秋元英郎
秋元技術士事務所
第6回高機能プラスチック展は4月5~7日に東京ビッグサイトで開催された高機能素材Week2017の一部として開催された。本レポートでは、プラスチック材料、加工品、プラスチック加工及び装置に関連する展示に絞って報告する。
JXTGエネルギーは、JXホールディングス㈱と東燃ゼネラル石油㈱の経営統合によりJXエネルギーから社名変更した。主な展示内容は、液晶ポリマー(ザイダー)、脂環式エポキシ化合物、ピッチ系炭素繊維、熱可塑性エラストマー(ジェラティック)、反射防止・曇り防止加工、蓄熱材等である。
写真1は反射防止素材の展示である。以前の展示から手で触っても性能が低下しないように設計変更されている。
写真2はパラフィン系蓄熱材である。形状はペレットとシートがあり、ペレットは石膏ボードやパーティクルボード製造時に混合することが可能である。
住友ベークライトは防錆フィルム・防湿フィルム・防カビフィルム等の機能フィルム、熱硬化性樹脂と金属の接合、高引裂き性シリコーンゴム、長繊維強化フェノール樹脂等を展示していた。写真3に展示の一部の様子を示す。
熱硬化性樹脂と金属の接合は設計の自由度と製品の信頼性を高めるとのこと。ガラス長繊維フェノール樹脂は3次元複雑形状の成形も可能であり、CFRPプレプリグを用いる方法よりもサイクルタイムが短くなるという利点もある。従来のシリコーンゴムは低硬度に設計すると引き裂き強度が高くならないという課題があったが、高引裂きシリコーンゴムはクラックの成長伝搬を抑制する構造を持ち、低硬度でも高硬度品並みの引裂き強度を持つ。ターゲットとなる分野はヘルスケア・医療・自動車等が想定されている。
アロン化成のエラストマーにはスチレン系・アクリル系・ポリエステル系・高熱伝導タイプがある。スチレン系のARにはガスバリアタイプがあり、ブチルゴムと同等のガスバリア性を持つ。ポリエステル系エラストマーであるエステラールの高耐熱グレードは耐熱老化性と低圧縮永久歪みに特長がある。写真4に展示パネルを示す。また、エステラールの透明グレード、融着サンプルも展示されていた。
アルケマは、植物由来ポリアミドの透明タイプ・高弾性タイプや柔軟性芳香族ポリアミドを展示していた。写真5にパネル、写真6に展示サンプルを示す。
また、ラジカル反応性リビングポリマーのパネルも掲示していた(写真7)。新しいポリマーアロイの原料として期待される。
ダイセルポリマーは金属と樹脂の接合技術(DLAMP)、繊維強化樹脂(プラストロン)を展示していた。写真8はDLAMPの説明パネルである。写真9にはDLAMPによる接合サンプルの展示の様子を示す。プラスチックマグネットと金属の接合のサンプルも展示されていた。
写真10はプラストロン-CF(炭素繊維強化)による自動車のフロントエンドである。写真11はプラストロン-LP、プラストロン-SF(ステンレス繊維)を使用したサンプルの写真である。
クラレプラスチックスはスチレン系熱可塑性エラストマー(アーネトン)の高反撥タイプと低反発タイプを展示し、反撥性の違いがわかるデモを行っていた。写真12に展示パネルを示す。
同社は比重0.7のエラストマーコンパウンドを展示していた(写真13)。発泡させることなく、低比重を実現するためのバルーンを添加したコンパウンドになっている。
他にもメタリック調のエラストマーコンパウンドが展示されていた(写真14)。メタリック調と柔らかさの感覚的なギャップが驚きを生み、高級感を演出できるとのことである。
日本ポリプロは高透明PP、マット調PP、パール調PP等の意匠性を引き出せるグレードを多く展示していた。また、長鎖分岐構造を持つ高溶融張力PPであるウェイマックスの展示では大型の真空成形品が展示されていた(写真15)。
ウェイマックスの発泡用途に関しても、射出発泡の比較的大きな成形品を展示していた。発泡成形特有のスワールマークが目立たないのはメタロセン触媒を使って製造していることで結晶化速度を下げることができているためと思われる。写真16はウェイマックスの紹介パネル、写真17は発泡成形品の展示である。
ユニチカはメタリック着色したNANOCONメタリックのサンプルを多数展示していた。展示サンプルの中には富士精工で試作されたウェルドラインや流れムラを消した成形品もあった。また、発泡用ナイロン(フォーミロン)の成形サンプルも多数展示されたいた。写真18はNANOCONの紹介パネル、写真19は展示サンプル(上はメタリック、下は発泡)写真20はメタリックウェルドレス成形品と通常成形の比較である。
三菱ガス化学は新規耐熱透明樹脂を展示していた。写真21の右上と右下は同じものであるが、フィルムが見えないので角度を変えて撮影したものである。
モメンティブは高透明液状シリコーンゴム(写真22)、UVあるいは光硬化型ハードコート剤(写真23)を展示していた。
