秋元技術士事務所 秋元英郎
千葉市美浜区中瀬1-3 幕張テクノガーデンCB棟3F MBP
名古屋プラスチック工業展(主催:日刊工業新聞社)は3年に1度開催されるプラスチックに特化した展示会であり、10月7~10日にポートメッセなごやで開催された。同時期に開催された関西高機能プラスチック展とは対象的に成形機メーカーが多く出展し、原料樹脂メーカーは少なかった。来場者は4日間で約18,000人であった。図1は第3展示館に向かう通路であり、写真左のカウンターに座っているのは「プラスチックガール」と呼ばれる方々である。
図1.会場のエントランス
本報告では、射出成形機、その他機器・技術、材料について報告する
昨年のIPF2014から1年しか経っていないので、IPFと同じ成形実演も多く見られた。
ソディックは直圧450トン成形機(型締:油圧、射出:電動)でABSのボール半割形状のものを成形していた。保圧は70 MPaで60秒、冷却は10分という成形である。成形していたサンプルは図2中に見える白い半球である。
図2.ソディックブースの展示サンプル
住友重機械工業(住友SHI DEMAG)は385トン成形機でエアコンルーバーの成形実演を行っていた。図3中に見える白及び透明の成形品がエアコンルーバーである。
図3.住友SHI DEMAGブースに展示されていた成形品
日精樹脂工業はXポンプ搭載ハイブリッド成形機(油圧ポンプをサーボモーターで作動させる方式)で低圧成形システム「N-Sapli」を用いて低応力精密レンズの成形を実演していた。N-Sapliは、低型締の状態で射出開始し、微妙に開く金型を閉じる(圧縮)成形方法であり、ガス抜きが効果的に行われるので転写が良くなる。図4にN-Sapliの紹介パネルを示す。。その他に厚肉成形品のサンプル展示があった(図5)。
図4.N-Sapliの説明パネル
図5.日精樹脂工業ブースに展示されていた厚肉成形品サンプル
東芝機械のブースでは東芝機械エンジニアリングによる加飾成形のサンプル展示があった(図6)。インクジェット塗装はタクボエンジニアリングの技術である。とくに、インクジェットで印刷したフィルムをインサートした成形は今後のオンデマンド加飾の新しい流れになると考えられる。東芝機械はトグル式成形機によるコアバック発泡の制御技術をブラッシュアップした。具体的にはクロスヘッドの速度ではなく、ダイプレートの移動速度を制御できるようにした。
図6.東芝機械エンジニアリングによるインクジェット加飾サンプル
日本製鋼所はIPFでも行っていた微細射出発泡成形(MuCell)とフィルムインサート成形の複合による加飾成形を実演していた(図7)。
図7.日本製鋼所ブースで成形していた微細射出発泡成形(MuCell)のサンプル
上:加飾していないもの、下:フィルムインサート成形との併用により加飾したもの
名機製作所はバクメルター(シリンダー内減圧システム)と新規に開発したスクリューの組合せによる効率的な脱気を提案していた(図8)。
図8.名機製作所ブースの説明パネル
東洋機械金属は、SAGスクリューとガス抜きホッパーの組合せで成形実演を行っていた(図9)。縦型成形機を用いたフレネルレンズの成形実演も行っていた。
図9.東洋機械金属ブースで配られた技術資料から引用した写真
キヤノン電子は卓上型の射出成形機(図10左)、卓上型三次元加工機(図10右)を出展していた。成形機の方は可塑化スクリューを持たないプランジャー方式であるが、簡単なテストピースや小型部品の成形には十分使えると考えられる。
図10.キヤノン電子ブースに展示されていた小型射出成形機(左)と小型三次元加工機(右)
ファナックは新しいタイプのロボット(ゲンコツ型)を成形品の検査用として実演展示していた。関節が動くのではなく、掌でつかんで三次元に回転させるような動きが可能である。図11には成形品のショートショット検出に用いた実演の様子を示した。
図11.ファナックブースで実演されていた「ゲンコツ型」ロボットを使用した成形不良の検査
アールエフは医療用の装置で実績(内視鏡、X線装置等)がある企業であるが、今回の展示はプラスチック成形品の検査に使えるX線CTスキャン装置である。サンプルサイズは最大30cm角で、解像度は0.2mmである。発泡成形の気泡観察には適さないが、大きなボイドの検出は可能と考えられる。図12は装置の画面である。解像度の限界をわかって使うのであれば、価格的にも手頃である。
図12.アールエフのブースに展示されていた小型X線CT装置
山下電気ブースでは微細射出発泡成形(MuCell)とヒート&クール成形(Y-HeaT)の組合せサンプルが展示されていた。これは、秋田県産業技術センターによって試作されたものである。図13に秋田県産業技術センターによる説明資料の一部を示す。
図13.山下電気ブースに置かれていた秋田県産業技術センターによる技術紹介資料から、微細射出発泡成形(MuCell)とY-HeaTの組合せ
トレクセルジャパンは微細射出発泡成形(MuCell)の成形品(特に自動車部品)を多く展示していた(図14)。
図14.トレクセルジャパンのブースに展示されていた微細射出発泡成形MuCellによる自動車部品のサンプル
本展示会には残念ながら材料メーカーの出展が少なく、材料メーカーの動向を読み取ることができない。三菱化学ホールディングスが比較的広いブース面積で積極的な展示を行っていた。
三菱化学は植物由来のポリカーボネート系樹脂Durabio(ビスフェノールAの代わりにイソソルバイトを使用)の成形品を展示していた(図15)。植物由来を特長として売るのではなく、PCに比べて低粘度で転写性に優れる点をアピールしていた。
図15.三菱化学ブースに展示されていたDurabioの成形品
三菱レイヨンは炭素繊維の不織布をポリカーボネートで挟んだ熱可塑性スタンパブルシートを展示していた(図16)。ピッチ系炭素繊維が原料であるので、熱伝導性が良いという特長もある。
図16.三菱レイヨンブースに展示されていたCF強化熱可塑性スタンパブルシートによる成形品
日本ポリプロは、新製法によるガラス長繊維強化ポリプロピレン「ファンクスター」の成形品を展示していた(図17左)。原料樹脂の製法を変えたことで意匠性が向上している。また、ウェルドレス成形不要・塗装不要でウェルドが目立たない材料としてウェルネックスの成形品が展示されていた(図17右)。
図17.日本ポリプロブースに展示されていたファンクスターによるインパネサンプル(左)とウェルネックスの成形品(右)
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