IPF Japanの展示・実演はどう変わったか―2011年から2023年を振り返り、2026年に足を運ぶ理由
秋元技術士事務所
秋元英郎
IPF Japanは、プラスチック・ゴムの材料、成形機、金型、周辺機器、加工技術が集まる国内最大級の専門展示会である。本稿では、2011年、2014年、2017年、オンライン開催となった2020年、そして2023年の記録を振り返り、展示・実演の変化を読み解く。ただし、過去のレポートは会場全体を網羅したものではなく、発泡成形、ヒート&クール、加飾、複合成形、自動化、AI、リサイクルなど、その時々の筆者の興味や問題意識も反映している。そこから見えてくるのは、古い技術が新しい技術に置き換わった姿ではない。従来の成形技術に、センサー、ネットワーク、AI、環境対応材料などが加わり、複数の技術が一つの生産システムへ統合されていく過程である。IPF Japan 2026では、これらがどこまで実生産に近づいたかを確認したい。何を見ればよいか迷う人や、目的の展示だけを見て思わぬ技術を見落としそうな人に向けて、会場の歩き方と実演を見る視点も紹介する。
1.はじめに
IPF Japan 2026(国際プラスチックフェア)が、2026年12月1日から5日まで、幕張メッセの1~8ホールで開催される。IPF Japanは3年に一度開催される、国内最大級のプラスチック・ゴム専門展示会である。
私はこれまで、2011年、2014年、2017年、2023年のIPF Japanを取材し、展示会レポートを作成してきた。2020年は新型コロナウイルス感染症の影響により、会場を使用しないバーチャル展示会として開催された。
過去のレポートを並べて読むと、プラスチック成形加工技術がどのように変化してきたかが見えてくる。発泡成形、ヒート&クール成形、加飾、二色成形、自動化、IoT、AI、リサイクル材の活用など、展示の中心となる言葉は少しずつ変わってきた。
ただし、ここで注意しなければならないことがある。
過去のレポートは、会場に存在した展示を漏れなく記録したものではない。多数の展示の中から、私が技術的に面白いと感じたもの、成形加工の将来につながると考えたものを選んでいる。したがって、そこに現れているのは展示会の変化だけではない。私自身の興味や問題意識の変化も含まれている。
それでも、同じ人間が長期間にわたって同じ展示会を見てきた記録には意味がある。評価する視点がある程度共通しているため、技術の継続、発展、組み合わせの変化を追いやすいからである。
本稿では、過去のIPF Japanで私が注目した展示を振り返りながら、IPF Japan 2026を会場で見る意味について考える。
2.過去のIPF Japanで注目した技術
2-1.IPF Japan 2011―成形品の外観と軽量化に注目した時代
2011年のレポートでは、発泡成形、高転写成形、加飾技術を中心に取り上げた。
発泡成形では、超臨界流体を利用したMuCellや、金型を開いて発泡させるコアバック成形に注目した。当時の発泡成形は、軽量化やヒケ・反りの低減という効果に加えて、発泡成形品の外観をどのように改善するかが重要な課題であった。
射出発泡成形では、成形品表面にスワールマークが現れやすい。軽量化できても外観部品には使いにくい。この問題を解決する方法として、金型表面を急速に加熱・冷却するヒート&クール成形との組み合わせが提案されていた。
ヒート&クール成形は、単なる外観改善技術ではない。金型表面を樹脂のガラス転移温度や結晶化温度より高くすることで、転写性を高め、ウェルドラインを目立たなくし、微細な表面形状を成形品に写し取ることができる。
また、フィルムインサート、金型内加飾、二色成形なども取り上げた。塗装工程を省略しながら意匠性を高めることが、当時の大きなテーマの一つであった。
この時期に私が注目していたのは、樹脂が金型内でどのように流れ、固まり、表面を形成するかという成形現象そのものであった。展示会は、教科書で説明される成形原理が、実際の機械と金型によって製品へ変わる過程を見る場所であった。