ダイセルエボニックは、ゴムをポリアミドのシートに接合したコンポジットシートR-compoを展示していた。ターゲットは靴底のようである(写真24)。
阿波製紙は炭素繊維強化の熱可塑性樹脂シート(CARMIX)とそれを用いた複合成形品の展示を行っていた(写真25)。CARMIXシートはLANXESSのTEPEXシートと組み合わせてホンダの燃料電池車の部品に採用された(成形はタカギセイコー)。
日本合成化学は水に溶けるプラスチックフィルム(ハイセロン)、3Dプリンター用の水に溶けるサポート材フィラメント(MELFIL)を展示していた。水溶性フィルムは液体洗剤のピロー包装や水圧転写用フィルムとして用いられている。写真26は水溶性サポート材MELFILの紹介パネルと造形サンプルである。
三井化学東セロは三井化学ブース内で形状記憶シートを展示していた。常温で柔軟性がある素材で、変形させると徐々に元の形状の戻る。写真27に配布資料の特長紹介部分とサンプルを示した。
パナソニックはポリプロピレン製の光拡散シートを展示していた。
ロシュリングエンジニアリングプラスチックスはPEEKの薄物シートと真空成形サンプルを展示していた(写真29)。
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宇部興産機械のブースでは宇部興産機械と三菱重工プラスチックテクノロジーの射出成形機分野を統合したU&Mプラスチックソリューションズによるパネルと成形品の展示があった(写真30)。サンプル数は多くは無いが、複合成形(PP繊維シートのインサート)、発泡成形、小型射出ユニット(プチ射出)を用いた二色成形によるステッチ部の加飾成形等が展示されていた。
ソディックは長繊維用成形機、金属3Dプリンターによる金型、反射防止成形品を展示していた。写真31に示すナビゲーション部品は射出成形による微細な凹凸(モスアイ)、射出成形機の扉の窓は押出成形による微細な凹凸によって反射防止機能を持たせている。
セイコーエンジニアリングのブースではREGLOPLASのヒート&クール用温調装置が展示されていた(写真32)。加圧熱水と水を切り替えるタイプであるが、戻った温水用のリザーブタンクを持ち、高温用の温調機に冷えた温水が直接入らないようにしている。
ミマキエンジニアリングはUV硬化型インクジェットタイプのフルカラー3Dプリンターを展示していた。CMYKに白、クリアーを加えた6色とサポート材2経路で造形する。価格は2000万円程度とのことであり、ストラタシスのハイエンドタイプよりははるかに安価であるが、柔軟な素材には対応できないとのことである。熊本城の造形品は畳の目まで造形しているとのことである。写真33には装置と造形品を示した。
STEER JAPANは二軸押出機用スクリューエレメントを展示していた。
小野産業は高島グループに入り、その動向が注目されていたが、IPF2008以来の自社ブースによる出展である。経営の体制は変わっても多くの技術者がそのまま残り、アクティビティの高さを維持しているようだ。展示内容は、同社独自のヒート&クール成形技術(RHCM)を利用した複合技術である。具体的には異種材接着、微細パターン部分転写IML、マイクロプレート(微細転写)、CFRTP強化シートIML、セルロースナノファイバー配合樹脂の発泡成形が展示されていた。
写真35はフィルムインサート成形の際にヒート&クールを併用することで金型のシボやヘアラインをフィルムに転写する技術である。
写真36はセルロースナノファイバー配合樹脂の発泡成形に関する説明パネルの一部である。発泡方式Aは物理発泡、Bは化学発泡と考えられる。セルロースナノファイバー添加と発泡を組合わせることで、軽量化と低線膨張が達成される。軽量化が35%を超えているのは試験した成形品のL/T(流動長と厚みの比)が小さいためであろう。
村田金箔は一次中断していた発熱パッドによる三次元ホットスタンプの課題を解決して再開した。写真37は三次元ホットスタンプの装置とそれによって加飾されたルアーのサンプルである。
同社はメタリック調ホログラムにも注力しており、TOM工法(転写TOM)対応製品も出している。写真38は三次元形状へのホログラム転写品である。
プラスチックに関する展示会は年間通して多数開催されているが、プラスチック材料に関する出展が最も多いのが高機能プラスチック展である。そのかわり成形機メーカーや成形メーカーの出展はそれほど多くない。射出成形機メーカーが多く出展するIPFと補完されるようなイメージである。やはり装置と材料が揃って出展する展示会が必要なのではないかと考える。
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