『世界最大のゴム・プラスチック展K2016の視察報告会in大阪』のスライドがPDFでダウンロードできます。

プラスチックス・ジャパン株式会社が主催して開催した『世界最大のゴム・プラスチック展K2016の視察報告会in大阪』のスライドがPDFでダウンロードできます。

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K2016報告会配布資料

 

セミナーの概要

当日配布した資料は以下↓、スライドは枚数が多いのでディスクでお渡ししました。

 

世界最大のゴム・プラスチック展K2016の視察報告

秋元技術士事務所 秋元英郎

1.はじめに

K2016は2016年10月19~26日にかけてドイツのデュッセルドルフで開催された。8日間の会期で参加者は230,000人、出展社は3,285社と前回(2013年)の218,000人、3,220社から増えている。
本報告では、材料メーカー、射出成形機メーカー、周辺機器メーカーの動向について報告する。

2.材料メーカーの動向

材料メーカーのブースには大別して3つのパターンがある。1つ目は製品紹介タイプ、2つ目は商談ブースタイプ、3つ目はソリューション提案タイプである。前回はBASFとBayerがソリューション型の展示を行い、新しい展示の流れを示した。今回もBASFとCovestro(Bayerのマテリアルサイエンス部門が分社化)がソリューション型の展示をしていた。

2-1 BASF
RN-30:ヒュンダイとのコラボレーションによって開発したコンセプトカー(Green Racing Car RN-30)を展示していた。特徴は高価な炭素繊維を使わずに軽量化したこと、デザイン、安全性に関してもヒュンダイと共同で開発したところにある。
ボディはウレタンRIMで、2mmまで厚みを薄くし、必要に応じて発泡も可能になった。内装材には天然繊維を水性アクリルバインダーで固めたものを使用している。
これらの技術が来年くらいから実際に販売される車両に適用されていく計画になっている。
e-floater:ポリアミド樹脂製で折りたためる一人乗りの電動乗り物である。畳んで電車に持ち込むことが可能である。
家具:デザイナーが1からつくり上げたデザインであり、最初はバケツのような形状であった。最終のデザインでは足を特殊なポリアミド樹脂で成形することで、ガラス繊維が表面に露出せず、コーティング無しでも表面がきれいである。
Ultramid Advanced N:PPA樹脂であり、Tgが高く、耐水性(耐吸水性)に優れ、耐リフロー性に優れる。
Infinergy(ETPU):TPUのビーズ発泡体で、高反撥性が特長である。アディダスブーストのソールに採用されている。

2-2 Covestro
CovestroはBayerからPCとPUの事業を切り離して分社化した会社である。
3Dプリンターの活用:3Dプリンターに力を入れている。スポーツシューズの例では、複数の材料のフィラメントを用いてソール、アッパー共に造形したサンプルを展示していた。アッパーは合皮の上に造形している。
合皮:生産ラインで溶剤の使用を止めて水系にすることでエネルギーを50%削減でき、品質的には耐水性が向上したことにより洗濯が可能になった。将来的には植物由来のポリオールに原料をシフトする計画である。
二酸化炭素を原料にしたポリオール:K2013で将来技術として紹介したが、今年の夏にプラントを建て、既に量産している。ウレタンの組成中の20%が二酸化炭素由来である。サンプルとしてウレタンフォームとTPUパウダーから3Dプリンターで造形したものを展示していた。
コンセプトカー:ほぼ全てPCというコンセプトカーである。電気自動車化することでフロントグリルもPCで十分であり、フロントグリルにデュスプレイやセンサーを内蔵している。ホイールもPCであり、走行中は空気抵抗を下げるために孔が塞がる。後部のライトは表面から深さ2mmのところにホログラム加工することで深みを表現している。
建築物:風力発電用のブレードが展示されていた。内部に太いガラス繊維を十字に組み、微発泡ポリウレタンを充填している。ブレード長さ50mでテスト中であり、最終的にはブレード長さ100mを目指している。
ノートPC用材料:炭素繊維のUD材とPCフィルムプレス積層することで、製品表面にCFの織目が出ないので加飾の自由度が増している。金属と同じような金属音、同等の強度で重量は金属の1/2になる。
ヘルスケア・コスメ:熱可塑性PU製の医療用パッチ材の展示があった。ウレタン樹脂の特長である通気性、発泡性が活かせるとともに将来はセンサーの組み込みも考えている。