2-2.IPF Japan 2014―単独技術から組み合わせ技術へ
2014年には、発泡、ヒート&クール、加飾に加え、長繊維強化材料、金型冷却、複合成形などへ関心が広がった。
長繊維強化樹脂では、材料を単に射出するのではなく、繊維長を保ちながら混練し、金型内へ充填する技術が重要になる。成形機、スクリュー、材料供給、金型、成形条件を個別に考えるだけでは、目的とする性能が得られない。
金型冷却についても、三次元的な冷却水路を設けるコンフォーマルクーリングが注目されていた。成形サイクルの短縮だけでなく、金型温度の均一化による品質安定化にも関係する。
発泡成形と表面転写、射出成形とプレス、異なる材料の組み合わせなど、複数の技術を組み合わせる展示も増えていた。
このころから、展示の見方が変わってきた。新しい成形機、新しい金型、新しい材料を個別に見るのではなく、それらを組み合わせてどのような問題を解決しようとしているかを見るようになった。
成形加工の課題は一つの技術だけでは解決できない。材料、成形機、金型、周辺機器を一つのシステムとして考える必要がある。この考え方が展示にも現れ始めていた。
2-3.IPF Japan 2017―自動化とIoTが前面に出てきた
2017年になると、自動化、IoT、スマートファクトリーという言葉が目立つようになった。
射出成形機をネットワークにつなぎ、稼働状態や成形データを収集する仕組みが各社から提案された。成形機単体の性能を競うだけでなく、工場全体をどのように管理するかが展示のテーマになった。
金型交換、材料交換、成形条件の呼び出しなど、品種切り替えを自動化する提案も見られた。少品種大量生産だけでなく、多品種生産を前提に、段取り時間を短縮し、人の作業を減らす方向へ進んでいた。
一方で、発泡成形、ヒート&クール、二色・多材成形、複合材料といった、それ以前からの技術が消えたわけではない。
CFRTPやUDテープを用いた複合材料、後付け射出ユニットを利用した多材成形、微細転写や加飾など、成形品の機能を高める技術も引き続き展示されていた。
つまり、2017年に起きた変化は、成形技術からデジタル技術への単純な交代ではない。成形技術を安定して使いこなし、生産設備として管理するためにデジタル技術が加わったと見るべきである。
2-4.IPF Japan 2020 Virtual―オンラインで何を伝えるかが問われた
2020年は、新型コロナウイルス感染症の影響により、オンラインのみで開催された。
そのため、2017年以前や2023年以降の会場展示と単純に比較することはできない。来場者が大型成形機の動きを見たり、成形品に触れたり、担当者に質問したりする展示会ではなかったからである。
一方で、オンライン開催では、各社が何を重点技術として発信したかが明確になった。
日本製鋼所は、J-WiSe、NET100、AIモールディングナビゲーターなどのデジタル技術を紹介していた。成形機のデータを24時間監視し、不良発生時にアラームを出す。成形品の画像と成形データを利用して不良を予測し、無人で安定生産する。経年劣化する部品にセンサーを取り付け、予防保全に役立てるといった内容である。
また、横型・竪型射出成形機、物理発泡技術SOFIT、サブ射出ユニットFLiPなども紹介されていた。
オンラインでは、成形実演の迫力を伝えることは難しい。その反面、企業が将来の重点分野として何を選び、どのような言葉で説明したかを把握しやすい。
IPF Japan 2020 Virtualは、成形機メーカーが機械を販売するだけでなく、生産の監視、品質管理、保全、無人運転まで含めた仕組みを提供しようとしていたことを示す展示会であった。
2-5.IPF Japan 2023―AI、環境対応、成形加工が一つにつながった
2023年は、2017年以来6年ぶりの会場開催となった。会場には実機が並び、成形機が動き、成形品が次々に取り出されていた。
