秋元英郎
秋元技術士事務所
このレポートではプラスチック(樹脂)材料、特殊フィラー(セルロースナノファイバー等)、成形技術、加工品、成形品、二次加工、加飾技術等に関する情報を発信している。
N+(エヌプラス)2018は9月26~28日にかけて、東京ビッグサイトで開催された。この展示会の特徴は、他のプラスチック展示会に比べると規模はちいさいものの、特徴ある尖った製品や技術と出会うことができるところにある。
本レポートでは、筆者が面白いと感じた展示を順不同で紹介していく。
同社は化学分野の研究受託を業としている。同社がユニークなのは相生市内の古民家をリノベーションして実験施設にしているところにある。住宅密集地や工業地帯とは違った環境で実験ができる。
同社が受託するのは研究のみならず、文献調査や資料作成なども含まれるとのことである(写真1)。
同社はプラスチック射出成形を本業としているが、3Dプリンターによる造形受託、3Dデジタルデータサービスと業務を拡張し、最近はバーチャルリアリティの技術を使った機械メーカーへの営業支援ツールの提供に注力している(動画参照)。
同社は炭素繊維強化熱可塑性樹脂のペレットを販売している。マトリックス樹脂の種類(PA66,PPA,PEI,PEEK)に合わせてCFの表面処理を変えているとのこと。製造元はPiper Plastics Inc.であるが、Piperは成形品の販売を行っており、ペレットを入手できるのはウェストワンからだけである。写真2は成形品のサンプル、写真3は展示パネルである。
同社の展示のメインは華飾(加飾)であるが、ここでは発泡成形に関する展示を紹介する。膨張性マイクロカプセルを用いた射出発泡成形で、トレー形状で1.6㎜から2.5㎜にキャビティを拡張(コアバック)して成形を行っている。写真4は成形サンプル、写真5は説明パネルである。
同社はプラスチックの押出製品のメーカーであるが、近年3Dプリンター用フィラメントのニーズへの対応に注力している。今回はPEEKのフィラメントを展示していた。歯科のインプラントがターゲットとのこと。
同社はウレタン発泡体PORONと難燃シリコーン発泡体NanNexを展示していた。
PORONの展示では高反撥品と低反撥品を展示し、反撥性の比較試験を行っていた。写真8で赤い発泡体は低反撥、黒い発泡体が高反撥で、同じ鋼球を同じ条件で落下させたものである。
NanNexは難燃で燃焼時に無毒であることと、発泡体としてヘタリにくい点が特長である。バッテリーのセル間のクッション等に使用されている。
同社はセルロースナノファイバー(CNF 製品名:Nanoforest)の利用に注力している。今回の展示では、漆にCNFを添加して可撓性を持たせ、曲がる漆製品を開発した(写真10)。この開発は鹿児島県工業技術センターと共同で行ったものである。
また、PPの剛性アップを目的としたCNF10%添加品の成形サンプルも展示されていた(写真11)。
同社は不織布メーカーであり、プレス成形品(深絞り、シワレス)を展示していた。主な用途は自動車の内装部品、パッケージ用途である。
ミマキエンジニアリングとソフト99は隣接したブースでお互いの技術を組み合わせた展示を行っていた。
ソフト99のフレイムボンド技術(特殊なガスの炎を用いて、被着体上に炭化ケイ素の層を形成する技術)を用いると、PP成形品にインクジェットでUVインクが密着する。
同社は射出→型開→射出→型開を繰り返して積層し、超厚肉の成形品を得る技術とそのサンプルを展示していた。1度の型開ピッチは3~6㎜である。そうやってできたブロックは切削等に用いる。
同社はブロー成形のメーカーであり、環境に優しい材料の利用に取り組んでいる。例として、ポリ乳酸を用いたボトルや古米・古古米の粉を添加したPPを用いたボトルが展示されていた。また、バリア性を持つ多層ボトル(5種5層、4種7層)も展示していた。
同社はプラスチックめっきの専業メーカーである。今回の展示では、二色成形品へのめっき・部分めっき(部分的にマスクしてめっきを行った後にマスクを除去)、3Dプリンター造形品へのめっき、電磁波シールド部品への応用などがサンプル展示されていた。
今回はスライドリングポリマーであるセルムの球状微粒子セルムマイクロボールが展示されていた。用途はTPU,PLA,ブチルゴム,天然ゴムの改質とのこと。
2016年、2017年と比較すると、大手の出展が減っているように感じるが、尖った製品や技術の出展が多くみられるという特徴は維持されている。
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