秋元英郎
秋元技術士事務所
三次元表面加飾技術展2018は2月14日(水)~16日(金)にかけて、コンバーティングテクノロジー総合展の一部として東京ビッグサイトにて開催された。同時開催の新機能材料展(コンバーティングテクノロジー総合展の一部)、表面技術要素展でも加飾技術に関係が深い技術の展示が多く見られた。
本レポートでは同時開催の展示会も含めて加飾技術に関係する展示内容について報告する。展示内容を技術分野で分類すると、フィルム加飾(フィルムインサート成形、フィルムインサート用インク、転写)、塗装、めっき、着色に関する技術が出展されていた。
出光ユニテックのブースでは、フィルムインサート成形用ポリプロピレンフィルム「ピュアサーモ」を用いて高輝度・テクスチャーを表現した試作品を展示していた(写真1)。高輝度は金属調フィラーで、テクスチャーは金型転写で達成している。
金属調の表現には尾池イメージングの金属調フィラー(樹脂層でサンドイッチした金属フレーク)が用いられていた。
ピュアサーモの真空成形性を向上させるために、日本ポリプロのWAYMAXが添加されている。写真2に示すようにエッジ部分のブリッジが解消されている。
デンカは、ロール転写による微細なシボ形状を施したシートを加飾用として展示していた。プラスチック素材でありながら、ソフトタッチに仕上がっている(写真3)。
ウェーブロック・アドバンスト・テクノロジーは金属調加飾フィルムを展示していた。めっきではできない用途(例えばハーフミラー)がターゲットである。
ローヤル工業は、インモールド転写箔、インクジェット水圧転写箔を展示していた。
帝国インキ製造は、滑り止めインクや金属レスで金属調を表現できるインク(写真4)を展示していた。金属フレークではなく、パール調フレークが用いられている。
大日精化は、近赤外線を透過する有機黒色顔料を展示していた。熱線を反射する特長があり、太陽光による温度上昇が小さい。
布施真空は、三次元真空貼り合せ技術であるTOM工法によるフィルム貼り合せの際に金網状のものを挟むことで表面にディンプル形状を生じさせたサンプルを展示していた(写真6)。自動車の空力特性向上を狙ったものと考えられる。
浅野研究所は、減圧被覆の位置精度向上をPRした実演を行っていた。実際には、印刷したシートを、真空成形されたポリカーボネートのシートに貼り合せる工程(圧空成形+真空貼り合せ)を見せていた。写真7は実演内容を紹介するパネルである。
カタニ産業は、あらゆる形状に対応できるフィルムインサート成形技術「ライトモールド」を紹介していた。
真空成形で予備賦形した厚手のシートを金型にインサートして樹脂を射出する工程において、射出で積層される部分は周辺のみになっており、金型の雄、雌ともに空洞でインサートされたフィルムとは周辺部以外では接触しない。そのため、周囲の形状さえ同じであれば、真空成形されたシートの形状が変わっても対応できる。写真8では上下ともに同じ金型で成形されており、射出された樹脂部分の形状は同じである。
ナビタスは、空気転写NATSのサンプル等を展示していた。写真9はNATSのサンプルである。
NISSHA(旧日本写真印刷)は、MuCell(微細射出発泡成形)と金型内転写のが組合せサンプル(写真10)を展示していた。射出圧力が低いので加飾フィルムに施したシボ形状がそのままきれいに残るのが特長である。
奥野製薬工業は、黒系のめっき液(青黒色3価クロム、黒色スズニッケル合金、黒色ニッケル)を展示していた(写真11)。高級感の表現として黒が求められることが多くなっていることが背景にある。
柿原工業は、黒いめっき(スーパーダーク)、プラチナサテン、プラチナサテンチタニウムなどの高級感に訴求しためっき品を多数展示していた。
シミズは、電着塗装サンプルの他に、めっきの上に電着塗装を施して耐指紋性を付与したサンプル(写真13)を展示していた。
技研プロセス(有)と(株)技研のブースには「金属に見える塗装」のサンプルが展示されていた。
エムズシステムズは造花を塗装ロボットで塗り分けたサンプルを展示していた(写真15)。もともとは全て白であった。
タクボエンジニアリングは塗装ロボットをドライ運転していた。
ロンビックは、加飾技術研究会のブース内で染色された透明ポリオレフィン成形品を展示していた(写真16)。
本展示会の発足経緯から、フィルム加飾の比率は高いが、同時開催の展示会も含めると加飾技術を広くウォッチできる展示会である。
金属調は根強い人気があるが、黒の表現にもバリエーションが広がっている。
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