展示会レポート 第10回機能性素材WEEK(高機能プラスチック展・高機能塗料展他)

秋元技術士事務所
秋元英郎

1.はじめに

高機能性プラスチック展・高機能塗料展は機能性樹脂素材WEEK(主催:リードエグジビション)の一部として、2019年12月4日~6日にかけて幕張メッセで開催された。主催者の発表によると、同時開催の光関連の展示会と合わせて3日間で5万人強の来場者があった。今回は塗料、樹脂、昨日フィルムを中心に報告する。

2.塗料分野

武蔵塗料

高質感塗料として、新ソフトフィール塗料「ネオラバサン TA64-TF」が展示されていた。前年展示のものよりも低グロス・良触感において進化している。触感を体感してもらうためのサンプルが展示されていた。

「シボx塗料」のコンセプトで棚沢八光社と共同開発したシボ面に塗装して質感を高めたサンプルの展示があった。

ミラー調塗料「ECOMIRROR AGENT」は従来の塗装設備が使用できる高輝度メタリック塗料である。

射出成形と組み合わせた金型内塗装(クラウスマッファイのカラーフォーム)用の塗料の紹介とサンプル展示があった。正式に業務提携したとのことである。

大豊塗料

めっき調塗料「リプラ」と「オレフィックスMR-3000」を展示していた。リプラは2コート1ベイクのミラー調塗料、である。オレフィックスは裏面ではなく表面に塗るミラー調塗料で、ベースの樹脂製品の上にまず黒(20μm)を塗り、シルバー(1μm)を塗り、最後に20μmのクリアーを塗る。

大日本塗料

金属調塗料にスペースをとって紹介していた。「ACRYTHANE MY-51」は2コート1ベイクの塗料である。「スーパーブライト」は3コート3ベイクで品質にこだわっためっき調シルバーである。下地の黒もベイクして固めることで、アルミの配向が崩れない。また、開発品として1コート1ベイクの金属調塗料も展示していた。

日本ペイント

金属調の意匠を活かすため、プラスチックめっきの上にコーティング可能な「カラークリアー電着」塗料が展示されていた。硬化温度は80℃である。

塗膜の厚みにグラデーションを持たせて、干渉層の厚みを変え、見る方向で色が変わる「UV硬化型光干渉塗料」が展示されていた。

和紙の風合いを与える塗料として、数百μmの繊維を分散させた和紙調塗料が展示さされていた。

タクボエンジニアリング

インクジェット塗装の装置が高粘度に対応した。それにより、ジェッティングヘッドをロボットに持たせて塗装できる。必要な部分にだけ塗料をのせることが可能なためにマスキングが不要になるとともに凹部分への塗工可能性が広がっている。

塗装ヘッドの小型化はヘッドを16連並べることを可能にした。スピンドル塗装が精密かつ高速化できる。

三洋貿易

三次元網目構造を形成するセルロースナノファイバーを用いた塗料の粘性改良剤(チキソトロピー性付与剤)である「XILVA」を展示していた。高粘度でもスプレーが可能になるので、スプレー特性と耐ダレ性が両立する。

図15 三洋貿易ブースの塗料用セルロースナノファイバー

3.フィルム分野

千代田インテグレ

テクスチャー加飾として、成形品に黒の層と金属調の層を形成した上にインクジェットで木目調等のテクスチャー加飾を施したサンプル、水圧転写によってテクスチャーを転写したサンプルが展示されていた。

金属調加飾では、文字が浮き出る工夫を見せていた。

株式会社技光堂

「METAL FACE」という技術の名称で、透明樹脂と金属調印刷を組み合わせた製品の提案を行っていた。金属を用いないことで電磁波を透過させ、タッチセンサーにも対応可能である。

尾池工業

めっき調加飾の技術と電極つきシートの技術を組み合わせて、三次元貼り合わせ工法による試作品が展示されていた。触れることで光る仕掛けになっている。

デンカ

良触感の押出成形シート「ノーブルタクト」の光透過性機能を展示していた。触れると裏のランプが点灯して光が透過する。

図23 デンカの良触感シートによる加飾品

帝国インキ製造

「ステルス印刷」は裏から光を当てたときだけ見える印刷である。赤青切替は背面に仕込まれた赤と青の異なった文字を表示させる技術である。

4.樹脂材料分野

ダイセルエボニック

PEEKと炭素繊維UDテープの複合成形品が展示されていた。CFと複合させることで製品の剛性が飛躍的に向上する。

透明樹脂であるアクリル樹脂系の「PLEXGLAS」とアクリルイミド系の「PLEXIMID」が展示されていた。PLEXIMIDはビカット軟化点が150℃と耐熱性に優れる。

NEC

セルロース系高機能バイオ素材「Necycle」を展示していた。セルロースを酢酸と反応させたセルロース分を50%含む熱可塑性樹脂で、ABSに似た特性を持っている(しかも同じ収縮率)。生分解性については評価中であるが、長く使用されて使用後に回収される用途(例えば家電のハウジング)がターゲットである。

堀正工業

ヘンプ(麻)繊維と樹脂の複合品が展示されていた。例えば、ヘンプ繊維とPP繊維を50:50で用いた不織布を熱プレスで賦形した製品、ヘンプ100%の不織布にエポキシ樹脂を30%注入して硬化させた製品、真空RTM(VaRTM)を用いて不飽和ポリエステルを含侵させたFRP等である。

株式会社三栄興業

ポリプロピレンの精密な熱分解による機能化に関するパネルが展示されていた。分子量10万程度のPPから開始し、分解後でも分子量が2万程度ある。両末端二重結合やPPアイオノマーを検討している。

図34 三栄興業の機能性熱分解PP

5.装置

湘南貿易

EREMAの使用済みプラスチックのリサイクル設備等を紹介していた。

図35 湘南貿易ブースにおけるプラスチックリサイクル関連装置の説明

ドナウ商事

ECON社の水中カットペレタイザーを展示していた。非常にコンパクトであり、ダイの目詰まりを防ぐための断熱の工夫がされている。

図36 ドナウ商事ブースに展示された水中カットペレタイザー

6.おわりに

塗料・フィルムも含めて、高機能性の流れを見ていくと、加飾・デザインの追求と環境対応の流れが見える。