デジタル化に関する展示は、2017年より具体的になっていた。単にデータを収集して見える化する段階から、データを利用して成形条件を設定・補正する段階へ進んでいた。
松井製作所のブースでは、MoldIntelのスマートフォン用アプリを用いた成形条件設定支援が実演されていた。製品形状、材料、成形機などの情報を入力すると、クラウド上のAIが初期条件を提示する。試し打ちした成形品の不良内容を入力すると、AIが条件修正を提案する仕組みであった。
ENGELのiQ Weight Controlは、成形中の圧力波形を解析し、そのショットの中で条件を調整する。芝浦機械は、カメラによる良否判定と成形機のモニタリングデータを突き合わせ、成形条件を自動補正する仕組みを紹介していた。
住友重機械工業は、成形機と周辺機器から一次データを収集し、製品ごとの二酸化炭素排出量をリアルタイムで算出していた。デジタル技術が、生産管理だけでなく脱炭素にも使われるようになったことを示していた。
発泡成形にも変化があった。
日本製鋼所は、SOFITを用いて紙粉を30%添加したPPを成形し、軽量化と内反りの低減を示していた。芝浦機械は、圧縮空気を用いた低圧物理発泡と精密コアバックを組み合わせていた。Woojin Plaimmは、スポーツシューズのミッドソールを高倍率で射出発泡成形していた。
発泡成形は、単なる軽量化技術から、環境材料の成形、表面意匠、スポーツ用品などの具体的な用途へ広がっていた。
サンドイッチ成形では、表面に外観や物性の良い材料を使い、内部にリサイクル材や高充填材料を使用する提案が見られた。UBEマシナリーは、表層材を射出した後に金型を開き、コア材を充填して圧縮するダイレクトサンドイッチ成形を紹介していた。
生分解性プラスチック、バイオマス材料、木粉複合材、使用済みプラスチックの混合物など、材料の環境対応も目立った。ただし、環境対応材料は、通常の材料より成形しやすいとは限らない。吸湿、熱分解、酸化、流動性、品質変動といった問題がある。
2023年の展示では、それらの問題を成形機、乾燥機、ガス置換、発泡、AI制御などによって補う提案が増えていた。
環境対応は材料を置き換えるだけでは実現しない。材料の変動を受け入れながら、安定して製品にする成形技術が必要である。この点が2023年の重要な変化であった。
3.過去の展示から見える変化
これまで取り上げた技術を表1に整理する。
表1 IPF Japanで注目した技術の変化
| 開催年 | 開催形態 | 主に注目した技術 | 展示から読み取った変化 |
|---|---|---|---|
| 2011年 | 会場開催 | 発泡成形、コアバック、ヒート&クール、高転写、加飾 | 軽量化と外観品質の両立が大きな課題であった |
| 2014年 | 会場開催 | 長繊維強化材料、複合成形、金型冷却、発泡、加飾 | 材料・成形機・金型・周辺機器を組み合わせる提案が増えた |
| 2017年 | 会場開催 | IoT、自動化、金型・材料交換、多材成形、CFRTP | 成形技術を工場全体で管理する考え方が前面に出た |
| 2020年 | オンライン開催 | 遠隔監視、AI、不良予防、予防保全、無人運転 | 成形機メーカーが生産管理や保全まで含めて提案するようになった |
| 2023年 | 会場開催 | AI条件設定・補正、CO₂算出、発泡、再生材、環境材料、加飾 | デジタル技術と成形加工技術が具体的な用途の中で結びついた |
| 2026年 | 会場開催予定 | 自律化、再生材対応、省エネルギー、複合プロセスなどに注目 | 個別技術がどこまで実生産へ近づいたかを確認する機会になる |
この表だけを見ると、展示テーマが年ごとに入れ替わってきたように見える。しかし、実際にはそうではない。
発泡成形、加飾、二色成形、複合材料といった技術は、形を変えながら繰り返し登場している。新しい技術が古い技術を置き換えたのではなく、既存技術に新しい材料、制御、センサー、データ処理が加わっている。
