展示会レポート 3Dプリンター展(3D Printing 2017)
秋元英郎
秋元技術士事務所
千葉市美浜区中瀬1-3 幕張テクノガーデンCB棟3F
1.はじめに
3D Printing 2017はナノテク展に併設されて2017年2月15~17日に東京ビッグサイトで開催された。3Dプリンター展単独での来場者数のデータは無いが、同時開催の14展示会の合計として3日間で約53,000人の来場があった(主催者の発表)
本レポートでは、3Dプリンター展及びナノテク展に出展されていた3Dプリンティングに関係ある展示について報告する。
2.金属の造形に関する展示
2-1 金属造形の装置
NTTデータエンジニアリングはEOSの販売代理店として金属粉末及び樹脂粉末の造形サンプルを展示するとともに、協賛企業によるブース内セミナーを行っていた。金属造形品のサンプルとしては、装飾性ある製品や造形限界を説明するものが展示されていた(写真1)。樹脂粉末のサンプルとしては、チェーン状のものやバネ状でクッション性を持つものや、高耐熱性樹脂であるPEEKを用いたガスタービン用間にホールドやエアダクトが展示されていた(写真2)。
三菱商事は松浦機械製作所の金属光造形複合加工機による造形サンプルを数多く展示していた(写真3,4)。公設試における造形試作品も多く展示されていた。
JEOLは電子ビーム方式の金属3Dプリンターについてパネルで説明していた。真球状の金属粉末が必要とのことである。多田電機はTRAFAM(技術協同組合次世代3D積層造形技術総合開発機構)ブース内で、電子ビーム方式による試作品を展示していた。
BeAMは㈱冨士インダストリーズが代理店になっており、金属粉末の溶射による積層造形装置(パネル 写真5)と造形品(写真6)を展示していた。写真6の造形品で、胴体が光っている部分は造形後に磨いた部分である。装置の価格は2億円台とのことである。
2-2 金属造形用材料
山陽特殊製鋼は、金属3Dプリンター用の金属粉末についてパネル(写真7)とサンプル(写真8)を展示していた。ガスアトマイズ法により真球状の粉末が得られるとのこと。
2-3 金属造形の受託
J-3DはEOSを所有して金属と樹脂の造形受託を行っている。樹脂系は装置が安くなっていることも有り、受託は減っており、金属造形の受託が多いとのことである。材質としてはマレージングが多く、インコネル、アルミが続く。写真9は展示サンプルである。
OPMラボラトリーはSodicグループになったこともあり、金属造形による金型を用いた成形を見せていた(写真10)。また、金型も展示していた(写真11)。
3.樹脂系材料の造形に関する展示
ストラタシスによると、最近は樹脂系3Dプリンター(FDM方式)を試作開発ではなく、製造現場で使う治具等の造形に用いられるケースが増えているとのことで、実例としてリコーを挙げていた。造形品の強度も上がっている。写真12はMakerbotのタフPLAを用いた造形品である。部品のはめ込みで割れないことをPRしていた。
インクジェット方式は医療用の見本(手術前の確認等のため)の造形に多く使われている(写真13)。最新機種は最大6材料が可能なJ750で、フルカラーが可能で透明材や柔軟材の造形も可能になった。従来フルカラーでは石膏タイプや紙の積層方式があったが、それらに匹敵する外観である(写真14)。
丸紅情報システムはストラタシスの販売代理店であり、フルカラー造形品のサンプルを多く展示していた。写真15は食品サンプル(寿司)であり、表面を仕上げればさらにリアリティが出るとのこと。フルカラーの造形に向く高付加価値用途の探索が課題とのことである。
キーエンスは積層ピッチが15μmの高精細プリンターを展示するとともに、水溶性サポート材の除去のデモを行っていた。キーエンスのプリンター用材料はアクリルウレタン系であり、割れにくい特長があるが、やや着色しているのが難点とのことである。
ミマキエンジニアリングはフルカラーのインクジェット式3Dプリンターを開発し、造形受託を開始した。造形例を展示していた(写真16)。
ファソテックは2種類の新しい3Dプリンター技術を展示していた。連続繊維の炭素繊維と樹脂系フィラメントを先端で合わせて積層するプリンター(THE MARK X 写真17)と説明パネル(写真18)を展示していた。また、金属粉末を含む樹脂のフィラメントを造形した後に焼き固めることで金属造形を行う技術(THE METAL X)の造形サンプル(写真19)も展示していた。
上海のPolymakerはポリビニルブチラール製フィラメントとその造形品にアルコールの霧をかけて表面をスムースにする装置を展示していた(写真20)。
スマイルリンクは定価70万円の卓上プリンターNt100とそれを用いたPEEK、カーボン入り樹脂の造形品を展示してた(写真21)。
㈱フュージョンテクノロジーは最大40cm角が造形できる大型プリンターを展示していた。造形途中で造形スピードが変更できる点が特長で、オプションで0.2mm径のノズル(通常0.4mm)も取り付けられる。ブースには大型のフィギュアが展示されていた(写真22)。このフィギュアは㈱デザインココによるもので、ブースにはデザインココと山形大学が共同で開発しているCFRPフィラメントも展示されていた(写真23)。
東レはナノテク展でPPSのパウダーとそれを用いた3Dプリンター造形品を展示していた(写真24)。
4.おわりに
今回は武藤工業が出展しておらず、3Dシステムズの動向がつかめなかった。
3Dプリンターの動きとして、金属3Dプリンターによる造形技術や粉末が進歩しており、プラスチックの成形金型への利用が加速すると思われる。
インクジェットタイプのフルカラー造形が可能になってきて、従来の石膏タイプに置き換わる可能性がある。従来の石膏タイプは仕上がりはきれいであったが、造形品が重かった。
FDM方式はエンプラや繊維強化材が使えるようになってきた。また、クラレや日本合成化学による水溶性フィラメント、ホッティポリマーによる畜光等の機能性フィラメントが入手可能になり、用途が広がる可能性がある。特に、工場で用いられる治具の製造にはFDMによる造形は有効である。