秋元英郎
秋元技術士事務所
2017年1月18~20日にかけて、東京ビッグサイトにおいて第9回オートモーティブワールド(主催:リード・エグジビション ジャパン㈱)が開催された。この展示会は、第3回自動車部品&加工EXPO、第7回クルマの軽量化技術展、第8回EV・HEV駆動システム技術展、第5回コネクティッドカーEXPO、第9回国際カーエレクトロニクス技術展から構成され、3日間のトータル入場者数は約35,000人であった。同時にインターネプコンジャパン等も開催されて、非常に込み合っていた(写真1)。
写真1 込み合う初日の受付前
本レポートでは、第7回クルマの軽量化技術展、第3回自動車部品&加工EXPOからプラスチックに関係が深い展示内容について紹介する。
宇部マテリアルズのモスイハイジは塩基性硫酸マグネシウム無機繊維は軽量化と高剛性を両立させる無機フィラーであり、パネル(写真2)と剛性・重量を感じてもらうためのサンプルを展示していた。PPに対してタルク20%をタルク7%+モスハイジ7%に変えることで、剛性を維持して5%の軽量化効果が得られる。
写真2 宇部マテリアルズブースのパネルより
宇部エクシモはポリオレフィン製のシムテックス複合モノフィラメントメッシュを用いた大型成形品を展示(写真3)していた。また、宇部興産機械のコーナーではシムテックスメッシュのインサート成形品(プチ射出使用)が展示されていた(写真4)。
写真3 シムテックスの大型プレス成形品
写真4 プチ射出を用いたシムテックスのインサート成形品(宇部興産機械ブース)
サンワトレーディングは、長繊維強化複合シート(熱可塑性のプレプリグ)を用いたサンプルを展示していた。TEPEXの他にポリメタクリルイミドの微発泡品(エボニック製ロハセル)も展示していた。ロハセルはダイセル・エボニックブースにも展示されていた。
写真5 サンワトレーディングのブースに展示されていたTEPEXを用いた成形品
ダイセルエボニックは上記のロハセルを用いた大型発泡品を展示していた。ロハセル Triple Fはポリメタクリルイミドの発泡ビーズであり、金型に充填したのちに加熱して賦形する。写真6は展示パネル、写真7は成形品である。
写真6 ダイセル・エボニックブースのパネル
写真7 ロハセルを用いた成形品
同社はアクリル樹脂(PLEXIGLAS)、アクリルイミド樹脂(PLEXIMD)の展示を行っていた。アクリル樹脂をヒート&クール不要で高品質のピアノブラックを達成し、Miniのピラーに採用されている(写真8)。アクリルイミド樹脂は高衝撃性を実現してフロントグリルに採用された。
写真8 Miniに採用されているピアノブラックのピラー
その他にポリアミドのパウダーを用いた金属と樹脂の接合サンプル(写真9)も展示していた。樹脂の後収縮を考慮した製品設計が必要であるとのこと。
写真9 ポリアミドパウダーを用いた金属・樹脂の接合品
JXエネルギーは、炭素材料・高耐熱材料・ナノ加工分野と広い技術分野にわたり、多くの開発品を展示していた。ピッチ系炭素繊維の用途例として水素タンク(写真10)を展示していた。
写真10 JXエネルギーのブースに展示されていた水素タンク
同社は、オレフィン系熱可塑性エラストマー「ジェラティック」の成形品(写真11)を多く展示しており、へたりにくさ、べたつきにくさをアピールしていた。
写真11 オレフィン系エラストマーの成形品
同社はナノ技術を利用した機能性フィルムの開発品も展示していた。写真12左は微細突起構造有り無しによる反射防止の違い、写真12右には微細構造有り無しによる曇り防止(水滴にならない)効果を示した。
写真12 左:微細突起構造による反射防止フィルムの効果、右:微細構造による曇り防止効果の比較展示
日本ゼオンは、環状オレフィンポリマーの特殊品と、液晶構造を持つフィルム(開発品)を展示していた。後者はフィルム上にらせん構造を形成する液晶層を形成し、見る方向によって色相が変化する効果を見せていた(写真13)。
写真13 日本ゼオンの液晶フィルム
