秋元英郎
秋元技術士事務所
人とくるまのテクノロジー展は、公益社団法人自動車技術協会が主催して毎年横浜と名古屋で開催されている。
本レポートでは、2019年5月22~24日にパシフィコ横浜で開催された「2019横浜」について報告する。主催者の発表では3日間で約95,000人が来場した。
なお、プラスチック関連を中心に取材したため、報告内容もプラスチックに関係あるものになっている。
同社はフランスに本社を置く部品メーカーであり、クラリオンを買収した会社としても知られている。
ブースで一番目を引く場所に展示されていたのはスタンピング成形による樹脂製のバッテリーケース(写真1)である。
自動車内装部品のプラスチック加飾技術として、「本物素材」の貼り合せサンプル(写真2)が展示されていた。素材としては、アルミのシートや本木のシートが使われ、インサート成形や後工程での貼り合せが行われている。実際の製品としてVolvo CX60のインパネが展示されていた(写真3)。
フィルムインサート技術の応用で、複数のフィルムをインサートし、あたかも複数の部品を組み合わせたように見える成形技術に関する展示があった。
注)同社の知財方針により、本技術の写真公開を見合わせることになったことを受け、本サイトの写真を削除しました。
二色成形を活用した加飾部品が展示されていた(写真5)。表層のクリア層の裏側に凹凸(テクスチャー)を施し、その裏から着色樹脂を射出積層したサンプルであり、クリア層にはメタリックのフレークも添加されている。
発泡成形を用いたエクストレイルのリアドアトリム(写真6)が展示されていた。化学発泡とガスカウンタープレッシャー法、コアバックを併用した技術が用いられている。
KraussMaffeiの金型内塗装技術「Colour Form」とフィルムインサートを組合せ、更にクリア塗装面にヘアラインを施したサンプルが展示されていた(写真7)。塗膜表面のヘアラインは金型に加工されており、金型内に注入される際に転写する。塗装面にテクスチャー加工が可能な点は金型内塗装の大きな利点である。
バックライト効果がある加飾フィルム、グラデーション+テクスチャーを持つフィルムを展示していた。
環境省はセルロースナノファイバーの自動車用途の開発をPRするためにブースを出していた(写真)。
PA6にCNFを10%添加して成形したトランクリッドロアを展示していた(写真10)。
CNFを使ったランダムシート(CNFペーパー)を用いたRTM成形したエンジンフードが展示されていた。樹脂はエポキシ樹脂が使用されていた。
CNFを15%添加したPA6で成形したインテークマニホールドを展示していた。
CNFを10%添加したPPをブロー成形したデッキボードを展示していた。
繊維強化プラスチックを用いた樹脂系軽量部品の例として、PCM(プリプレグのコンプレッションモールディング)、炭素繊維のSMC(シートモールディングコンパウンド)のサンプル展示があった。写真15に展示パネル、写真16にPCMのサンプル、写真17にSMCのサンプルを示す。
面発光性を持つアクリル樹脂のサンプルが展示されていた(写真18)。光を使った加飾への応用が期待される。
日本ポリプロは長鎖分岐PPのコアバック発泡成形品および断面と表面の写真(写真19)、加飾フィルム用途(写真20)を展示していた。発泡に関しては、ガスカウンタープレッシャーを用いなくても表面にスワールマークが見えない。また、コアバック時の樹脂温度が最も高い板厚中心部の気泡径も粗大化や合一が起こっていない。
ブースの中央にはコンセプトカー(写真21)が展示されており、五感で感じるをコンセプトにしていた。
繊維強化材料として、新規に開発したCNF強化PA6(写真22)とGF連続繊維強化PA66(写真23)のサンプルが展示されていた。CNFは耐熱性を向上させたことで従来のCNFに比べて着色しにくくなっている。
変性PPEのビーズ発泡品(発泡倍率3.5~10倍)が展示されていた。難燃性、高温の剛性、断熱性を生かして電気自動車のバッテリー周辺部材が想定されている。写真24はその成形品である。
ブース中央にはコンセプトカーが展示されていた(写真25)。
その他に、SMC材による構造フレーム(写真26)、外板用クラスAのSMC材(対アルミで5%軽量化 写真27)、オールコンポジット製ドアモジュール(写真28、29)が展示されていた。
環境対応のコンセプトの中で、天然繊維(木材の繊維)とPPのコンパウンドとリサイクルPPにガラス繊維を添加したコンパウンドを展示していた(写真30)。
PC系アロイ材用の化学発泡剤のマスターバッチが展示され、それを用いた成形品も展示されていた(写真31)。均一分散性が良い点が特長である。
また、PPのコアバック発泡性を改良する発泡助剤(架橋系ポリマー)も展示されていた(写真32)。
厚み0.5㎜のミラストマーを用いたサンプルを展示していた(写真33)。この厚みになると光透過性を持つようになるため、ディスプレイや光による加飾が可能になる。
プラスチックに関係する展示のみの報告になったが、プラスチック関連企業各社から具体的な部品レベルの試作品や実際の部品が多く展示されていた。
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