展示会レポート 第1回次世代3Dプリンタ展
秋元英郎
秋元技術士事務所
はじめに
第1回次世代3Dプリンタ展は2019年2月6~8日にかけて東京ビッグサイトで開催された。この展示会はリード エグジビション ジャパン 株式会社が主催する日本ものづくりワールドの一部として開催された。隣接して開催されていた設計ソリューション展は今回が第30回である。
次世代3Dプリンタ展では特に新しい3Dプリンティングの方式やアプリケーションを中心に展示されていた。
GEアディティブ
GEは従来から航空機エンジンLeapの燃料ノズル(写真1)、タービンブレード(写真2)等に金属の造形技術を活用していたが、2016年のConcept LaserとArcam EBを買収して傘下にし、社内のアディティブ事業を統合してGEアディティブという事業部を立ち上げた。日本国内では今年から事業を開始した。
機種はファイバーレーザー方式、電子ビーム方式があり、バインダージェット方式(パウダーベッドにバインダーを乗せる方式)を開発中である。
金属造形のメリットは難削材や超高耐熱素材を使うときである。
サンプル展示としては、自動車部品やタイヤの金型、自動車のエンジン部品,人工関節等も展示されていた(写真3)。
株式会社エイチ・ティー・エル
同社はRPM Innvationsのレーザーデポジションメタル3Dプリンターを展示していた。この装置はNASAやUS Armyの認定が取れているとのことで、単純な造形だけではなく、肉盛り、異種材料をのせること等が可能である。大型品の加工が可能で加工は窒素雰囲気で行う。
図1は上記プロセスを説明したものである。写真4は説明用パネルである。
株式会社松浦機械製作所
LUMEX Avance-25を用いた造形を実演していた(写真5)。パナソニックの金型は同社の装置で約800型製作しているとのことである(写真6)。写真7はリブ底にポーラス造形した金型の例である。写真8は三次元冷却配管を用いたブロー金型の例である。
愛知産業株式会社
同社はSLMの金属3Dプリンター(写真9)、SCIAKYの電子ビームでワイヤーから溶接造形する装置(写真10)、ATO LABのワイヤーから金属粉末を製造する装置等を展示していた。
株式会社エスケーファイン
同社はセラミックスの造形のために株式会社写真化学から分社して設立された。セラミックスの3D造形の受託及びセラミックス用3Dプリンターの販売を行っている。同社のプロセスはセラミックスをUV硬化樹脂に分散させてレーザー光で硬化させながら造形する。寸法精度を出すにはこの方式が最適とのことである。写真11に展示パネルとサンプルを示した。
株式会社キーエンス
同社は設計のために使う樹脂系の3Dプリンターに特化している。また、特殊な素材の開発にも注力している。例えば、アクリルウレタン系材料は靭性がある。また、シリコーンゴムの造形も可能である。
AGILISTAシリーズの特徴として書かれていることは、15μmピッチの高精度造形が可能、水溶性のサポート材が使用可能(三次元冷却水路を実演)で、手でもはがせる、強靭でねじ止めできる等である。写真12には流路や動作の実演のようすを示した。
伊藤忠マシンテクノス株式会社
Mocor社の紙にカラー印刷して糊で貼り合わせて積層する3DプリンターArkeProを実演していた。以前のモデルはコピー用紙を使う仕様であったが、それだと紙によって厚みが違う等の問題があり、現在は専用のロール紙を使うタイプに改良されている(写真13)。
3D Systems
金属の造形は近年一品物の製品の用途として多く使用されている。鋳物に比べて不良が少ない点がメリットで、精度は±50μm位とのことである。写真14に金属造形品の展示サンプルを示す。
造形速度は500㎜X500㎜X500㎜のサイズで80時間程度であり、現在粉の除去工程まで含めた無人オートメーションファクトリーを目指している。
金属の鋳造に用いられるロストワックスを造形するプリンターも展示されていた。ロストワックスの造形品とそれを用いた鋳造品のサンプルが展示されていた(写真15)。造形用ソフト「3D SprintTM」は標準装備されるとともに、無償で配布されている。
光造形の装置として小型の装置「Figure 4TM」が展示されていた。造形速度100㎜/時は業界最速とのことである。写真16に装置と造形品サンプルを示す。
樹脂系のプリンターとして、インクジェットタイプの3Dプリンターによる造形品サンプルが多く展示されていた(写真17)。
おわりに
3Dプリンターで造形する材料が多様化し、使い方が広がってきている。特に金属の造形品の拡大が急ピッチであることを感じさせられる。