アメリカ成形業界状況 ―雑誌から垣間見る―(連載開始にあたり)
佐藤功技術士事務所
佐藤功
はじめに
ここ数年、アメリカのプラスチック雑誌「Plastics Technology」を読んできた。その中で彼我の差を強く感じた。かつて、アメリカは日本のお師匠さんだった。当時、最新技術は「アメリカでは」の前置きがついて伝えられた。そこから多くを学んでいた。そして「追いつき追い越せ」を合言葉に技術を磨いてきた。その結果、多くの産業を欧米から奪いとり我が国製造業は成長した。
しかし、昨今の日本のものつくりは元気がない。たとえば射出成形技術は定評があり、今でも最先端を保っている。これを活かして高性能機が生産されている。しかし、最近の統計を見ると、その90%は海外に輸出され、海外モルダーが使用する。日本のモルダーの成形機は更新されることは少ない。成形現場の疲弊は技術維持、開発の危機だ。生産現場を離れた技術開発には限界がある。
アメリカ誌を読んでいると、かの地の元気なモルダーが多く登場する。統計数値では推し量れないことが生産現場で起きているような気がする。この姿は日本の業界にも参考になるはずだ。
そんな想いからPlastics Technology誌から感じるアメリカ業界の発想法、立ち位置、工夫、そして苦悩を定期的に伝えたい。
なお、紹介するPlastics Technology誌は電子媒体同時発信になっており、最新号もバックナンバーも無料でアクセス可能だ。(https://www.ptonline.com/)
参照文献
佐藤功、Look West,プラスチックスエージVol59,No.6,P53(2013)