2-3 LANXESS
TEPEX(長繊維強化熱可塑性樹脂シート):ヨーロッパでは9車種に採用されている。ホンダの燃料電池車クラリティのバンパービームにはTEPEXのガラス繊維クロス材が他社の炭素繊維ランダム材シートと組み合わされている。アルミ製に比べ、47%軽量化できるとともに、一体成形による部品点数半減が実現できている。
スキー靴にはアルミコーティングしたガラス繊維のタイプと炭素繊維のタイプがある。ベース樹脂はPC、TPUである(自動車用のベースはPA6, PA66が多い)。
ブースには成形機メーカーによって成形実演されているサンプルも展示されていた。

2-4 DSM
PPAを展示していた。PA4Tがベースであることから他社のPPAに比べてTgが高い(130~160℃)。金属製のナットをインサート成形する必要が無くなる。

2-5 クラレ
アクリルフィルム:加飾成形用のアクリルフィルムで、多層化のアプリケーションを展示していた。同社のエラストマー技術を応用してPPに接着する層を設けることで、PPを射出するフィルムインサート成形やPP成形品に対する三次元貼り合せ工法に適用可能である。
透明エラストマー(クラリティ):MMAとnブチルアクリレートの共重合を基本とするエラストマーであり、ショアAで65~95が可能である。

2-6 カネカ
ビーズ発泡PP:ビーズ発泡PPエペラン製のバンパーの衝撃吸収材が展示されていた。欧州車にはバンパーの衝撃吸収材が必要とされ、エペランが多く使われている。
生分解性樹脂:植物由来かつ生分解性樹脂であるアオニレックスが展示されていた。近年問題となっている海洋に漂うマイクロプラスチックに対応可能であり、間違って海に落ちても自然に分解する。

2-7 日本ポリプロ@プラ技研
発泡用PP:WAYMAXのパネルとシート、真空成形サンプルが展示されていた

2-8 三井化学
金属と樹脂の接合:前回(K2013)では、共同出展者として大成プラスが展示を行っていたが、今回は三井化学の技術として展示されていた。

3.射出成形機メーカーの動向

3-1 ARBURG
現在ヨーロッパではインダストリー4.0が標準になっている。ARBURGでは全てのデータを集中管理している。
新しいモデルとしては、650トンのハイブリッド成形機が挙げられる。射出ユニットは油圧で、型締ユニットは電動制御であり、操作パネルはスマートフォン感覚のインターフェースになっている。今回は3部品x2のセット取りで、取出後にロボットで踏み台を組み立てていた。
3Dプリンター:Freeformerでは材料の限定がまだ存在するが、PA, PC, PBT, エラストマーが可能になっており、造形品の強度は射出成形に対して8割に近づいている。将来は金属粉末の造形に取り組みたいとの方針である。
Cube Moldによる二色成形:FOBOHAのCube Moldを用いたアプリケーションとして二色成形を実演している。取出面が反操作側にあるので、金型を閉じた状態で取出しが可能になっており、サイクルタイムの短縮効果がある。第2射出ユニットは可動プラテン上に設置している。
新しい物理発泡成形:軽量化の取組みとして窒素ガスを発泡剤として用いる物理発泡成形のデモを行っていた(ブース訪問時には金型トラブルにより成形を行っていなかった)。製品の表面品質を高めるためにgwkの温調機を用いたヒート&クール成形(100~140℃)の併用となっていた。gwkブースにも同じサンプルが展示されていた(材料はガラス入りPC)。この技術はIKVによるもので、材料ホッパーを上下に隔離し、ホッパー内を3~5MPaの窒素ガスで加圧することで、ガスが溶融したポリマー中に拡散溶解する。
IKVのブースでも同じ技術で自転車のサドル(長繊維強化シートのインサートを併用)を成形していた。
シリコーン二色成形:硬度が異なる2種類のシリコーン樹脂を用いた成形を実演していた。成形品は時計のベルトである。LSR(液状シリコーンゴム)は金型の隙間が5μm以上あるとバリが発生するため、計量バラツキを抑えるための特殊なスクリューとエア抜きができるバルブ付きの供給装置を備えている。
医療用途向けとして、クリ―ルーム対応の成形機によるシャーレをスタックモールドで成形していた。装置を床面から100~200mm上げることで空気の流れをつくっている。成実演では取出時にシャーレの底と蓋の組合せも行っていた。
竪型ロータリー成形機によるインサート成形の実演として、金属部品とプラスチック部品をインサート成形し、2個をロボットで組合せていた。品物は荷物タグである。

