製品技術紹介 海洋生分解性材料「ビオフェイド」

三宅仁、小出秀樹
アイ-コンポロジー株式会社

これまで当社(アイ-コンポロジー株式会社)は、木粉とプラスチックの複合化に取り組んできており、木粉の劣化・着色を抑制するための低温加工性付与を付与した材料技術を基盤技術にしながら、熱成形・ブロー成形に対応可能な素材の開発等に取り組み、より用途範囲を拡大してきた。ただし、天然物由来の木粉を使用することで環境対応材料として位置付けているとはいえ、バインダーとしてのプラスチックは必要不可欠であり、使用後に回収困難な用途の場合は最終的に海洋に流出する可能性がある

ところで、生分解性プラスチックとして最もよく知られているポリ乳酸(PLA)は、コンポスタブル樹脂といって、高温でバクテリアの数が多い堆肥化装置を使ってようやく実用的な生分解が得られる。もちろん海洋生分解性はほとんど期待できない。

一方で当社が開発した「ビオフェイド」はバクテリアが少なく温度も低いというバクテリアの活動にとって極めて不利な海水中での生分解が可能である。海水に入れてから28日後の平均生分解度は36%で、同条件における他の既存の生分解性材料の分解速度を上回る。「ビオフェイド」という名称は生物を意味する「Bio」と消えて無くなることを意味する「fade」を組み合わせたものである。物性を表に示す。

当社は特に海で使用される用途に着目し、「ビオフェイド」を使用した漁具の開発に着手し、海洋プラスチックゴミ問題の解決に役立てようと努力している。すでにダイスライドインジェクションによるフロートの球体形状の試作成形に成功しており、2021年末までに試作品の完成を目指している。

ビオフェイドを使った試作品

養殖などに使う漁具は、紛失や遺棄で海洋プラゴミになることが問題化している。当社はモノづくりベンチャーを育成する東京都の「Tokyo Startup BEAMプロジェクト」の支援を受け、フロート、ルアー、養殖機材などの製品化を計画中である。

今後は組成や材料の配合を最適化し、漁具としての使用期間と生分解のスピードのバランスの検証を行う計画である。「ビオフェイド」は流動性を高める工夫により、射出成形性に優れるため、さまざまな用途を模索している。こうして、海洋汚染に配慮した同材料の採用を広げていきたい。

「ビオフェイド」はペレット形状で供給可能なので、興味があればご連絡いただきたい。

(編集者注:プラスチックス・ジャパン・ドットコムのお問い合わせフォームからご連絡いただければ、お取次ぎいたします)