展示会レポート 3D Printing 2018
秋元英郎
秋元技術士事務所
1.はじめに
3D Printing 2018は、2018は2月14日(水)~16日(金)にかけて東京ビッグサイトで開催された。
本レポートでは、樹脂系3Dプリンター、金属系3Dプリンターに分けて報告する。過去の開催に比べると、金属系3Dプリンターのバリエーションが広がってきている。
2.樹脂系3Dプリンター
ストラタシスの目玉はインクジェットタイプの透明フルカラーである。今回の展示では自動車のテールランプレンズ(写真1)、化粧品容器のモデル等(写真2)を展示していた。化粧品容器の例では、瓶のみならず、内容物まで造形してリアリティを出していた。
従来のインクジェットとはデータの形式が異なり、各スライス毎に色のデータが入っている。
ミマキエンジニアリングはフルカラーインクジェットで造形したフィギュア、ジオラマ、食品サンプル等を展示していた(写真3)。
キャノンマーケティングはhpのHP Jet Fusion 3Dについてパネルとサンプルを展示していた(写真4)。基本原理はPA12等の樹脂粉末に着色したバインダー(接着剤)をインクジェットで吹き付け、赤外線で乾燥させる方式である。バインダーの色によりフルカラー造形が可能である。
XYZ Printingは1種類のフィラメントによる造形と4色のインクによる着色を組み合わせたフルカラー造形を行っていた(写真5)。インクをはじかない専用のPLAフィラメントを使用している。装置の外からインクのカートリッジが見える。インクジェットのフルカラーに比べるとどうしても着色されてない層ができる。
フュージョンテクノロジーはL-DEVOの溶融フィラメント方式の超大型プリンターによる戦車を展示していた(写真6)。内部はハニカム構造の造形を行っている(写真7)。
ファソテックは炭素繊維の糸と樹脂のフィラメントを並べて供給して溶融積層を行うTHE MARK TWOを展示実演していた。一筆書きの途中では炭素繊維は切れ目が無く、次の層に移るときにカットする。写真8は繊維とフィラメントの供給部分、写真9は造形サンプルである。
リコージャパンのブースではエス.ラボが開発したペレットを溶融して積層する3Dプリンターが出展されていた(写真10)。
3.金属3Dプリンター
AddUpはfivesとミシュランの合弁会社であり、産業用金属3Dプリンターを製造している。例えばタイヤ製造用の金型が一例である。使用する金属粉末が1μm程度と非常に小さく、レーザーを絞ることで高品質な造形が可能である。ただし、その分造形時間は長くなるようだ。写真11に展示されていたサンプルを示す。
アルテックは卓上で造形ができる金属3DプリンターとしてDesk Top Metalを展示していた。金属粉末を有機バインダーを用いてフィラメント化しており、FDM方式で造形し、バインダーを除去して焼結する。3つの工程は別々な装置になるが、1つのソフトで全てを管理している。写真12にサンプルを示す。
BeAMは金属粉末の溶射による積層造形装置(代理店は㈱富士インダストリーズ)による造形品を展示していた(写真13)。溶射方式は大型の造形に向いている。
三菱商事は金属造形で多孔質化して通気性を持たせた金型入れ子のデモを行っていた。写真14は、金属面から空気を出し硬貨を浮上させている様子である。
日本電子は電子ビームプリンターをパネル展示していた(写真15)。レーザーは粒子表面で反射しやすいが、電子ビームは粒子の内部で発熱する特徴があるため、反射しやすい材料(銅など)や高耐熱材料(インコネル等)に向いている方式である。ただし、電子ビーム方式は解像度を上げるためにビームを絞りやすいがパウダーを小さくすると爆発するという問題があり、むやみに小さくはできないようだ。
NTTデータエンジニアリングはEOSを用いた金属粉末の造形品を数多く展示していた。写真16にはその一部を示す。
ニコンは溶射による金属造形を参考出品していた。100μmくらいのSUS粉末にレーザーを照射してその場で溶融させ、造形していく。サンプルの近接での撮影は許可されなかったため、離れた位置からの写真のみ掲載する(写真17)。
大陽日酸はOPTOMECの溶射式造形装置の先端部分(写真18)を展示していた。4か所から囲むように金属粉末を吹き出し、中央からレーザーを照射して溶射する。
4.おわりに
本展示会は回を重ねるごとに出展内容が少しずつ変化してきており、今回は金属の造形に関する展示が増えていることを実感する。金属を造形して産業用途で使うのが最も費用対効果が優れるのであろう。