3-2 Babyplast
超小型の卓上射出成形機のメーカーである。超小型成形品、二色成形、シリコーンゴムの成形を実演していた。

3-3  BOY
トルクレンチ(金属インサート)ではビジターに手で金属棒のインサートをさせて、体験させていた。成形機は横型である。
カップの成形では、竪射出の竪型成形機で成形したカップにロボットでラベルを貼った後にロボットがビールを注いでビジターに渡していた。
二色成形として、ワインボトルの注ぎ口を成形していた。射出ユニットの配置はL型で、金型内部で上下反転を行う機構である。後付け用射出ユニットが用いられていた。
ドライバーの二色インサート成形では、メインの射出ユニットでPAを、後付けの射出ユニットでLSR(液状シリコーン)を射出していた。
金型内ブロー成形として、金型内の反転機構を用いて上でプリフォームを成形して下でブローを行っていた。
シリコーンゴムの微小成形では、128キャビティあり、イジェクタが金型の上で待機しており、型開後に降下して突き出しを行っていた。金型温度が高いため、イジェクタの温度が上がらないようにしているのであろう。

3-4 ENGEL
インダストリー4.0の取組み:ENGELが提唱するinject 4.0はsmart factory, smart production, smart machine, smart serviceから構成される。Smart machineは安定性と品質を高めるもので、iQ weight control, iQ clamp control, iQflow controlから成り立っている。例えば、iQ weight controlは射出時の射出圧力をモニターして、そのショットの保圧切替位置を変化させる。iQ clamp controlは成形機が最適な型締力に調整してくれる。iQ flow controlは成形機が射出流動の状況と金型温度をモニターして温調機の水量を最適化する。
金型内重合/二色成形:竪型締・横射出の成形機で下型がスライドする機構の装置を用いて、2つのキャビティの一方にマット状の繊維を入れてカプロラクタムを重合し、もう一方のキャビティに移動させて、ガラス30入りPA6をオーバーモールドしていた。型内重合の所要時間が約3分で、トータルのサイクルタイムは約3.5分である。ENGELはサイクルタイムを1分程度まで縮めれば量産の手法として受け入れられると考えている。
射出ブロー成形:FOBOHAのCube技術を用いた射出ブロー成形を実演していた。固定型側で射出し、操作側の面で加熱し、可動型でブローし、反操作側面で取出す。
PBT/液状シリコーンゴムの二色成形:160トンの油圧タイバーレス成形機で、可動型がスライドする構造である。タイバーレス成形機は油圧タイプで最大500トンまで対応可能である。
PP/TPEの歯間ブラシの成形:PPの上にTPEの毛を6方向に植えているが、無理抜きではなく、スライドの動作で離型している。
シートインサート成形:ポリウレタンがコートされたTPOのシートを可動型で予熱・真空引きした後にタルク入りPPを射出して積層するインサート成形を実演していた。大日本印刷のサーモジェクトに近いプロセスである。タルク入りPPはMuCellプロセスで発泡させていた。(⇒GKのパンフレット参照)
長繊維強化熱可塑性樹脂シート(オーガニックシート)のインサート成形:LANXESS社のTEPEXシートをインサートしてガラス50%入りのPCを周囲に射出接合するとともに、KURZ社の転写箔による加飾を同時に行う成形の実演を行っていた。成形機は縦型である。また、表面の平滑性を得るためにヒート&クール成形を併用していた。

