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展示会レポート Japan Pack 2019(日本包装産業展)

秋元技術士事務所
秋元英郎

1.はじめに

Japan Pack(日本包装産業展)は一般社団法人日本包装機械工業会が主催する包装機械を中心とした展示会であり、隔年開催されている。機械の他にもフィルムや不織布等の包材の展示も多い(樹脂材料は殆ど無い)。

通常は東京ビッグサイトで開催されるがJapan Pack 2019は幕張メッセで2019年10月29日~11月1日に開催された(2021年は東京ビッグサイトでの開催)。来場者数は4日間のトータルで33,539名(うち海外1,310名)であった。

本レポートでは、包装機械、包材、環境問題への取り組みについて報告するが、特に海洋プラスチックごみ問題に対する取り組みが多く見られたので、環境面を中心にして報告する。

2.包装機械

株式会社イシダ

プラスチック包材から紙へのシフトがある中で、紙用の包装機械を展示していた。紙の包材は内面にヒートシール層としての樹脂層があり、基本的にはヒートシールによりシールされる。

 

図1 イシダブースの紙包材
図2 イシダブースの紙包材
図3 イシダブースの紙包材

一方でフィードロス対策としての取り組みも示されており、こちらはプラスチック包材の活用が中心であり、紙では対応できないとのこと。

図4 イシダブースの野菜包装装置
図5 イシダブースの野菜包装装置

illig

ドイツの真空成形機メーカーである。今回の展示の中で目立ったのは、真空成形とインモールドラベルの組合せである。射出成形におけるインモールドラベル成形に比べると融着に必要な熱量が少ないので、非常に難易度が高く他社は追従していないとのことである。

図6 illigのインモールドラベル
図7 illigのインモールドラベル

Herrmann

ドイツの超音波融着装置メーカーである。エネルギー変換効率が高いため、包材用途にヒートシールに代わって超音波溶着を提案している。

図8 Herrman配布資料より

3.包材

コバヤシ

バイオマス材料であるデンプンを大量に混ぜたプラスチックの製品を展示していた。成形方法はシートからの真空成形、射出成形、ブロー成形等が可能である。

図9 コバヤシブースの説明パネル
図10 コバヤシブースの展示サンプル

山中産業

ティーバッグ用ネットや不織布のメーカーである。今回の展示の中ではポリ乳酸を原料としたネットと不織布を全面に出していた。

図11 山中産業ブースに展示されたPLA製ティーバッグ用ネット
図12 山中産業ブースに展示されたPLA製ティーバッグ用不織布

富士特殊紙業

食品包材メーカーである。今回の展示では横引き裂き可能なピロー袋、ジッパー付き袋が展示されていた。

図13 富士特殊紙業ブースの説明パネル
図14 富士特殊紙業ブースの説明パネル
図15 富士特殊紙業ブースの展示サンプル

4.環境問題への取り組み

CLOMA

海洋プラスチックごみ問題を解決するため、ポイ捨て防止の徹底をはじめとする廃棄物の適正管理に加え、プラスチック製品の3Rの取組より一層の強化や、生分解性に優れたプラスチック、紙等の代替素材の開発と普及の促進に取り組んでいる企業の集まりであり、事務局のコーナーと各企業のコーナーがあった。

7&i ホールディングス

コンビニエンスストアで販売される飲料の使用済みPETボトルを回収する取り組みを進めており、国内で販売されるPETボトルの約1%に相当する量を回収しており、PETボトルの原料に戻してPETボトルにリサイクルしている。すでにリサイクルPET 100%のPETボトルもできている。

図16 7&iホールディングスの説明パネル

GSIクレオス

ノバモントから輸入販売しているデンプン等の植物資源とバイオポリマーからなる生分解性樹脂「マタービー」を展示していた。

図17 生分解性樹脂「マタービー」の説明パネル
図18 生分解性樹脂「マタービー」の製品サンプル
エフピコ

使用済みのトレーや使用済みPETボトルをトレーに戻す取り組みについて説明していた。

図19 エフピコブースの説明ポスターとサンプル

クラレ

直鎖状のアミロースが主体の特殊なデンプンを主成分とした生分解性を持つガスバリア性素材「PLANTIC」を展示していた。バリア性能はポリアミドより2桁優れ、EVOHに比べると1桁劣るバランスであるが、EVOHよりやや安価とのことである。