例えば、発泡成形は2011年にも2023年にも登場する。しかし、その意味は少しずつ変わっている。
2011年には、軽量化とスワールマーク対策が主な関心であった。2023年には、紙粉入りPP、スポーツシューズ、低圧発泡、再生材との組み合わせなど、用途や材料が具体的になった。
ヒート&クール成形も同様である。当初はウェルドラインの解消や高光沢化が中心であったが、その後、微細転写、撥水、無反射、ホログラム、触感などの表面機能へ広がった。
デジタル化についても、最初は稼働状況の収集と可視化が中心であった。その後、成形条件の提案、不良の予測、自動補正、遠隔操作、予防保全、CO₂排出量の算出へと用途が広がってきた。
4.展示会では技術の「現在位置」が見える
企業のWebサイトやプレスリリースを読めば、新製品の概要を知ることができる。動画を見れば、装置が動く様子も確認できる。
それでも、展示会へ行く意味は残っている。
技術資料には、原理や利点が整理されている。しかし、実際の成形品を見ると、資料だけでは分からないことがある。
表面にわずかなムラがないか。発泡品の重量と剛性のバランスはどうか。二色成形の界面はどのようになっているか。複合材料の繊維はどの方向に配置されているか。成形サイクルの中で、どの工程に時間がかかっているか。
成形品を手に取ることができれば、外観だけでなく、重量、剛性、触感まで確認できる。
また、実演を見ると、技術の完成度もある程度分かる。
安定して連続成形できているのか。装置の調整に多くの人が必要なのか。成形機と周辺機器が実際に連携しているのか。それとも、将来構想を示すパネル展示の段階なのか。
展示会では、完成した量産技術、実用化直前の技術、開発中の技術、構想段階の技術が同じ会場に並ぶ。それらを見分けることも展示会の面白さである。
5.一社だけを見ても全体は分からない
IPF Japanの特徴は、射出成形機メーカーだけでなく、押出機、ブロー成形機、金型、周辺機器、材料、計測器、制御機器、リサイクル設備などの企業が同じ会場に集まることである。
一社の説明を聞いただけでは、その技術の位置づけは分かりにくい。
複数の成形機メーカーがAIによる条件補正を展示していれば、それぞれが何を入力データとして使っているかを比較できる。圧力波形を使うのか、画像を使うのか、成形機内部のモニタリングデータを使うのかによって、できることが異なる。
発泡成形についても、超臨界流体、高圧窒素、低圧の圧縮空気など、供給するガスと圧力が異なる。コアバックを使うか、固定金型で成形するかによって、得られる発泡倍率や表面状態も異なる。
リサイクル材への対応も、単なる材料置換、サンドイッチ成形、インライン混練、成形条件の自動補正では考え方が違う。
複数のホールを歩き、異なる企業の説明を続けて聞くことにより、初めて技術の共通点と違いが見えてくる。
6.IPF Japan 2026で確認したいこと
6-1.AIは提案から自律制御へ進むか
2023年には、AIが初期条件を提案する技術、成形中の変動を補正する技術、画像と成形データを組み合わせて条件を修正する技術が見られた。
2026年には、これらがどこまで成形機や周辺機器と一体化しているかが注目点になる。
AIが条件を提案するだけなのか。人が承認した後に修正するのか。品質情報を受けて自動的に条件を変えるのか。異常が起きる前に変化を予測できるのか。
「AI搭載」という表示だけでは、その違いは分からない。実演を見て、どこまでを機械が行い、どこから人が判断するのかを確認する必要がある。
6-2.再生材の品質変動にどう対応するか
再生材の利用拡大には、異物、臭気、色、分子量、流動性、水分などの変動が伴う。
バージン材と同じ条件で成形できる再生材だけを選んでいては、利用できる量に限界がある。今後は、品質変動のある材料を成形技術側で受け入れる必要がある。
