進化した次世代ウッドプラスチック(i-WPC,Innovative Wood Plastic Compound)

三宅仁
アイ-コンポロジー株式会社

1.はじめに

ウッドプラスチックコンパウンドは、文字通り木粉とプラスチックを混合した複合材ペレットである。しかしながら、木粉複合材の宿命として溶融粘度が非常に高くなるという特性から、成形は押出成形からなかなか脱せられず板材や棒材のような長尺物に限られていた。さらに200℃を超える成形温度では酸化分解による臭いと黒変が起こるため、プラスチック本来の射出成形その他の自由な成形は長い間困難とされていた。

2. 「次世代ウッドプラスチック(i-WPC)」とは

今回ご紹介する「次世代ウッドプラスチック(i-WPC,Innovative Wood Plastic Compound)」は、素材、添加剤、製造法等に工夫を重ねた新素材であり、プラスチック本来の各種成形が可能となる組成物を次々に生み出している。

3.ウッドプラ成形の進化

3-1 射出成形

従来の射出成形機や金型でそのまま成形可能である。 i-WPCペレットの木粉の含量は51wt%、マトリクス樹脂はPP、PE、ABSその他を選べるがPPがほとんどである。そのまま射出成形も可能だが、ナチュラル樹脂をドライブレンド希釈することで任意の濃度に調整可能である。成形面は木本来のしっとり感があり、着色も塗装も可能である。また物性面では弾性率が大きく改善されるほか熱変形温度も向上する。

写真1にあるような射出成形が実用化されている。

写真1 i-WPCの射出成形品

3-2 押出成形(シート)

写真2に押出成形で得られたシートの例を示す。シート成形に適した伸びに優れたマトリクス樹脂を選ぶことにより、1㎜以下の厚みに成形可能である。多層シート化はもちろん着色も可能で表面の柔らかいしっとり感がたいへん好評である。

写真2 押出成形によるi-WPCのシート

3-3 真空成形

前述の多層シートを真空成形することにより、深絞りの真空成形が可能となる。弁当箱やブリスタパック等の用途が検討される。写真3に木粉含量30%/PPの真空成形の例を示す。

写真3 多層シートの真空成形品

3-4 ブロー成形(中空成形)

写真4に木粉含量10%と30%/PPのブロー成形の例を示す。写真右では無着色の単層ブローのためやや表面は荒れているが木粉コンパウンドでブロー成形が可能ということには筆者も正直驚いている。さらに着色し多層にすれば、きれいな表面状態が期待できる。尚、深絞りとブロー成形は日本初の材料技術が生んだ世界発の画期的な技術であると考えている。

写真4 i-WPCのブロー成形品(左:木粉10%、右:30%)

4. 今後のウッドプラ進化

近年、廃プラスチック問題から何かと悪者とされるプラスチックであるが、再生可能な循環・生物資源である木粉を使ったウッドプラスチックは、使い方次第でプラスチックの観念を変える可能性がある。さらにマトリクス樹脂に生分解性樹脂や植物由来樹脂を使用すれば、100%生分解性やCO2排出削減効果がでるだけでなく、フィラー嵩増し効果により原価コストも低減できる可能性がある。フィラー側も木粉以外の植物由来成分が使用でき、組合せにより多様な特性の発現が期待できる。

世界の潮流である「バイオエコノミー社会」「サーキュラーエコノミー社会」の端緒になることを期待している。