いほど流量が減少し、逆に圧力が低いほど流量が増加することが示されています。パイプ理論から、冷却管の管径が一定の場合、流量が増加するほど冷却管の圧力差が大きくなることが知られています。図2に示すように、ポンプと冷却回路を組み合わせることで圧力バランスが実現され、冷却回路内の流量と圧力を得ることができます。
Moldex3Dでは冷却回路の注水口に接続する金型温度調整器を指定することができ(図3参照)、流量計がない場合は、金型温度調整器の仕様に基づいて対応する冷却回路のレイアウトを設計、検証することができます。シミュレーションから冷却回路と金型温度調整器の関係(図4参照)を知ることができ、注水口の流量や圧力を推測することなく、より合理的な冷却回路注水口条件を得ることができます。冷却回路解析では冷却管の流量を知ることができるほか、金型温度解析と組み合わせて目標の金型温度に達しているかを観察することで、この金型温度調整器が現在の金型冷却回路に対応可能かを評価することができます。
金型温度調整器メーカーにとって、各顧客の金型の冷却回路設計を理解することは不可能であり、顧客にとっても金型ごとに異なる金型温度調整器を購入することはコストに見合うものではありません。そのため、ほとんどの場合、金型のサイズ、パーツのサイズ、金型温度の要件に基づいて現在の金型温度調整器が金型に対応可能かを推測した上で、現場の金型温度の状態に応じて金型温度調整器のより正確な調整を行っています。ですが、一部の冷却回路設計は特殊であり、特にコンフォーマル冷却回路(conformal cooling)設計では標準的な円筒形の長い冷却管ではないことが多く、経験によって金型温度調整器を評価するのは容易なことではありません。このような場合、Moldex3Dを使用して金型温度調整器の仕様、冷却回路の形状を含む冷却回路システムの情報を入力することで、事前に金型温度調整器の性能を判断するより多くの参考情報を得ることができます。
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