展示会レポート 人とくるまのテクノロジー展2018(名古屋、横浜) (2)樹脂系材料編
秋元英郎
秋元技術士事務所
展示会レポート 人とくるまのテクノロジー展2018(名古屋、横浜) (1)部品編に引き続き、樹脂系材料について報告する。
3.樹脂系材料
カネカ
PP用発泡性改良材が展示されていた。最近の展示会では出されていなかったが出展を復活させるとともに、現実的な発泡倍率として、倍率2倍(10%添加)のサンプルを展示していた。なお、MuCellであれば3倍発泡が可能とのことである。写真21上は改質剤10%添加と改質剤無しの発泡断面比較、下は2倍発泡サンプルとソリッドサンプルである。
クラレ
同社は横浜と名古屋で展示内容を大きく変えた。名古屋ではジェネスタ(PA9T)を中心に据えていた。写真21は使用部品を示すモックアップ、写真22はジェネスタの成形サンプルである。PA9Tは耐加水分解性に優れるポリアミドである。
デンカ
開発製品として新規耐油性エラストマー(Evolmer)とクロロプレンの中空微粒子を展示していた(写真24)。
Evolmerはクロロプレンとアクリロニトリルからなり、耐油性がNBRとHNBRの中間、耐油性はNBR・HNBRと同等で、Oリングやシールガスケット用途を狙い、2019年1月に上市予定である。なお、屈曲疲労性と耐アルコール性はNBR・HNBRよりもはるかに優れている。
自動車内装表皮材をターゲットとしたスチレンとスチレン-エチレンのブロック共重合であるSEポリマーのパネルと成形サンプルが展示されていた(写真25)。このサンプルは不透明な着色が施されているが、基本的に透明な材料なので、着色剤を工夫すれば光の透過を利用したデザイン設計も可能である。
同社は他にPMMAの耐熱性改良材としてRegisfyを展示していた。アクリル樹脂の耐熱性を向上させることで、塗装レスで自動車内装材に使用できるようになる。また、アクリル樹脂の吸水性を抑えることで寸法精度が向上する。50/50の添加まではアクリル樹脂の鉛筆硬度レベルが維持できる。
PMMAの耐熱向上は大きな課題であり、数社が高耐熱PMMAの提案を行っていた。
アルケマ
超耐熱・高硬度PMMA樹脂であるアルトグラスHT-121が紹介されていた(写真26)。
ダイセルエボニック
金属と樹脂の接合に用いるベスタメルトHilinkを使用した大型のサンプルを展示していた(写真27)。
燃料配管を金属からPA12に代替することで、80%もの大幅な重量削減が可能(1696g→320g)になることを実際の部品で示していた(写真28)。
同社はその他にPEEK樹脂によるバキュームポンプ用チップシールや高耐熱アクリル樹脂を用いたフロントグリル等を展示していた。
三菱ケミカルホールディングス
自動車内装材用の硬質樹脂として、流動性に優れて着色性や表面光沢に優れる材料としてDurabioの成形品が展示されていた(写真29、30)。
三井化学
制振性・応力緩和性を持つエラストマーであるアブソートマーを展示し、落球試験のデモを行っていた(写真31)。アブソートマーのシートに鋼球を落下させても反撥しない。またアブソートマーの形状記憶ネットも展示されていた。
高耐熱性BMC(熱硬化性成形材料)が展示されていた。熱伝導性と電気絶縁性が両立できている。
住友化学
LCPやPESのようなスーパーエンプラの発泡成形は非常に難易度が高い。特にLCPは溶融状態で結晶構造を持っているため、発泡適性を持たせるためには特殊なLCPが必要になる。写真32はLCPの発泡成形サンプルである。PESの発泡サンプルも展示されていた。
高硬度のPMMA樹脂はABS樹脂と違ってヒート&クール成形を行わなくても高光沢が得られるため、自動車外装部品向けに開発が進められている(写真33)。
他に、質感向上PPとして、マットで黒がより黒く表現できるベースPPが展示されていた。
アロン化成
開発品である新規耐熱性エラストマーが展示されていた。写真34は展示パネル、写真35は展示サンプルである。
東レ
ナノオーダーで分散させたナノアロイが展示されていた。PCとPBTをナノオーダーで分散させると、耐加水分解性に優れ、衝撃吸収にも優れる材料ができる。写真36はナノアロイの説明パネルとエネルギー吸収特性が求められる部品のサンプルである。
旭化成ケミカル
自動車外装向けピアノブラック用アクリル樹脂として、デルペットの外装無塗装向けグレードが展示されていた(写真37)。
また、テナック(POM)の低VOCメタリック材着のプレートサンプルが展示されていた(写真38)。
第3部に続く