材料の混合、乾燥、脱気、濾過、インライン計測、成形条件補正などをどのように組み合わせるのか。再生材を製品の内部に使うサンドイッチ成形がどこまで実用化されているのか。成形品の履歴や再生材含有率をどのように記録するのか。
2026年には、再生材を「使った」という展示から、安定して「使いこなす」ための展示へ進んでいることを期待したい。
6-3.省エネルギー効果をどのように示すか
電動射出成形機の普及により、油圧機から電動機へ置き換えるだけで得られる省エネルギー効果は小さくなってきた。
今後は、成形サイクルの短縮、乾燥条件の最適化、金型温度制御、断熱、低圧成形、設備の待機電力削減など、工程全体でエネルギーを減らす必要がある。
2023年には、製品ごとのCO₂排出量をリアルタイムで算出する展示があった。2026年には、単に消費電力量を表示するだけでなく、条件変更によってどの程度エネルギーが減ったかまで示されるかに注目したい。
6-4.複数の技術が一つの成形セルに統合されるか
発泡、加飾、インサート、二色成形、画像検査、ロボット、トレーサビリティーは、それぞれ独立した技術として展示されてきた。
今後は、それらを組み合わせた成形セルとしての提案が増えると思われる。
成形機から成形品を取り出し、外観を検査し、不良品を排除し、必要に応じて条件を補正し、製品情報を記録する。この一連の動作が実際につながっているかを見る必要がある。
個々の装置が高性能でも、装置間で情報を受け渡せなければ自動化は完成しない。成形機メーカーと周辺機器メーカーの連携も重要な見どころになる。
6-5.海外メーカーがどのような提案を持ち込むか
IPF Japanには国内メーカーだけでなく、海外の成形機、周辺機器、金型、制御機器メーカーも出展する。
海外メーカーの展示を見ると、日本とは異なる課題設定に気づくことがある。装置の大型化、自動化の考え方、リサイクル材への対応、標準化された通信規格など、日本国内の展示だけでは見えにくい潮流が現れる。
展示機の完成度だけでなく、日本市場でどのような販売・保守体制を構築しているかも確認したい。
7.IPF Japan 2026を見るための視点
会場には多数の企業が出展する。すべてのブースを同じ密度で見ることは難しい。
事前に関心分野を決めておく必要はあるが、目的の企業だけを訪問するのも惜しい。予定していなかった小規模なブースに、独自性の高い技術が展示されていることがあるからである。
私が展示を見る際には、次の点を確認している。
表2 展示・実演を見る際の確認項目
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 技術の目的 | 何を改善する技術なのか。品質、コスト、環境負荷、生産性のどれを狙っているのか |
| 実演の範囲 | 実際に連続運転しているのか。一部だけを模擬しているのか |
| 材料 | バージン材か、再生材か、複合材料か。材料特性の変動を考慮しているか |
| 成形品 | 外観、重量、剛性、触感、反り、ウェルド、発泡状態はどうか |
| 成形条件 | 温度、圧力、速度、サイクルなどに特殊な条件が必要か |
| 周辺設備 | 乾燥、温調、ガス供給、ロボット、検査装置まで含めて成立しているか |
| データ活用 | 何のデータを取得し、どのような判断や制御に使っているか |
| 実用化段階 | 量産実績があるのか、評価中なのか、参考出展なのか |
| 適用範囲 | 特定の材料や製品だけに有効なのか。他の用途にも展開できるのか |
| 導入上の課題 | 装置価格、設置面積、保守、金型変更、技能者教育などに課題がないか |
説明員に「何ができますか」と尋ねるだけでは、利点の説明で終わってしまう。
従来技術と比べて何が変わったのか、どのような条件では効果が出ないのか、量産実績があるのかを聞くと、技術の現在位置が見えやすい。
8.会場を回る前に最新情報を確認する
事前に目的を決めておくことは重要である。しかし、目的を明確にした人ほど、予定したブースを効率よく回ることに集中し、そのほかの展示を見落とす可能性がある。
