岡田きよみ
あなりす
こんにちは!「あなりす」の岡田です。
前回まで、異物分析の概要について解説しました。今回は、異物分析の例をいくつか紹介します。
図1をご覧ください。
実験用手袋の一部に凸部があるとお客様からクレームを受けた事例です。
・図2の差スペクトルの結果を検索すると、炭酸カルシウムがヒットした。
・現場からの情報で、ラインでは、クレームがあった手袋を作る前に、炭酸カルシウムを含む同樹脂製品が製造されていることが判明した。
⇒分析結果から、現場での対策として、同一の材料を使用する際であっても配合比率が異なる場合は、ライン清掃を徹底することにした。
–ポイント-
・現場の情報を確認することが、異物発生の防止に向けた生産管理手法の見直しにつながる。
・異物分析では、必ず正常部との比較分析を行う。
・正常部と異常部は可能であれば何点か測定して確認する。
ポリエチレン材料中の果汁に白いモヤが浮遊しており、その原因究明を依頼された事例です。分析手順と分析結果は、図3に記載してありますので本文では割愛します。加えて、図4に分析結果を記載しております。
–ポイント-
・IRスペクトルは、食品やタンパクにおいて似たものがあり由来を特定しにくいため、検証実験をし、材料確認を行うことでより確実な結果を得ることができる。
・時間をかけて確実な異物情報を得ることは、今後の異物対策のために大変有効である。
店頭に陳列されていたエチレン-プロピレン容器の一部が黄色に変色したことから、その原因解明を依頼された事例です。分析手順は、図5に記載してあります。
図5に示す文献調査からは、① BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)は酸化すれば黄色に変色すること、② フェノール系酸化防止剤はアナターゼ型TiO2 によってピンクに変色すること、③フェノール系酸化防止剤は排気ガス中のNOxガスによって黄色に変色することがわかりました。加えて、陳列状況の確認から、容器はすべてセロハン紙で包まれていており、排気ガスに直接さらされることはなかったことがわかりました。
・使用されている酸化防止剤(BHT:ジブチルヒドロキシトルエン)と添加されているアナターゼ型TiO2 が店頭で太陽光にあたり、太陽光が引き金となって急速な酸化反応が起こって変色したものと推測された。
⇒分析結果を踏まえて、アナターゼ型TiO2 をルチル型TiO2 に変えて暴露テストを行ったところ変色が生じない事を確認した。
–ポイント-
・変色部と非変色部の比較からはじめる。
・文献やインターネットによる知見を活用する。
・確認実験により分析からの推論を立証し、改良製品につなげる。
異物分析は、材料の同定だけで終わる事もありますが、上記例で示したように詳細な分析を行うことで問題の解決策を提示することができます。
今よりもさらに一歩踏み込んで分析してみれば、分析に対するモチベーションや物事全般に対する観察力が向上し、自分の世界がますます広がるのではないでしょうか。
最後に、異物分析で大切な事を図6にまとめました。今までのシリーズを思い出して自分にあった分析手順と方法を確立していってくださいね。
今回で異物分析シリーズは終わりです。
異物の観察、サンプリング、分析装置、前処理、解析 など、分析をやればやるほど疑問がわいてくると思います。分析の“型”は決まっておりませんので、ぜひ自分のやり方を確立し、あきらめずに問題解決に挑戦してください。
異物分析シリーズが少しでも皆様の分析のお役に立つことを願っております。
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