カネカは発泡成形用のPC系アロイを出展していた。写真14はその説明パネルである。流動性を高めたことで、初期肉厚を薄くしても充填可能(コアバック向き)外観品質も良くしている。展示サンプルとしては化学発泡による比較的大型の成形品およびその塗装サンプルが出されていた。
写真14 発泡用PC系アロイ
東洋紡はブースの正面のコーナーを発泡のPRコーナーにしていた(写真15、写真16)。特にポリエステル系エラストマーであるペルプレンの射出発泡品については反撥弾性を実感できるデモを行っていた。
写真15 東洋紡ブースの発泡技術に関するパネル
写真16 東洋紡ブースの発泡品サンプル
積水化成品工業はポリスチレン・ポリエチレン複合発泡ビーズであるピオセランの活用方法としてワイヤーインサート成形品を展示していた(写真17、写真18)。
写真17 ポリスチレン・ポリエチレン複合発泡ビーズ(ピオセラン)
写真18 ピオセランのワイヤーインサート成形品
宇部興産機械はダイプレスト技術とプチ射出を組合わせた技術を中心に展示していた。写真19は発泡成形に関するパネル、写真20はコアバック発泡とサンドイッチ成形の複合技術のサンプル展示である。写真20において、青色の部分が発泡樹脂であり、製品の表面には非発泡樹脂(黒)が出るため、意匠性と軽量化が両立可能である。
写真19 ダイプレスト発泡技術の歴史を示したパネル
写真20 サンドイッチ成形+コアバック発泡の複合技術
同社は後付け少量射出ユニットであるプチ射出の応用例として、ステッチ調に二色成形で加飾したサンプルを展示していた(写真21)。
写真21 二色成形によるステッチ調加飾
ミノグループは、フィルムインサート成形に用いるniebling超高圧成形機(圧空成形機 写真22)とフィルムインサート成形による自動車内装部品のサンプル(写真23)を展示していた。
写真22 超高圧成形機(圧空成形機)
写真23 自動車内装に用いられるフィルムインサート成形品
ロックツールは㈱浅野と共同でブースを出しており、電磁誘導金型加熱式ヒート&クール成形技術によるプレス成形品、射出成形品サンプルの展示を行っていた(写真24)。[電磁誘導金型加熱についてはこちら]
写真24 ロックツールの電磁誘導加熱技術を用いたプレス成形品、射出成形品
山下電気は細管ヒーター式ヒート&クール成形技術Y-HeaTの成形サンプルの展示を行っていた(写真25)。
写真25 Y-HeaTを用いた自動車内装部品
GSIクレオスは、カプロラクタムの金型内重合を利用したT-RTMのサンプル(K2016で成形実演)を展示していた(写真26、写真27)。写真27で白い部分はガラス繊維、黒い部分は炭素繊維であり、2種類の繊維を組合わせたプリフォームを金型にインサートされ、カプロラクタムを含浸・重合したものである。
写真26 T-RTMの説明パネル
写真27 T-RTMのサンプル
フルヤ工業は、シリコーンの射出成形、ウェルドレス成形(おそらく断熱金型)、二色成形、インサート成形、DSI(ダイスライドインジェクション成形)等のサンプルを展示していた(写真28~31)。
写真28 シリコーンの射出成形
写真29 ウェルドレス成形
写真30 インサート成形と二色成形
写真31 DSI
大洋工作所、塚田理研工業は自動車の内外装用にプラスチックのめっき部品を展示していた。大洋工作所では、スイッチ周りの部分めっき製品が目についた(写真32)。塚田理研工業のブースでは自動車内装におけるアクセント加飾部品が多く見られた(写真33)。
写真32 大洋工作所ブースに展示されていたプラスチックのめっき部品
写真33 塚田理研工業ブースに展示されていたプラスチックのめっき部品
医療機器メーカーであるアールエフは低価格のX線CT装置を展示していた。附属品を加えても300万円台で購入できる。また、届出だけで設置可能でX線の管理者は不要とのことである。解像度は低い(スライスピッチは0.1mm)が、ボイドの検出には有効に使える可能性がある。ブースでは実際にスキャンを実演していた(写真34)。
一見ごちゃまぜのような展示会であるが、じっくり見ると掘り出し物が見つかる展示会である。
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