展示会には、事前のプレスリリースや出展案内だけでは分からない展示もある。会場で初めて公開される技術、目立たない場所に置かれた成形品、説明員との会話によって価値が分かる展示も少なくない。目的とは違うホールや小規模なブースで、思いがけない技術に出会うこともある。
一方、初めてIPF Japanを訪れる人の中には、出展者が多すぎて、何を見ればよいのか分からない人もいるだろう。
プラスチックス・ジャパン株式会社は、IPF Japan 2026の会期中、第3ホールのブースから会場で取材した新着情報を発信する。各ホールで見つけた技術、注目した成形実演、興味深い成形品などを随時紹介する予定である。
会場を回る前にブースへ立ち寄れば、その時点で分かっている見どころを確認できる。予定したブースを見終わった後に立ち寄れば、見落としていた展示や、別のホールへ足を延ばすきっかけを得られるかもしれない。
事前に立てた目的を大切にしながら、目的の外側にも目を向ける。そのための情報拠点として、プラスチックス・ジャパン株式会社のブースを活用していただきたい。
IPF Japan 2026への来場登録
IPF Japan 2026への入場には、事前の来場登録が必要です。参加を予定している方は、公式サイトから登録してください。
9.それでも会場へ行く理由
展示会へ行くには時間がかかる。幕張メッセの1~8ホールを歩けば体力も使う。Webサイト、オンラインセミナー、動画で情報を得られる時代に、わざわざ会場へ行く必要があるのかという疑問もあるだろう。
私は、プラスチックの成形加工に関わる人には、IPF Japan 2026へ足を運ぶ理由があると考えている。
第一に、成形加工は実物を見なければ判断しにくい技術だからである。
成形品の質感、装置の大きさ、動作音、成形サイクル、ロボットの動きは、文章や静止画だけでは伝わりにくい。特に発泡、加飾、複合成形、微細転写では、実物を見る価値が大きい。
第二に、同じ課題に対する複数の解決方法を比較できるからである。
AI、リサイクル、省エネルギー、自動化という言葉は、多くの企業が使用する。しかし、その中身は同じではない。複数の展示を続けて見ることで、各社の考え方の違いが分かる。
第三に、完成した技術だけでなく、これから伸びる技術を見つけられるからである。
大きなブースや派手な実演だけが重要とは限らない。小さな部品、センサー、金型機構、材料処理技術が、数年後に成形システムの重要な要素になることがある。
第四に、説明員との会話から得られる情報がある。
展示パネルには技術の利点が書かれている。説明員との会話では、開発の背景、苦労した点、適用できない条件、次に目指していることが聞ける場合がある。この部分は、公開資料には書かれにくい。
10.おわりに
2011年から2023年までのIPF Japanを振り返ると、成形加工技術が単純に入れ替わってきたのではないことが分かる。
発泡、ヒート&クール、加飾、二色成形、複合材料といった技術は継続している。そこにセンサー、ネットワーク、AI、環境対応材料、CO₂排出量管理が加わり、技術同士の結びつきが強くなってきた。
2026年に注目すべきなのは、新しい言葉が登場するかどうかだけではない。
これまで提案されてきた技術が、どこまで量産に近づいたか。個別に展示されていた装置が、どこまで一つの生産システムとしてつながったか。品質変動のある再生材を、成形技術によってどこまで使いこなせるようになったか。AIが表示や提案にとどまらず、実際の制御にどこまで入ってきたか。
これらは、カタログを並べて読むだけでは判断しにくい。
IPF Japanは、プラスチック成形加工技術の完成品を眺めるだけの場所ではない。現在の到達点と、まだ解決されていない課題を同時に見る場所である。
過去の展示を知ったうえで2026年の会場を歩けば、単なる新製品紹介とは違った見え方になるはずである。
IPF Japan 2026には、参加すべき理由がある。

