秋元英郎
秋元技術士事務所
Kショーは3年に一度ドイツのデュッセルドルフで開催される世界最大規模のゴム・プラスチック見本市である。K2019は10月16~23日に開催され、約3,300の出展者、約23万人の来訪者で賑わった。
本報では押出、ブロー、材料に関する内容を報告する。
前述のKrauss Maffeiはインモールドラベル成形品を粉砕して自動車内装材用にリサイクルしていたが、その際に3色の液状着色剤を押出機に注入していた。それにより色の切り替えが非常に短時間で行うことが可能になっている(写真1~3)。
BUSSは新型の「コニーダー」を展示していた(写真4)。この押出機はバレルに多数のピンが装着され、ピンとフライトの位置関係を維持するためにスクリューが前進・後退しながら回転する。せん断がかかりすぎないため、発熱による着色を抑えることが可能とのことで、セルロース等の混錬には有効とのことである。押出成形向けに、スクリューの前後運動による脈動を抑えるための押出ユニットをメインの押出ユニットが直角に設置されていた。
ZoteFoamsはポリエチレンとポリエチレンを超臨界流体による微細押出発泡「MuCell」で発泡させた層を交互に積層したバリア性のシートを発表した。このシートは発泡層を酸素や水分が通過する際に気泡に邪魔されて経路が長くなることで酸素や水分の透過を阻害するメカニズムである。ポリエチレンだけでできているため紙の容器に比べてリサイクル性に優れ、環境にやさしい。写真は展示されていた説明パネルと牛乳容器である。
Kautexは、バイオマスを原料にしたポリエチレンを用いたブロー成形を実演しており、成形品は再度EREMAによって粉砕リサイクルをしながらまわしていた(写真8)。同社はその他に各種ブロー成形品を展示していた。特にガソリンタンク、ダクト類(写真9)やタンク(写真10)が目立っていた。
Covestroは10年後の自動車をイメージしたモデルを展示していた。自動運転によって移動時には対面で座る。また、カーシェアが普及すると自動車の耐用年数は5年程度になると考えられるために、ガラス代替としてのポリカーボネートの使用が広がるとの見解をしめしていた。なお、写真11に示すモデルは透明部分のみならず、多くの部品にポリカーボネートが使用されていた(ボディ、表示パネル等)。ディスプレイ類を多用し、車内、車外とのコミュニケーションが取れる(写真12)。その他にもこのコンセプトカーの内装には様々な素材感を演出する工夫がなされ、そこで使用されている素材のサンプルも展示されていた。
BASFのブースでは、豪華に装飾されたHYMERのキャンピングカーが展示されていた(写真13、14)。BASFと共同で開発した豪華モデルのおかげで話題になり、サイトのアクセスが格段に増えたとのことである。キャンピングカー展示の周辺の壁面には、キャンピングカーの内外装に使用した素材も展示されていた(写真15)。
LANXESSのブースでは長繊維強化熱可塑性樹脂シート「TEPEX」を用いた製品が多く展示されていた。写真16はメルセデスベンツのエンジンルーム内の部品に採用された例であり、ボンネットを開くとすぐに見える位置にある。これまでは直接見えない部分への採用例が多かったが、素材として認知されてきた。
写真17はポルシェのピラーであるが、PA6とガラス繊維からなる「TEPEX」とガラス強化PA66の複合成形品を金属のプレス品と接着剤で接合した部品である。コストの制約が小さい車種での採用ではあるが、新しい用途の可能性を示唆している。
写真18はBASFブースに展示されたメルセデスベンツ燃料電池車の燃料電池部品であり、金属から代替したものである。材料はポリアミド系である。
写真19は風力発電装置のミニチョアと中国における稼働状況の紹介動画のようすを示した。風力発電のブレードのコア部分は硬質の発泡ウレタンが充填されており、均一に充填するための専用吐出ヘッドも展示されていた。動画によると中国では100基以上が商業運転中とのことであり、技術者も中国にいる。
写真20は5G用アンテナの試作品である。5Gのアンテナは4Gよりも数が圧倒的に多くなるため、他の機能と兼用し、遊び心を持ったデザインにして、圧迫感が無くすことが検討されている。ここに示したデザインの中には学生のコンペによるものも含まれる。
写真21にはTPUの発泡ビーズを利用したスポーツ用品を示した。この他に、陸上トラックの下にTPU発泡体を敷き詰めることも検討中で、将来は100mの記録が9秒を切るであろうという話もあった(実際にそれを採用するかどうかは国際陸連の判断も必要である)。
写真22にはLANXESSの「TEPEX」が使用されたスポーツ用品の例を示す。写真上は陸上競技のスパイクシューズ、下はパラセイリング用のシートハーネスであり姿勢の保持が目的である。
写真23はcovestroブースに展示された透明TPUの歯科矯正具である。矯正前の歯並びと矯正後(あるべき姿)の3Dデータを作成し、その途中経過のデータをいくつか作成する。それぞれのデータから型を造形し、真空成形によって少しずつ形状が遷移している矯正具を成形する。患者は全ての矯正具を一度に受け取り2週間ごとに変えていくことで、途中の通院が不要になる。
写真24はBASFブースに展示されていた車いすである。同社の技術を集めて作り上げたことをPRしていた(写真25)。
ヘキサメチレンジアミンの供給不足により、世界的にPA66が不足している。そのために多くの樹脂メーカーがPA66からPA6へのシフトを図っている。そのため、PA66代替としてのPA6の紹介が行われていた。写真26はLANXESSブースにおける展示である。
材料メーカーの展示はサンプルを見ただけではわからないことがある。可能な限りブースでの説明内容を記載した。
ブースでの説明内容をまとめたコンテンツは下記リンクから入手できる。
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