シールドエアーとの提携により、クラレが原料を生産し、シールドエアーが包材として販売する計画である。

図20 クラレブースの「PLANTIC」説明パネル
図21 クラレとシールドエアーの提携
図22 生分解性・バリア性包材「PLANTIC」の使用例

水溶性で生分解性であるポリビニルアルコール「MonoSol」の洗剤用途の展示もあった。

図23 クラレブースに展示されていた洗剤用途のポリビニルアルコール

リンテック

使用済みPETボトルから再生したPET樹脂を80%以上使用したラベルを展示していた。

図24 リンテックの再生PETを原料にしたラベル
図25 リンテックブースの説明パネル
稲畑産業

BioLogiQ社のでんぷん由来の生分解性プラスチック「NuPlastiQ」とそのコンパウンド(稲畑産業の関連会社がタイでコンパウンディング)である「BioBlend」を紹介していた。

図26 稲畑産業ブースの生分解性樹脂の説明パネル
図27 「NuPlastiQ」の説明パネル
図28 「BioBlend」の説明パネル
大王製紙

プラスチック削減のために、紙にヒートシール層として薄くプラスチックをコーティングした包材を展示していた。プラスチックを58%削減し、「紙」と表示が可能になる。

図29 大王製紙の紙包材説明パネル
図30 大王製紙の紙包材
大日本印刷

多層包材のモノマテリアル化、バイオマスプラスチックの活用、薄層化(機能を兼ねて層の数を減らすことも含む)の取り組みが示された。K2019におけるReihenauserの取り組み同様、オールポリオレフィン化が進んでいくと考えられる。

図31 大日本印刷ブースの展示サンプル

凸版印刷

バリア層にシリカ蒸着「GLバリア」を用いたモノマテリアル包材、セブンイレブンで回収したリサイクルPETを原料にした容器包材が展示されていた。

図32 凸版印刷のシリカ蒸着を利用したモノマテリアル包材
図33 凸版印刷のリサイクルPETを使った包材
梅田真空包装

リサイクルPETをシート化して、真空成形により生産されたブリスターパック等の包装材料が展示されていた。

図34 リサイクルPETを原料にしたシート成形品

福助工業

2030年までにバイオマスプラスチックを年間200トン使用することを目標にしており、バイオマスプラスチックを使用したレジ袋を展示していた。同時に海洋生分解性を持つ開発品も展示していた。

また、レジ袋をごみ袋に再利用することの合理性を強く訴えていた。

図35 レジ袋の再利用を訴えるパネル
図36 福助工業ブースのバイオマスプラや生分解性プラを用いたレジ袋
平和化学工業

多層ブローの技術を持っており、生分解性樹脂、植物由来樹脂、リサイクル樹脂の活用を積極的に行っている。

図37 平和化學工業所の説明パネル
図38 生分解、バイオマス、リサイクル材料を用いたブローボトル
日本環境協会

海洋プラスチックごみ問題の解決、貴重なプラスチック資源循環のために正しく認識してもらうため、エコマークの活用について説明していた。

図39 エコマークについて

CLOMA事務局

図40 CLOMA活動の紹介パネル

株式会社エルコム

使用済みプラスチックの有効活用として、フィルムく屑や発泡スチロール屑を圧縮してペレット形状にして減量化する装置、圧縮してできたペレットを燃料にして温水を生成する装置を展示していた。あえて発電用にせずに温水として活用することで、小規模な工場でも使用できるようにしたとのことである。国内のみならず、貧困国の支援への活用も考えられている。

図41 使用済みプラスチックを圧縮してペレット化する装置
図42 ペレット化の使用前と使用後
図43 廃プラ燃焼装置の紹介

モキ製作所

消費期限が過ぎた等の理由で食品を廃棄せざるをえない場合に使用する内容物と包材を分ける装置、および包材を洗浄・水切りする装置を展示していた。

図44 内容物と包材を分離する装置
図45 内容物を取り出した包材を洗浄・水切りする装置

5.おわりに

海洋プラスチックごみ問題が優先的に解決すべき課題になっている中で、生分解性樹脂、植物由来樹脂、リサイクル材、廃棄物の処理などの多くのソリューションが提案されている。一時的なブームではなく、地に足がついた取り組みになってほしい。

 

 

 

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