秋元英郎
秋元技術士事務所
資源リサイクルEXPOが今回から資源循環EXPOと名称変更され、3月3~5日にかけて東京ビッグサイト南ホールで開催された。3日間の来場者数は同時開催の第17回スマートエネルギーWeekと合わせて約28,000人であった。資源循環EXPOの方は閑散としていた。
本報では、プラスチックのリサイクル事業およびプラスチックリサイクル用の設備に関する視察内容について報告する。
同社は使用済みプラスチックを原料としたリサイクル製品の製造を事業の中心に据えており、プラスチック製の敷板が主力製品である。本展示会では電線被覆に使用されている架橋ポリエチレンのリサイクルペレットを中心に展示していた。
架橋ポリエチレンは架橋密度が高く、そのままではペレット化や成形はできないので、特殊な装置を用いて架橋部分を切断しペレット化する(図1)。
展示されていたペレットはゲル分率が約25%であるが、10%程度のものも製造可能である。同社では敷板用途への活用を進めているが、使用済み架橋ポリエチレンの発生量が膨大なため、用途拡大に取り組んでいる。高粘度が必要な成形用に流動特性を改良する改質材としての用途があるように思われる。図2に架橋ポリエチレンの粉砕品と架橋切断処理されたペレットを示す。
同社は山口県に本社があり、ポリエチレンのリサイクルを行っている。年間6千トンを処理し、6割は自社製品として販売、4割はOEMである。図3に原料となる使用済みポリエチレン、図4、図5に再生ポリエチレンを原料にした製品を示す。
同社は物流で用いるストレッチフィルムの販売を行っているが、それと並行して、使用済みストレッチフィルムを回収してフィルム製品に再生して販売も行っている。使用済みフィルムや使用済みPPバンドを回収してペレット化したのち、関連会社である株式会社岩井化成でフィルム製品に加工している(図6)。
プラスチックのリサイクルのネックは回収費用であるが、同社では専用の回収車両を所有して回収自体も自社で行っている。
同社は使用済みプラスチックを炭化する装置を開発している(図7)。生成したカーボンはタイヤの添加剤やリチウムイオン電池の電極として使用できる。80~200℃でプラスチックと触媒を接触させることで炭化させる。燃焼工程が無いため処理の際にダイオキシンが発生しない。展示の例では、30gのPETボトルから2.8gのカーボンが得られている。図8は説明パネルである。
同社は廃プラスチック処理関係の装置をパネルおよび現物を複数種類展示していた。図9は洗浄粉砕機、洗浄脱水機及び両者を組み合わせた「プラ洗ユニット」の説明パネルである。
図10は大型破砕機「メガシャーク」の説明パネルと実機の写真である。バンパーやポリタンクなどの大型プラスチック製品をそのまま投入可能である。破砕機と粉砕機を組み合わせた使い方も可能である。
粉砕したプラスチックを比重分別する装置「流選なると」を展示していた。上向きの水流を作ることで、比重が1以上の範囲でも比重分別が可能であり、分別の境界は流速でコントロールする。図11に説明パネルとデモンストレーションのようすを示す。高比重品が沈み、低比重品が浮くが、発泡体のように極めて比重が小さいものは軸の近くに集まる。
同社は印刷済みプラスチックフィルムからインクを除去する装置「フィルムクリーナー」をパネルと処理前後のフィルムの展示で紹介していた(図12、図13)。「フィルムクリーナー」は国内の大手化学会社とその系列フィルムメーカーで実証テストが行われており、脱インク処理をしたフィルムはペレット化してバージン材と混ぜてフィルムの成形に使用可能であるかを評価している。
コロナ禍で出展企業数は少なかったが、出展した企業に敬意を表したい。プラスチックのリサイクルに関係する装置やリサイクル製品について多くの人に知ってもらう必要がある。
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