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展示会レポート 第5回高機能プラスチック展・第7回高機能フィルム展

秋元英郎

秋元技術士事務所

千葉市美浜区中瀬1-3 幕張テクノガーデンCB棟3F MBP

1.はじめに

第5回高機能プラスチック展・第7回高機能フィルム展は第7回高機能素材ワールド(主催:リードエグジビジョンジャパン)の一部として2016年4月6~8日にかけて開催された。来場者は第26回ファインテックジャパン、第16回光・レーザー技術展との合計として発表され、3日間で約6万人が来場した。

本報告では、高機能プラスチック展を中心にして、フィルムに関する展示も併せてレポートする。

2.成形材料

ユニチカは発泡用ナイロン(フォーロン)、メタリック調ナイロンナノコンポジット(NANOCON)、高外観ナイロン(RUN)を展示していた。フォーロンは射出発泡成形、特にコアバック発泡に向いた材料設計がなされている。写真1にフォーミロンの成形サンプルを示す。NANOCONは補強用のフィラーとして非常に微細なものを重合時に添加したナノコンポジットであり、フィラーがメタリックの色調を邪魔せずにフィラー強化ナイロンとしての特性が発現するところに特長がある。写真2にNANOCONを用いた光輝成形品の展示サンプルを示す。RUNシリーズは良外観で、ソリ小さい特長がある。

写真1 ユニチカブースに展示されていた発泡成形用ナイロン「フォーミロン」成形品

左:通常射出成形、中央:コアバック発泡、右:ショートショット発泡

写真2 ユニチカブールに展示されていたメタリック成形品

上野製薬は低融点のLCPを展示していた。融点を低くする(220℃)ことで、PP、PET等の他樹脂との相容性を高めて機能を付与する改質材として提案していた。PPに3%添加することで耐候性が改良され、PETに10%添加することでガスバリア性が2倍になる。写真3に展示パネル及びサンプルの写真を示す。

写真3 上野製薬ブースにおける低融点LCPの展示

上:展示パネルの一部、左下:低融点LCPをブレンドしたペレット、中央下:PP改質のサンプル、右下:PET改質のサンプル

写真4 低融点LCPによるPP,PETの改質効果

左:PPに3%添加した時の耐候性、右:PETni10%添加したときのガスバリア性

大阪ガスケミカルは、ポリアミドの流動性を改良するフルオレン骨格を持つ改質材を展示していた。ナイロンの分子間の水素結合の間に入りこむことで水素結合を弱めて流動性を向上させる仕組みである。5~10%の添加によって弾性率や融点はあまり変化しないが、メルトフローレートやスパイラルフローで大幅な流動性向上が確認できている。写真5に説明パネルの抜粋と展示サンプルの写真を示す。

写真5 大阪ガスケミカルブースで紹介していたナイロン用改質材

上:構造の説明、左下:スパイラルフロー試験のサンプル、右下:ナイロンの流動性改良効果

3.成形機・加工技術

宇部興産機械は射出成形の金型に取り付ける小型の射出ユニット(プチ射出)をパネルで展示していた(写真6)。

写真6 宇部興産機械のプチ射出説明パネル

宇部エクシモはポリオレフィンの複合フィラメントSIMTEXの新しい用途を提案していた。このフィラメントを織物にしてプレス成形によって賦形が可能であり、賦形したプレス成形品を射出成形の金型に挿入してインサートが可能である。会場には自動車のボンネット形状にプレス成形されたサンプルの展示もあった(写真7)。

写真7 宇部エクシモのポリオレフィンの複合フィラメント「SIMTEX」を利用した成形品サンプル

左:プレス成形品、右:インサート成形品の表(上)と裏(下)

宮川化成はセラミックスの射出成形品をサンプル展示していた。セラミックスの射出成形(CIM)はセラミックスの粉を有機系バインダーで固めたものを射出成形して、成形後に焼くことでバインダーを除去しながらセラミックスを固める成形方法である。今回の展示会では、機構部品、装飾品が多く展示されていた(写真8)。装飾品はセラミックスの粉と一緒に顔料を混ぜておき、成形して焼いた後に磨き上げることで表面光沢と独特の色調を出している。

写真8 宮川化成ブースにおけるセラミックスの射出成形品サンプル

4.フィルム

デンカは表面に微細加工した機能性シートを展示していた(写真9)。ひとつは撥水性シートであり、表面に微細な凹凸を加工した後にコーティングにより微粒子付着させている。実演では水玉がパチンコ玉のようにころがる様子を見せていた。もうひとつは良触感シートである。こちらも微細な凹凸を加工して繊維質を表現している。微細な凹凸は押出成形の際にロールで転写させている。実際に触ると柔らかさと温かさを感じる。

写真9 デンカブースに展示されていた機能性シート

左:撥水性シート、右上:良触感シートの原丹、右下:良触感シートを使った製品例

日本合成化学はポリビニルアルコールをベースとした水溶性樹脂を多く展示していた(写真10)。水溶性プラスチックフィルム(ハイセロン)は水圧転写のベースフィルムやピロー型液体洗剤の包材として使用されている。Gポリマーは熱可塑性樹脂としての溶融成形が可能でガスバリア性を持つ樹脂である。他の素材と二色成形を行ってGポリマーを融かしだすという使い方も提案していた。

写真10 日本合成化学ブースにおける水溶性樹脂の展示

上:水溶性プラスチックフィルム「ハイセロン」、下:ガスバリア性・水溶性樹脂「Gポリマー」

5.セルロースナノファイバー

第一工業製薬は疎水化したセルロースナノファイバー(開発品)の溶液を展示していた(写真11)。溶剤に透明に分散して増粘効果を発揮し、樹脂に混ぜて溶剤キャストでフィルム化することでフィルムの強度を上げることが可能になる。

写真11 第一工業製薬の溶剤分散型セルロースナノファイバー

大阪ガスケミカルはフルオレンで疎水化したセルロースナノファイバーを展示していた(写真12, 13)。製品形状は粉末で、樹脂に練り込む事が可能である。例えばポリ乳酸(PLA)に10%添加することで結晶化後の荷重たわみ温度が137℃から153℃に向上している。

写真12 大阪ガスケミカルのセルロースナノファイバー説明パネル

写真13 大阪ガスケミカルのセルロースナノファイバーの拡大写真とそれを添加した成形品

三井化学分析センターはセルロースナノファイバー強化樹脂に対して独自の染色技術とTEM(透過型電子顕微鏡)観察技術を開発した。これにより個々のファイバーおよびリグニン等の木質成分の状態を観察することが可能になった。

6.接着剤

ダイセルエボニックは、金属-樹脂接合用接着剤であるVESTAMELTを展示していた(写真14)。この接着剤は粉体であり、事前に金属にコーティングしておき、射出成形の金型にインサートして成形によって接合を行う。

写真14 ダイセルエボニックブースにおける金属/樹脂の接合サンプル

スターテクノは自動化機器メーカーであるが、ノードソンのフォームメルト(発泡ホットメルト)を用いて自動車のドアパネルのシーリングを実演していた(写真15)。

写真15 スターテクノブースにおける発泡ホットメルトによるシーリングの実演

矢印の先の白い部分がホットメルトのビード

7.発泡剤

クレハは膨張性マイクロカプセル「クレハマイクロスフェア」の耐熱タイプをパネルで紹介していた(写真16)。膨張開始温度が高い(208℃)ことで、エンプラ用の発泡用をターゲットにしている。

写真16 クレハの耐熱型膨張性マイクロカプセルの特性

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