展示会レポート 人とくるまのテクノロジー展2018(名古屋、横浜) (1)部品編
秋元英郎
秋元技術士事務所
1.はじめに
人とくるまのテクノロジー展は公益社団法人自動車技術協会が主催する自動車に関する展示会であり、5月23(水)~25日(金)にパシフィコ横浜で、7月11(水)~13日(金)にポートメッセなごやで開催された。なお、横浜は3日間で93,458人、名古屋は41,306人の来場者があった(主催者発表)。
本レポートでは、横浜と名古屋両方の展示内容から、プラスチックに関係する内容を部品編、加工品・加工技術編、樹脂材料編に分け、第1部は部品について報告する。
2.部品
BPジャパン
同社の潤滑油部門(カストロール)は自動車のエンジンオイルをガラス強化PA66でカートリッジにして、カートリッジ(NEXCEL)を再利用するビジネスモデルを提案し、カセットのプロトタイプを展示していた。すでにアストンマーティンの1車種に採用済とのこと。
東洋タイヤ(東洋ゴム工業)
エアレスコンセプトタイヤ(noair)の試作品を展示していた。2006年から開発を開始して、2013年から現在の第6世代を評価中である。第6世代になって高速走行が可能になり、耐久テストを実施している。構造の特徴は、接地するゴム層の下にCFRP層があることと、熱可塑性樹脂によるX字形状のクッション部材にある。
ナノバランステクノロジーとして、フィラー(シリカ)との結合が強いポリマーを使うことでtanδを小さくして燃費向上を図っている。
豊田自動織機
自動車の樹脂製バックドアを展示していた。写真中に黒く見える透明樹脂の部分が1つの成形品であり、リアランプは透明樹脂の後にはめられ、消灯時には見えない。
豊田合成
将来コンセプトとして柔らかい素材の自動車(Flesby)を展示していた。
フロントグリルのサンプルが展示されており、めっきによる加飾と光による意匠表現が行われていた。
グラスランの段差を無くした開発品も展示されていた。
トヨタ車体
PP/CNFからなるハニカムボード(写真7)、スギ間伐材とPPの複合材(TABWD)の成形品やその加飾サンプル(写真8)、パルプ成形体等の展示があった。
トヨタ紡織
PET繊維のシートを熱成形で賦形してなるエアクリーナー用ダクトが展示されていた。ソリッド成形品に比べて吸音性に優れるためにレゾネーターが不要になる(写真9)。
自動車のドアトリムは軽量化のために発泡成形されることが多い。同社は早期からコアバック法によるドアトリムの成形に取り組んできている。今回の展示はPPとPA11をサラミ構造に分散させた高衝撃性樹脂を改質材料に使用しており、発泡による強度低下を補っている(写真10)。なお、本材料技術は三井化学に技術供与されたとのことである。
同社は古くからケナフ繊維の活用を検討してきているが、今回はケナフを活用した軽量繊維基材が展示されていた(写真11,12)。繊維の隙間に膨張性マイクロカプセルを充填することで、賦形後に隙間が充填されて剛性が高くなる。
南条装備
同社はフィルム加飾の技術でプラスチック成形加工学会の技術進歩賞を受賞している。今回の展示は広義の加飾に関するものが中心であった。特にフィルム加飾に関しては、フィルム加飾に関する考え方のパネルと成形サンプルが展示されていた(写真13)。
自動車内装材の表皮材をシボ金型で射出成形し、ミシンで手縫いして高級感を演出したサンプルの展示もあった。シボは棚沢八光社のセラシボの技術を用いている(写真14)。
ダイキョーニシカワ
新しいコンセプトの運転席として必要無い時には隠れるスイッチとインジケータが展示されていた(写真15)。
同社は環境省のナノセルロースヴィークル(NCV)プロジェクトのメンバーであり、セルロースナノファイバー(CNF)を添加したPAを用いた発泡成形品を展示していた(写真16)。
セルロース以外にも発泡成形品が多く出展されており、MuCellに限らず化学発泡によるものも展示されていた(写真17)。なお、エンジンカバーはMuCellで量産化されているが、展示サンプルは海外生産を意識して化学発泡で試作されたものである。
カルソニックカンセイ
新しいコンセプトのインスツルメントパネルが展示されていた。空調の吹き出し口のルーバーを無くし、全幅を使ったスリットから方向や風量を制御して風が吹き出す(写真18の青いLEDが点灯している部分)。また、室温や外気温の表示は表皮にあけられた孔から光が出て表示される。
河西工業
前年とは大きく展示方針を変更したようで、サンバイザー,コンソール,ドアトリム,フロントグリル,ルーバー,ラッゲージサイド,パーセルシェルフ、スプラッシュガード等の多くの部品を展示していた(写真19)。
Faurecia
フランスに本社を置く自動車部品メーカーである。今回の展示の目玉は水素タンクである(写真20)。ガラス繊維,炭素繊維,熱硬化性樹脂,熱可塑性樹脂を高度に複合化した構造により、タンク重量に対する水素の充填率が7%を超える。
第2部に続く