3-5 KraussMaffei
インダストリー4.0に関してKraussMaffeiはplastics 4.0を提唱しており、Intelligent Machines, Integrated Production, Interactive Serviceから成り立っている。
金型内塗装(カラーフォーム):対向二色成形機がベースで、ABSを射出した後に金型を回転させてポリウレアの反応硬化性塗料を注入して加飾する。ポリウレアは2液混合(ポリアミン、イソシアネート)タイプであり、カラーは2液混合した下流で注入されるため、色替え時間は約5分で済む。
従来のプロセスではメタルフレークが装置を痛めるためにメタリック塗装はできなかったが、着色材の注入位置の変更等によりメタリックも対応可能になった。塗料厚みは0.3mmであり、これより厚くするのは現時点では困難とのことである。
T-RTM(熱可塑性樹脂RTM):事前のリリースでは熱可塑性樹脂を用いたRTMと説明されていたが、カプロラクタムの金型内重合である。成形実演ではガラス繊維と炭素繊維の複合シートと金具をインサートして、金型内でカプロラクタムを重合させていた。重合時間は約4分である(金型温度は180℃)。
熱可塑性のメリットは、エポキシ樹脂に比べて靭性が高い点にある。すなわち、エポキシ樹脂の場合は、末端に繊維が存在しない部分があるとその部分が割れるため、繊維をはみ出すようにセットして最後にトリミングする必要があったが、熱可塑の場合、金型内に収まるように繊維をセットできるのでトリミング工程が削減できる。さらに熱可塑性であるため二次加工で溶着加工が可能になる。
KraussMaffeiのプロセスでは、固体状のカプロラクタムを120℃まで加温して必要な分だけ融解して金型に送るために材料の劣化が抑えられる。
長繊維強化熱可塑性樹脂シート(オーガニックシート)のインサート成形:2010年から継続して実演されている成形技術である。今回は、シートの予備加熱を合理化するために加熱炉に扉を設置した。
ヒート&クール成形:RocToolの電磁誘導加熱を用いたヒート&クール成形による高シボ転写を実演していた。製品形状は三次元形状であり、誘導コイルはその形状に合わせて配置されている。

3-6 Milacron
発泡二色成形PETプリフォーム:メインの射出ユニットがMuCell仕様の成形機で発泡したPETを射出し、可動プラテン側からはソリッドのPETをオーバーモールドしていた。金型はFOBOHAのCube Moldを用いていた。

3-7 Sumitomo SHI Demag
ハイサイクル:ハイブリッド成形機で食品容器をサイクルタイム1.7秒で成形していた。また、スタックモールドと射出圧縮成形の組合せにより元々31gであったトレーが23gまで軽量化できた。
金型内加飾成形:自動車内装部品として、金型内転写による加飾を行っていた。転写フィルムの加飾層は表面に紫外線硬化型のハードコート剤の層があり、成形後に紫外線を照射して硬化させ、端末の自動仕上げが行われていた。

3-8 東芝機械
二色成形機による成形とその後のロボットに作業により射出成形機の模型を組み立てていた。サンプル展示では日進工業のメタリック成形品、厚肉歪み無しのレンズが展示されていた。

3-9 Wittmann Battenfeld
金属の深絞りインサート成形:金属の板を金型を閉じる動作で深絞りし、ポリアミド樹脂を射出して接合する実演を行っていた。金属にはEvonikのポリアミドコーティング技術が使われている。
射出ブロー成形:射出した後に熱いうちにブロー工程に移し、その後冷却して取出す。
CELLMOULD(物理発泡成形):1100トン成形機による物理発泡成形の実演であったが、ブース訪問した日に金型が故障して動いていなかった。発泡剤(窒素)は空気から分離して昇圧され、インジェクタからバレルに注入される。スクリューの中間部分にバルブが無いために故障し難い。

4.研究機関

4-1 IKV
物理発泡成形+シートインサート:前述のARBURGでの実演と同じシステムの装置で自転車のサドルの発泡成形を行っていた。ホッパーは上下に分かれており、どちらも約4MPaに制御されていた。強度を必要とする部分に補強用の長繊維強化シートをインサートしていた。(⇒GKのパンフレット参照)

4-2 fraunhofer
エラストマーとPPの発泡二色成形においてPP部分をコアバックさせたサンプルが展示されていた。(⇒紹介資料参照)また、複合材料の成形として、長繊維強化熱可塑性樹脂シートと長繊維強化樹脂の射出とPC/ABSの意匠層の射出による金型内アッセンブリーサンプルを展示していた。

5.周辺機器

5-1 Trexel
自動車部品を多くサンプル展示していた。

5-2 gwk
三次元形状のヒート&クール成形を実演していた。水管が三次元形状に配置されている。

5-3 RocTool
ホログラムや高意匠柄の成形実演を行っていた。実演に用いていたのはKraussMaffeiの成形機であり、同社が成形機を貸し出すのは異例である。